封止材・アンダーフィルとは
封止材(Encapsulant / EMC: Epoxy Molding Compound)とアンダーフィル(Underfill)は、半導体パッケージにおいてチップを外部環境(湿度・熱・機械的応力)から保護するための重要な材料です。チップレット技術・2.5D/3Dパッケージング・Fan-Out WLP(FOWLP)の普及にともない、封止材・アンダーフィルに求められる性能要件は急速に高度化しています。本記事では種類・用途・市場動向・主要メーカーをエンジニア目線で体系的に解説します。
封止材(EMC)の種類
トランスファーモールドコンパウンド
エポキシ樹脂をベースにシリカフィラーを高充填したグラニュール状の材料です。従来のQFP・BGA等の量産パッケージに広く使用されており、成熟した製造インフラとの親和性が高い点が特長です。フィラー充填率の向上(90%以上)によって熱膨張係数をシリコンに近づける設計が主流となっており、反り抑制と信頼性確保の両立が設計上の重要課題です。
液状封止材(LMC)
先端パッケージングや小型CSP向けに、液状のエポキシ樹脂を使用するタイプです。微細ギャップへの充填性に優れ、FOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)やフリップチップ実装との相性が良く、バンプピッチの微細化が進む先端パッケージでの採用が拡大しています。
ウエハーレベル封止材
ウエハーレベルで一括モールドするFan-Out WLPに対応した材料であり、低反り性・低応力が最も重要な特性として求められます。ウエハー全面を均一にモールドする工程特性上、熱硬化時の収縮挙動の制御が材料設計の核心となります。
アンダーフィルの種類
アンダーフィルは実装プロセスや用途により三つに大別されます。キャピラリーアンダーフィル(CUF)はフリップチップ実装後に毛細管現象を利用してバンプ間隙に充填する最も一般的な方式で、充填性と信頼性実績が高い反面、工程タクトへの影響が課題です。モールドアンダーフィル(MUF)はEMCモールドプロセスと同時充填することで工程を簡略化し、スループット向上に寄与します。非流動性アンダーフィル(NUF)はチップ実装と同時硬化によりさらなる工程削減を実現し、チップレット構造など高密度実装への適用が検討されています。
市場動向
封止材市場はAIサーバー向けSoC・HBM搭載パッケージ・先端パッケージングの需要拡大を背景に成長が加速しています。CoWoS・FOWLPなどの先端パッケージングに使用される高機能封止材は従来の汎用品と比べて大幅に高い価格帯を形成しており、材料メーカーの収益性向上に直接寄与しています。世界の封止材市場は2024年時点で約35〜40億ドル規模と推計され、先端パッケージ向け高付加価値品が市場成長を牽引する構図が定着しつつあります。
主要メーカー
- 住友ベークライト(日本):世界最大の半導体封止材メーカー。シェア30%以上と推計。
- 信越化学工業(日本):シリコーン系封止材および液状封止材で高シェア。
- 日立化成(現レゾナック)(日本):封止材・アンダーフィル両分野に注力。
- Henkel(ドイツ):アンダーフィル分野でグローバル展開。
- Nagase ChemteX(日本):液状アンダーフィルに特化し先端パッケージ向けで存在感。
エンジニア視点の考察
封止材・アンダーフィルは「見えない材料」ですが、パッケージの信頼性試験(TCT・HAST)の合否を左右する極めて重要な材料です。3D-ICやチップレット構造では複数の異種材料が積層されるため、各層の熱膨張係数を精密に整合させる材料設計が信頼性の鍵を握ります。日本メーカーが圧倒的なシェアを持つ背景には、長年にわたるすり合わせ技術の蓄積と半導体パッケージメーカーとの緊密な協業関係があります。先端パッケージング向け高付加価値品においてどれだけ技術優位性を維持・拡張できるかが、今後の競争力を左右する最大の焦点です。

