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CVD成膜ガス完全ガイド|種類・用途・WF6危機・モリブデン/ルテニウム最新動向まで徹底解説

材料
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半導体・電子デバイス産業の発展に欠かせないCVD成膜ガス。本記事では、CVD成膜ガスの基礎知識から最新の市場動向、WF6サプライチェーン危機、モリブデン・ルテニウムなど次世代材料へのシフト、主要メーカーまで、エンジニア必見の情報を網羅的に解説します。

CVD成膜ガスに関する最新ニュース

  • 超薄型マスフローコントローラーが登場
    2025年1月、堀場エステックが超薄型マスフローコントローラー「DZ-107」を発売しました。わずか10mm幅でありながら、従来モデルの約7倍となる20SLMの大流量化を実現しています。CVDやALDなどの大流量ガス制御を必要とする成膜プロセスに対応可能となり、半導体製造の効率化が期待されています。
  • 新しいCVD技術「ミストCVD法」の開発
    ミストCVD技術を有するFLOSFIAの共同研究先である東京大学の研究チームが、マイクロサイズのミストを使用した新しいCVD技術「ミストCVD法」を開発しました。この技術により、大面積にわたって均質な膜を形成することが可能になり、次世代の半導体製造プロセスへの応用が期待されています。
  • 業界初、液体原料から直接成膜するCVD技術
    魁半導体が開発した新技術では気化させる工程(機器)の必要がなく、原料から直接プラズマ装置「直接気化式-薄膜形成装置DH-CVD」に供給し成膜します。液体成分の揮発性を利用した同社の新技術で、二価アルコール(ジオール)以上のポリオールと膜の原料液含有の組成物(溶液)を販売しています。
  • ラムリサーチ、モリブデン対応ALDシステム「ALTUS Halo」を発表
    2025年2月19日、Lam ResearchはモリブデンのALD成膜に対応した「ALTUS Halo」を正式発表しました(Lam Research公式プレスリリース、2025年2月19日)。3D NANDのワードライン金属としてタングステンに代わるモリブデンの採用が量産フェーズへ移行しつつあるとされており、Micronが3D NANDへの量産適用を公式に表明しています。

CVD成膜ガスとは?

CVDの基本原理

CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)は、気体状態の原料(CVD成膜ガス)を反応容器内に導入し、熱やプラズマなどのエネルギーを加えて化学反応を起こさせ、基板上に目的の薄膜を形成する技術です。

CVD成膜ガスの役割

CVD成膜ガスは、この化学反応の原料となる気体です。シラン(SiH4)や六フッ化タングステン(WF6)などが代表的で、目的の薄膜の組成に応じて選択されます。これらのガスが化学反応を起こすことで、均一で高品質な薄膜が形成されます。

CVDの特徴と利点

CVDは、複雑な形状の基板にも均一な薄膜を形成できる点が大きな特徴です。また、高速で大面積の成膜が可能なため、量産性に優れています。さらに、原子レベルでの膜厚制御や多層膜の形成も可能であり、半導体デバイスの微細化・高性能化に不可欠な技術となっています。

CVD成膜ガスは、この優れた薄膜形成技術を支える重要な材料です。半導体製造プロセスの中でも特に重要な役割を果たしており、デバイスの性能や信頼性に直接影響を与えます。次世代の半導体技術の発展には、CVD成膜ガスのさらなる進化が不可欠であり、研究開発が活発に行われています。

CVD成膜ガスの市場規模

ALD/CVD前駆体市場の成長予測

半導体製造向けのALD/CVD前駆体(成膜材料)市場については、業界調査会社TECHCETが複数のレポートで成長見通しを発表しています。2025年6月時点の予測では、世界の半導体前駆体市場は2024年に17億ドル規模へ回復し、2029年までCAGR(年平均成長率)10.4%で成長すると予測されています(TECHCET、2025年6月)。

