半導体製造において欠かせない工程の一つ、化学的機械研磨(CMP)。CMPとは、Chemical Mechanical Polishingの略で「化学的機械的研磨」と呼ばれる工程です。この工程は、平坦化(Planarization)とも呼ばれています。本記事では、CMP装置の基本から最新のトレンドまで、詳しく解説します。
CMP装置に関する最新ニュース
- 富士フイルム、ハイブリッドボンディング向けCMPスラリーを製品化・2030年度世界シェアトップを目指す
富士フイルムは2025年9月29日、ハイブリッドボンディング向け先端パッケージング用CMPスラリーの販売を開始したと報じられています。銅と酸化膜が混在する接合面の高精度平坦化に特化した製品で、大手半導体デバイスメーカーへの採用が決まっているとされます。同社は2030年度にCMPスラリー世界シェアトップを目指すと発表しており、ベルギー・ズヴェインドレヒトへの製造拠点拡張も予定しています。なお、熊本県菊陽町の生産拠点では2025年1月に約20億円を投じたCMPスラリー生産能力増強(約3割拡大)が予定通り稼働を開始しています。
- 荏原製作所のCMP装置事業が急拡大—世界シェアNo.1を目指し生産・開発体制を強化
荏原製作所のCMP装置売上収益は2025年12月期に2,126億円(前期比35%超増)に達したと報じられています。同社は2030年までにCMP装置世界シェアNo.1を目標に掲げており、現在の首位であるApplied Materials(シェア約52.6%)の追撃を進めています。荏原のシェアは現状約37.0%とされています。生産面では熊本事業所の新生産棟(K3棟)が2024年12月に竣工し、生産能力が従来比1.5倍に拡大。開発面では藤沢事業所に新開発棟(V8棟、延床面積約1万6,216㎡)が2025年6月に竣工し、2025年8月に稼働開始する予定です。開発スペースは従来比1.7倍に拡大し、CMP装置のほかベベル研磨装置・めっき装置の開発も行うとされています。2026年の事業売上目標は4,000億円とされています。
- CMP装置市場の成長予測(2026年最新調査)
2026年3月公開の市場調査レポートによると、CMP装置市場は2025年時点で62億5,000万米ドルと評価されており、2032年には91億3,000万米ドル(年平均成長率5.57%)に達すると予測されています。
CMP装置とは?
CMP装置の定義
CMP装置とは、Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略称で、半導体ウェーハの表面を平坦化するための装置です。化学的作用と機械的作用を組み合わせることで、ナノレベルの精度で表面を研磨します。半導体の微細化が進む中、CMP装置は不可欠な製造装置となっています。
CMP装置の基本構造
CMP装置の基本構造は、研磨パッド、ウェーハを保持する研磨ヘッド、スラリー供給システム、そして研磨パッドを回転させる定盤(プラテン)と回転駆動部から成ります。研磨パッドとウェーハを接触させながら回転させ、その間にスラリーを供給することで研磨を行います。研磨ヘッドには、ウェーハを均一に押し付けるためのエアバッグなどが使用されています。CMPとは、研磨の対象となるウエハ表面材料に応じた薬品を使って化学反応により溶かしながら、スラリーと呼ばれる砥粒により、ウエハをパッドに押し当てた状態で機械的に削るプロセス技術です。
CMP装置の動作原理
CMP装置の動作原理は、化学的作用と機械的作用の組み合わせです。スラリーに含まれる化学薬品がウェーハ表面を化学的に軟化させ、同時に砥粒が機械的に研磨を行います。この二つの作用が相乗効果を生み出し、高精度な平坦化を実現します。研磨パッドとウェーハの回転速度、押し付け圧力、スラリーの組成などを精密に制御することで、ナノメートル単位の平坦度を達成します。
CMP関連動画情報
- 荏原製作所 CMP装置 -CMP equipment-
- 北川グレステック CMP装置「BC-15CN」【JIMTOF2024】
- テラリンクステクノロジーR&D用CMP装置 TLT150MP
- CMP POLISHER for R&D
CMP装置の市場規模
現在の市場規模
2026年3月公開の市場調査レポートによると、CMP装置市場は2025年時点で62億5,000万米ドルと評価されています(出典:GII、2026年3月)。半導体産業の成長に伴い、CMP装置の需要も着実に増加しており、特に最先端の半導体製造プロセスにおいてはより高度な平坦化技術が求められ、CMP装置の重要性が一層高まっています。
市場成長予測
