熱界面材料(TIM)とは
熱界面材料(TIM:Thermal Interface Material)とは、半導体デバイスとヒートスプレッダー(IHS)、あるいはヒートシンクとの間に挟まれ、界面での熱抵抗を低減するための材料です。AIデータセンター向けGPU(NVIDIAのH100/H200/B200)やCPUは熱設計電力(TDP)が300〜1000W超に達するケースもあり、TIMの性能がシステム全体の冷却設計・信頼性に直結するようになっています。
TIMの種類と特性
TIM1(Die-to-IHS間)
シリコンダイとヒートスプレッダー(IHS)の間に使用されます。最も熱伝導性能が求められる部位であり、InGa(インジウム・ガリウム)合金などの液体金属TIMが高性能GPUで採用されています。
シリコーングリース
フィラー入りシリコーングリースは最も広く使用されるTIMです。熱伝導率は1〜10 W/m·K程度で取り扱いが容易ですが、経年によるポンプアウトや乾燥が課題です。
フェーズチェンジマテリアル(PCM)
常温では固体、使用温度帯で軟化して界面へのぬれ性が向上します。リワーク性に優れ、量産製品向けに適しています。
液体金属TIM
InGaSnなどの低融点金属合金で、熱伝導率は40〜80 W/m·Kと群を抜く高性能を誇ります。AMDのRyzenシリーズで採用されたことで知名度が上がりました。
市場動向
TIM市場はAIサーバー・高性能コンピューティングの需要急増を直接的な追い風として成長しています。世界のTIM市場は2024年時点で約30億ドル規模と推計され、2030年に向けて年率8〜10%の成長が見込まれます。液体金属TIM・高熱伝導率フィラー入りグリースなどの高付加価値品が市場を牽引しています。
主要メーカー
- 信越化学工業(日本):シリコーングリース・シリコーンフィルム系TIMで世界最大手の一角。
- Honeywell(米国):PCM型TIM「PTM7950」シリーズが高性能PC・サーバー向けで広く採用。
- Indium Corporation(米国):インジウムベースのソルダーTIM・液体金属TIMに強み。
- Laird Technologies(英国):熱管理材料の専業メーカー。各種TIMをラインアップ。
- デンカ(日本):窒化アルミニウム・高熱伝導フィラーの供給を通じてTIM向け材料を展開。
エンジニア視点の考察
TIMは「地味だが重要」な材料の典型例です。半導体の高性能化が電力密度の上昇を伴う以上、TIMの改良は避けて通れない課題です。特にAI学習用チップでは電力密度が非常に高く、TIMの熱抵抗を削減することがジャンクション温度の管理と長期信頼性に直結します。将来的に液浸冷却や埋め込み型冷却への移行が進めばTIMの役割が変わる可能性もありますが、当面は大多数のシステムで従来型冷却が主流であり、TIM市場は成長が続くでしょう。