また、TECHCETが2025年10月に公表した別のレポートによれば、誘電体前駆体の売上は2024年に18%増加し、金属系(メタライゼーション)前駆体は2025〜2026年の前年比成長率が11%と予測されているとされます。長期的には2024〜2029年のCAGRが誘電体9%・金属系7%と予測されており、上記10.4%は前駆体市場全体の数値であることに留意が必要です(TECHCET、2025年10月)。成長ドライバーとしては、sub-3nmロジック向けプロセスの普及、GAA(Gate-All-Around)アーキテクチャの採用拡大、HBM(High Bandwidth Memory)需要の増加が挙げられています。

半導体製造装置市場との関連

CVD装置を含む半導体製造装置市場全体も拡大傾向にあります。SEMI公式発表(2025年12月)によると、2025年の世界半導体製造装置市場は前年比13.7%増の1,330億ドル規模に達すると上方修正されました(SEMI、2025年12月)。AI関連投資の拡大を背景に、CVD装置を含む成膜装置の需要も引き続き増加しています。

地域別の市場動向

アジア地域、特に中国・韓国・台湾を中心に市場が急速に拡大しています。これらの国々では半導体製造拠点の増設が進んでおり、CVD成膜ガスの需要が高まっています。北米市場でも、政府の支援策により半導体製造の国内回帰が進んでおり、CVD成膜ガス市場も活発化しています。

CVD成膜ガスの種類

シリコン系ガス

シラン(SiH4)は、最も一般的に使用されるCVD成膜ガスの一つです。シリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(Si3N4)の形成に用いられ、半導体デバイスの絶縁層や保護膜として重要な役割を果たします。ジシラン(Si2H6)やトリシラン(Si3H8)なども、より高速な成膜が可能なガスとして使用されています。

また、テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC2H5)4)は、シラン系ガスに代わる重要なCVD成膜ガスとして広く使用されています。常温で液体であり取り扱いが容易で安全性が高く、優れたステップカバレッジを持ち複雑な表面形状にも均一な膜を形成できること、低温(400℃程度)でのプラズマCVDプロセスが可能といった特徴を持ちます。層間絶縁膜やパッシベーション膜として広く使用されており、オゾンCVDやプラズマCVDなど様々な成膜方法にも対応可能です。

金属系ガス

六フッ化タングステン(WF6)は、タングステン薄膜の形成に使用される代表的な金属系CVD成膜ガスです。半導体デバイスの配線材料として長く利用されてきましたが、近年は3D NANDのワードライン金属としてモリブデン(Mo)への置き換えが進んでいます(詳細は後述)。その他、四塩化チタン(TiCl4)や三塩化ホウ素(BCl3)なども、それぞれチタンやホウ素を含む薄膜の形成に使用されます。

有機金属ガス

トリメチルガリウム((CH3)3Ga)やトリメチルアルミニウム((CH3)3Al)などの有機金属ガスは、主にMOCVD(有機金属化学気相成長)プロセスで使用されます。これらのガスは、化合物半導体や高誘電率(High-k)材料の成膜に用いられ、高性能デバイスの製造に不可欠です。

CVD成膜ガスの種類は多岐にわたり、それぞれが特定の薄膜形成に適しています。半導体デバイスの構造が複雑化し、要求される性能が高度化するにつれ、新しいCVD成膜ガスの開発も進んでいます。また、環境負荷の低減を目指し、より安全で取り扱いやすいCVD成膜ガスの開発も進められています。

WF6(六フッ化タングステン)のサプライチェーン危機

金属系CVD成膜ガスとして長年にわたり半導体製造を支えてきたWF6(六フッ化タングステン)が、深刻なサプライチェーン危機に直面しています。

中国は2025年2月にタングステン関連品目を輸出管理リストに追加しました。その影響で日本向けのタングステン原料輸出が2026年初頭に事実上ゼロに落ちたとされ、国内の主要WF6メーカーである関東電化工業およびセントラル硝子が生産停止に追い込まれたと報じられています。その結果、WF6価格は2026年4月に前月比204%急騰し、前年比232.7%超の高騰となっているとされます(exa-technologies.jp、2026年6月)。

この供給途絶の影響はTSMCなど主要顧客にも波及しているとされており、WF6を従来プロセスで使用してきたメーカーにとってサプライチェーンの組み替えが急務となっています。後述のモリブデンへの移行加速には、こうした地政学的リスクも背景として働いていることを念頭に置く必要があります。