同レポートでは、CMP装置市場は2032年に91億3,000万米ドルに達すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は5.57%とされています。なお、別の調査では2024年実績が59億2,000万米ドルで2030年に81億8,000万米ドル(CAGR 5.51%)との予測もあり、複数の最新調査が概ね同水準の成長率を示しています。
成長要因
CMP装置市場の成長を牽引する主な要因として、以下が挙げられます:
- 半導体の微細化:より小型で高性能な半導体デバイスの需要増加
- AIやIoTの普及:高度な演算処理を必要とするアプリケーションの増加
- 5G/6G通信の拡大:高速・大容量通信に対応する半導体の需要増
- 自動運転技術の進展:車載半導体の高性能化要求
これらの要因により、より高度なCMP技術への需要が高まり、市場の拡大が続くと予想されています。
CMP装置の種類
ロータリー方式
ロータリー方式は現在のCMP装置の主流となっている研磨方式です。この方式では、大径の研磨パッドを下部に配置し回転させ、上からウェーハを押し付けて研磨を行います。ウェーハは裏面が研磨ヘッドに吸着保持され、表面が下向きの状態で研磨パッドと接触します。研磨の均一性を高めるため、ウェーハと研磨パッドは互いに逆方向に回転します。
ロータリー方式の特徴:
- 高い研磨均一性
- 大面積ウェーハの処理に適している
- 研磨パッドの弾力性とエアバッグなどを用いた研磨ヘッドのクッション性により、均一な研磨が可能
この方式は、多くの半導体メーカーで採用されており、安定した研磨性能と高いスループットを実現しています。
ベルト方式
ベルト方式は、世界で最初に開発されたCMP研磨方式です。この方式では、ベルト状の研磨パッドを使用し、ウェーハをベルトに押し付けて研磨を行います。ベルトは連続的に動くため、ロータリー方式と比較して高速な処理が可能です。
ベルト方式の特徴:
- 高速処理が可能
- 研磨パッドの交換が容易
- 特殊なベルト状研磨パッドが必要
ロータリー方式と比較すると研磨の均一性に課題があり、特殊なパッドが必要となるため、現在ではあまり一般的ではありません。
インデックス方式
インデックス方式は、ベルト方式の次に開発された研磨方式です。この方式では、ウェーハを下部の研磨プレートに固定して回転させ、上から小径の研磨ホイールで研磨を行います。ロータリー方式とは逆の構造となっています。
インデックス方式の特徴:
- ウェーハの裏面基準で均一に研磨可能
- 小型の研磨ホイールを使用するため、局所的な研磨が可能
- 表面の層間絶縁膜が不均一になる可能性がある
この方式は、特定の用途や研究開発段階での使用に適していますが、量産プロセスではあまり一般的ではありません。
CMP装置の主な用途
半導体デバイス製造
CMP装置の最も一般的な用途は、半導体デバイスの製造プロセスにおける平坦化です。集積回路(IC)の製造過程では、複数の層を積み重ねて回路を形成します。各層の表面を平坦化することで、次の層を正確に形成することができます。特に、以下のプロセスでCMPが重要な役割を果たします:
- 層間絶縁膜の平坦化
- 金属配線の形成(ダマシン法)
- シャロートレンチアイソレーション(STI)の形成
- ハイブリッドボンディング(Cu-Cu直接接合)
これらのプロセスにおいて、CMP装置はナノメートル単位の精度で表面を平坦化し、デバイスの性能と信頼性を向上させます。
CMPは、半導体の前工程・多層配線形成工程において重要な工程です。CMP工程の出来栄えは、ウエハの厚さばらつき度合いを示すTTV(Total Thickness Variation)、表面粗さ、外観、エッジ形状などで評価されます。プロセス上、重要なパラメータは面内膜厚均一性です。
層間絶縁膜(ILD)、STI(Shallow Trench Isolation)の平坦化ではSiO2膜の平坦化を行います。Wプラグの工程では、W-CVDにより全面に成膜されたタングステン膜の平坦化を行い、プラグ部分のタングステンを残します。Cu配線の平坦化では、全面に成膜されたCuダマシンめっき膜の配線として残る部分を残し、SiO2が表面に現れるまで研磨を行います。
SiO2とCu配線のハイブリッド接合においては、前工程となるCMPが重要な役割を果たしています。ハイブリッド接合はSiO2を接合後にCuの熱膨張によりCu面を接合することから、CMPにおいてウエハ表面のSiO2とCuの段差を数nmオーダーで制御することが求められます。これを実現するためにCMPスラリーの成分調整により膜表面の反応速度をシビアにコントロールする必要があります。
先端ロジック(GAA)向けCMP
3nm以下のプロセスノードでGAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタの採用が進むにつれ、高選択性CMPスラリーへの需要が高まっています。サムスンが3nm GAAを商用化するなど、先端ロジック分野での微細化が加速しており、CMPスラリーメーカーはGAA構造に対応した高選択性スラリーの開発を進めています。AI向け半導体の高性能化要求とも相まって、先端ロジック向けCMPプロセスの重要性はさらに増す見通しです。
MEMS(微小電気機械システム)製造
MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)デバイスの製造においても、CMP装置は重要な役割を果たします。MEMSは、微小な機械要素と電子回路を一体化したデバイスで、センサーやアクチュエーターなど、様々な用途に使用されています。CMP装置は、MEMSの製造プロセスにおいて以下のような用途があります:
- 犠牲層の除去
- 構造層の平坦化
- 表面粗さの制御
これらのプロセスにより、MEMSデバイスの性能向上と歩留まり改善に貢献しています。
光学デバイス製造
CMP装置は、光学デバイスの製造にも使用されています。特にフォトニクス分野では、光導波路や光学フィルターなどの製造に欠かせない技術となっています。主な用途は以下の通りです:
- 光学素子の表面平坦化
- 多層膜フィルターの層間平坦化
- 光導波路の形成
これらのプロセスにおいて、CMP装置はナノメートル単位の表面粗さ制御と高い平坦度を実現し、光学デバイスの性能向上に寄与しています。
CMP装置の技術トレンド:AI・in-situモニタリング・予知保全
CMP装置の技術進化は、装置そのものの研磨性能向上にとどまらず、プロセス制御の高度化にも及んでいます。最新の市場動向として、in-situ(研磨中リアルタイム)モニタリングと機械学習アルゴリズムを組み合わせた研磨パラメータのリアルタイム調整が普及しつつあります。Industry 4.0との統合により予知保全モデルが広まり、消耗品のライフサイクル延長や装置ダウンタイムの削減に寄与しています。
半導体デバイスの微細化が進むほど、研磨均一性や終点検出(エンドポイント検出)の精度要求は高まります。AI・機械学習を活用したリアルタイム制御は、こうした要求に応えるための有力な手段として、主要装置メーカーや半導体デバイスメーカーの間で注目されています。
CMP装置の主な製造メーカー(日本)
荏原製作所
荏原製作所は、CMP装置市場において世界シェア2位(約37.0%とされる)の日本の大手メーカーです。1912年に創業し、真空ポンプメーカーとしてスタートしましたが、顧客からの要望をきっかけにCMP装置の製造を開始しました。現在では、累計出荷台数が2,500台を超える実績を持っています。
荏原製作所の強み:
- グローバルなサービス網(世界50カ所以上にサービス拠点)
- 高い技術力と豊富な経験
- 半導体製造プロセス全体をカバーする製品ラインナップ
直近の動向として、2025年12月期のCMP装置売上収益は2,126億円(前期比35%超増)に達したと報じられています(出典:グローバルネット)。生産体制では熊本事業所の新生産棟(K3棟)が2024年12月に竣工し、生産能力を従来比1.5倍に拡大。開発体制では藤沢事業所の新開発棟(V8棟)が2025年6月に竣工し、2025年8月の稼働開始が予定されています(出典:荏原製作所公式、2025年6月)。同社は2030年までにCMP装置世界シェアNo.1を目標に掲げており、現在の首位であるApplied Materials(シェア約52.6%とされる)の追撃を続けています(出典:ニュースイッチ、2025年6月)。
東京精密
東京精密は、1949年に設立された半導体製造装置・精密計測機器メーカーです。プローバ(ウェーハ検査)で世界トップシェアを持つ企業として知られています。CMP装置では、独自のエアフロート式ヘッド「Sylphide」を開発しています。
東京精密のCMP装置の特徴:
- エアフィルムによる均一な加圧
- ウェーハの表面基準での高精度研磨
- 計測技術を活かした高度な制御システム
東京精密の装置は、特に高精度な平坦化が求められる先端ロジックデバイスの製造に適しています。
テクノライズ
研究開発向けのCMP装置メーカーです。ウエハの受託加工サービスも行っています。
CMP装置の主な製造メーカー(海外)
Applied Materials(アメリカ)
Applied Materialsは、半導体製造装置市場において世界最大手の企業です。CMP装置においても世界シェア首位(約52.6%とされる)を誇り、高い技術力と豊富な経験を持っています。同社のCMP装置は以下の特徴を持っています:
- 高度な制御システムによる精密な研磨
- 多様な材料に対応可能な柔軟性
- 高いスループットと低いコスト・オブ・オーナーシップ
Applied Materialsは、継続的な研究開発投資により最先端のCMP技術を開発し続けています。特に、AI・IoT向けの高性能半導体製造に適した装置の開発に注力しています。