次世代メタル前駆体の動向:モリブデン・ルテニウムへのシフト

モリブデン(Mo)CVD/ALD材料の量産本格化

3D NANDフラッシュメモリのワードライン金属として、タングステン(W)に代わりモリブデン(Mo)を採用する動きが量産フェーズへと移行しつつあります。2025年2月19日、Lam ResearchはMo対応のALDシステム「ALTUS Halo」を正式発表しており、Micronが3D NANDへの量産適用を公式に表明したと報じられています(Lam Research公式プレスリリース、2025年2月19日)。

Samsungは2024年4月量産開始の第9世代286層3D NANDでモリブデンをワードラインに先行採用しており、400層超の第10世代ではその適用工程をさらに拡大する計画とされています。一方、SK hynixは375層3D NANDの生産検証を完了し、2026年末の量産開始を準備中とされており、成膜装置には東京エレクトロンの炉式バッチ装置を選定していると報じられています(The Elec、2026年6月)。Lam Research「ALTUS Halo」を採用するSamsungと、東京エレクトロンのバッチ装置を選定するSK hynixとで装置選択が分岐していることも業界の注目点です。

モリブデンはタングステンに比べて抵抗率が低く、積層構造の微細化に有利とされており、今後の3D NANDの高積層化に伴い需要が拡大する見通しです。

前駆体の供給面では、JX金属が2026年3月に茨城事業所(日立地区)においてモリブデン化合物(MoO2Cl2)の量産ラインの立ち上げを完了し、最先端半導体向け出荷を本格化しています。同社は5N・6Nの2等級を国内で量産中とされ、用途として3D NANDのワードライン、DRAMのワードライン・ビットライン、ロジック配線を挙げています。さらにドイツのグループ会社TANIOBISでもCVD/ALD材料の開発・生産設備が稼働し、グローバル供給体制を強化しているとされています(JX金属プレスリリース、2026年3月)。

ルテニウム(Ru)CVD/ALD前駆体の先端ロジック・DRAM向け開発加速

FinFETからGAA(Gate-All-Around)アーキテクチャへの移行に伴い、ルテニウム(Ru)ベースのCVD/ALD前駆体がコンタクト配線・DRAMキャパシター電極向けに試作評価が進んでいます。田中貴金属は半導体前工程向けのルテニウム成膜材料について実用化推進を発表しており(田中貴金属、2025年12月)、東ソーなど国内企業も参入を発表していると報じられています。数年以内の量産適用が見込まれているとされます。また、先端ロジックではバックサイド電力デリバリー(Backside PDN)向けのメタル前駆体需要も新たに拡大していると報告されています(Semiconductor Digest、2026年3月)。

GAAアーキテクチャ移行がCVD/ALDプロセスに与える影響

FinFETからGAAへの移行(TSMCのN2プロセスは2025年量産開始見込み、SamsungのGAAベース3nmプロセスは既に量産中とされる)により、ハフニウム・ジルコニウム・ルテニウム・コバルト・モリブデンなどのHigh-k・メタル系前駆体の需要が増大しています。GAAではFinFETに比べてナノシート全周をゲートが囲む構造となるため、ウェーハ1枚あたりの前駆体使用量が増加する「材料集約度の上昇」が起きており、これが前駆体市場の成長を押し上げる主要因になりつつあるとTECHCETは分析しています(TECHCET、2025年6月)。

CVD成膜ガスの主な用途

半導体デバイスの絶縁膜形成

CVD成膜ガスは、トランジスタやメモリデバイスの絶縁膜形成に広く使用されています。シラン(SiH4)やテトラエトキシシラン(TEOS)を用いたシリコン酸化膜(SiO2)や窒化シリコン膜(Si3N4)の形成は、デバイスの電気的特性を制御する上で極めて重要です。特に、高誘電率(High-k)材料の成膜には有機金属CVD成膜ガスが用いられ、デバイスの微細化と高性能化に貢献しています。

配線材料の形成

半導体チップ内の配線材料として、タングステンやアルミニウムなどの金属薄膜がCVD法で形成されます。六フッ化タングステン(WF6)やトリメチルアルミニウム((CH3)3Al)などのCVD成膜ガスが使用されてきましたが、前述のとおり3D NAND向けではモリブデン系材料への移行が進んでいます。また、WF6については中国の輸出管理強化を背景とした深刻なサプライチェーン危機も発生しており(詳細は前章参照)、業界全体での材料調達戦略の見直しが急がれています。特に微細な配線構造においては、CVD法の優れたステップカバレッジ特性が活かされています。

光学デバイスの製造

CVD成膜ガスは、LEDや太陽電池などの光学デバイスの製造にも重要な役割を果たしています。例えば、GaN(窒化ガリウム)系LEDの製造では、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)とアンモニア(NH3)を用いたMOCVDプロセスが一般的です。また、アモルファスシリコン太陽電池の製造にも、シラン(SiH4)を用いたプラズマCVDが広く利用されています。

次世代メモリ・パワー半導体への展開

CVD成膜ガスの用途は半導体産業の発展とともに拡大しています。3D NANDフラッシュメモリのさらなる高積層化や、次世代DRAMの開発にも新しいCVD/ALD成膜プロセスが導入されています。また、パワー半導体デバイスの分野では、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの新材料の成膜にCVD技術が活用されており、電気自動車や再生可能エネルギー分野での応用が期待されています。グラフェンやカーボンナノチューブなどの新素材の製造にもCVD技術が用いられており、次世代デバイスの開発を幅広く支えています。

CVD成膜ガスの主な製造メーカー

日本の主要メーカー

日本ではCVD成膜ガスの製造において、大陽日酸が業界をリードしています。同社は高純度ガスの製造技術と安定供給システムを強みとし、半導体製造向けに幅広いCVD成膜ガスを提供しています。また、昭和電工や日本エア・リキードも高品質なCVD成膜ガスの製造で知られています。貴金属系前駆体分野では田中貴金属や東ソーなどが参入・開発を進めており、JX金属はモリブデン化合物(MoO2Cl2)の量産対応を茨城事業所で完了し、グローバル供給体制を整備しています。

海外の大手メーカー

海外では、米国のAir Products and Chemicalsや、ドイツのLinde plcが、グローバル市場でCVD成膜ガスの主要サプライヤーとして知られています。これらの企業は、世界中の半導体メーカーに高純度ガスを供給し、製品の品質と安定供給で高い評価を得ています。

新興メーカーの台頭

近年、中国や韓国などのアジア地域で新興のCVD成膜ガスメーカーが台頭しています。これらの企業は、急成長する地域の半導体産業に支えられ、技術力と生産能力を急速に向上させています。中国の江蘇華昌化工や韓国のSK Materialsなどが地域市場で存在感を増しているとされます。

CVD成膜ガス市場は高度な技術と厳格な品質管理が要求される分野です。長年の経験と実績を持つ大手メーカーが市場の大部分を占めていますが、半導体産業の急速な成長と技術革新に伴い、新興メーカーも独自の技術や地域密着型のサービスを武器に市場シェアを拡大しつつあります。モリブデンやルテニウムなど新材料向け前駆体の供給体制整備も、メーカー各社にとって重要な競争軸となっています。

まとめ

CVD成膜ガスは、半導体産業の発展を支える重要な材料です。従来のシリコン系・タングステン系ガスに加え、GAAアーキテクチャの普及やメモリの高積層化に対応するため、モリブデン・ルテニウムなど新世代の前駆体材料への移行が急速に進んでいます。一方で、WF6については中国の輸出管理強化を背景とした深刻なサプライチェーン危機が現実のものとなっており、材料調達の多様化・代替材料へのシフトがこれまで以上に重要な経営・技術課題となっています。

ALD/CVD前駆体市場は2029年までCAGR 10.4%での成長が予測されており(TECHCET、2025年6月)、材料集約度の上昇が市場拡大の構造的な要因となっています。エンジニアの皆さんには、こうした材料トレンドの変化とサプライチェーンリスクの双方を把握しておくことが、今後の製造プロセス設計において重要となるでしょう。

参考サイト