ケメット(英)
イギリスのKemetは、化学機械研磨(CMP)装置とスラリーの大手メーカーです。特に、KemCol 15マシンは、CMPおよびセリウム酸化物ベースの研磨アプリケーションに最適化されています。この装置は、長寿命で汚染フリーの研磨を実現するためにステンレス鋼の要素を使用しており、医療やサファイア研磨業界など、さまざまな分野で利用されています。日本ではケメットジャパンが販売代理店を務めています。
ロジテック(英)
ロジテックは、精密研磨装置のメーカーです。同社のCMP装置は、半導体、光学、MEMS分野向けに設計されています。高精度な平坦化と表面仕上げを実現する装置を提供しており、研究開発から小規模生産まで幅広いニーズに対応しています。日本ではハイソルが販売代理店を務めています。
Entrepix(アメリカ)
Entrepixは、CMP装置、部品、サービスを提供する企業です。新品のOnTrak DSS-200クリーナーを提供するほか、中古・再生半導体装置の販売も行っています。また、CMP装置のアップグレードや交換部品の供給、フィールドサービスなど、包括的なCMPソリューションを提供しています。
Revasum(アメリカ)
Revasumは、半導体産業向けの研削、研磨、CMP装置の設計・製造を専門とする企業です。主力製品には6EZ Silicon Carbide Polisherと7AF-HMG Silicon Carbide Grinderがあり、完全自動化された単一ウェーハ研削・研磨ソリューションを提供しています。特にシリコンカーバイド(SiC)ウェーハ向けのCMP装置に強みを持っており、200mmウェーハ対応の製品も開発しています。日本ではファーストゲートが販売代理店を務めています。
G&P(韓国)
G&P TechnologyのCMP装置は、試作・研究開発から量産前プロセスまでをカバーし、小型ウェーハから最大25インチ級の大型パネルまで対応する広いサイズレンジと、高剛性構造・精密制御による高い平坦化性能が特徴です。CMP研究会の事務局であるグローバルネットが同社製品を取り扱っています。
まとめ
CMP装置は、半導体製造プロセスにおいて不可欠な役割を果たしています。世界シェア首位のApplied Materialsに対し、荏原製作所や東京精密などの日本勢が高い技術力をもって競争を続けており、2030年に向けたシェア争いが激化しています。
技術面では以下のような課題と革新が進んでいます:
- より微細な加工に対応する高精度化(GAA向け高選択性スラリーなど)
- AI・機械学習を活用したリアルタイム研磨制御と予知保全
- ハイブリッドボンディング向けCMPプロセスの高精度化
- 生産性向上のための高スループット化と省エネルギー化
市場規模については、2026年3月公開の調査レポートにより、2025年時点で62億5,000万米ドル・2032年には91億3,000万米ドル(CAGR 5.57%)に達すると予測されています(出典:GII、2026年3月)。
この成長を支える要因として、以下が挙げられます:
- AIやIoT向け半導体の需要増加
- 自動車産業における電動化・自動運転化の進展
- 5G/6G通信インフラの整備
- 3次元積層・チップレット技術の普及によるハイブリッドボンディング需要の拡大
CMP装置は半導体産業の発展に不可欠な技術であり、その重要性は今後さらに高まると考えられます。主要メーカーによる技術力の向上と生産能力の拡充により、より高性能で信頼性の高い半導体デバイスの製造が可能となり、私たちの生活を支える様々な電子機器の進化に貢献していくでしょう。
参考サイト
- CMP装置市場:装置タイプ、動作モード、自動化レベル、プロセス種別—2026年~2032年の世界市場予測(GII)
- 後工程に拡がるCMPスラリー需要「世界一」狙う富士フイルムの成長戦略(EE Times Japan)
- 荏原製作所、2025年決算はCMP装置が急拡大(グローバルネット)
- 荏原製作所、藤沢事業所新開発棟(V8棟)が竣工(荏原製作所公式)
- シェア首位・米アプライド追撃なるか…荏原、CMP装置で攻勢かける(ニュースイッチ)
- CMP Equipment
- 【#半導体】【CMP】CMP技術と関連企業・関連銘柄
- CMP Equipment Market by Product Type & Application – Global Forecast to 2030
- CMP装置とは?仕組みや種類、メーカーを解説
- CMP装置(CMP system) | 半導体用語集 | SEMI-NET
- 半導体デバイス製造を支えるCMP技術の開発動向
- 半導体の表面処理技術CMPの役割と重要性
- CMP Slurry Market Size, Share | CAGR of 7.2%(market.us)

