PR
スポンサーリンク

PVD装置〜スパッタリング、蒸着:半導体、ディスプレイのメタル配線、バリア層など均一な薄膜形成に必須

装置

半導体製造において欠かせないPVD(物理気相成長法)装置。スパッタリング装置は、ターゲットと呼ばれる円盤状の材料に、アルゴンを高エネルギーでぶつけてアルゴン電子に弾き出された原子をウエハ表面に成膜させます。蒸着装置は、真空容器中で蒸着材料を加熱、気化または昇華させて、基板表面に付着させて薄膜を形成する方法です。電子ビーム、イオンビームなどにより加熱します。

膜厚は数10〜数100nmオーダーのプロセスが多く、金属膜やバリア層、銅めっきの下地膜にTi/Cuの薄膜を密着層、導電層として形成するのに用いられます。

本記事では、PVD装置の基本から最新のトレンド、市場規模まで詳しく解説します。半導体業界に携わる方はもちろん、これから業界に参入を考えている方にも役立つ情報満載です!

スポンサーリンク

PVD装置に関する最新ニュース

  • スパッタリング法によるGaNエピタキシャル成長モジュール「SEGul」を開発、販売開始
    アルバックは、スパッタリング法によるGaNのエピタキシャル薄膜形成技術「RaSE法」と、それを用いたスパッタリングモジュール「SEGul」を開発・販売開始しました。GaNは次世代パワー半導体として期待されていますが、従来の製造には課題がありました。アルバックの新技術は、長年のスパッタリング技術を応用し、これらの課題解決を目指しています。
  • PVD真空成膜装置の世界市場調査レポート発表
    YH Research株式会社は2024年2月、「グローバルPVD真空成膜装置のトップ会社の市場シェアおよびランキング 2024」を発表しました。このレポートでは、PVD真空成膜装置市場の製品定義、分類、用途、企業、産業チェーン構造に関する情報を提供しています。また、PVD真空成膜装置市場の開発方針と計画、製造プロセスとコスト構造についても考察しています。
  • 半導体製造用スパッタリング装置の需要増加
    半導体製造におけるマイクロエレクトロニクスの需要増加に伴い、PVD装置、特にスパッタリング装置の需要が拡大しています。アジア太平洋地域では、低コスト維持のためにウェハーや太陽電池メーカーによる研究開発投資が増加しており、PVD装置市場に有利な機会を提供すると期待されています。
  • 神戸製鋼所が新型AIP装置を発表
    神戸製鋼所は2022年10月、新型のアークイオンプレーティング装置(AIP)「AIP-iX」シリーズを発表しました。従来品と比較して、生成する皮膜の長寿命化を実現しています。新開発の装置や成膜プロセスにより、Al含有率が70at%以上でも高硬度な立方晶構造を維持できる硬質なAlCrN皮膜のコーティングが可能になりました。これにより、ハイエンド工具と比較して約1.5倍の皮膜寿命向上を達成しています。

PVD装置とは?

PVD(物理蒸着)の基本原理

PVD(Physical Vapor Deposition)は、物理的な方法で材料を蒸発・蒸着させ、基板上に薄膜を形成する技術です。主に真空環境下で行われ、ターゲット材料を物理的に気化させ、基板上に堆積させることで薄膜を形成します。PVDは、CVD(化学気相成長)と並んで、主に薄膜の製造に使用される重要な技術です。

PVDとCVDの違い

PVDとCVDの主な違いは、成膜プロセスにあります。PVDは物理的な方法で材料を蒸発させるのに対し、CVDは化学反応を利用して成膜を行います。PVDは比較的低温で処理が可能であり、基板へのダメージが少ないという特徴があります。一方、CVDは高温処理が必要ですが、より高い密着性を得られる傾向があります。

PVD装置の基本構成

PVD装置は、主に以下の要素で構成されています:

  1. 真空チャンバー:成膜プロセスを行う密閉空間
  2. ターゲット:成膜材料の供給源
  3. 基板ホルダー:成膜対象となる基板を保持する機構
  4. 真空排気システム:チャンバー内を高真空に保つための装置
  5. 電源:ターゲット材料を気化させるためのエネルギー供給源
  6. ガス供給系:反応性ガスや不活性ガスを供給するシステム
    これらの要素が適切に制御されることで、高品質な薄膜形成が可能となります。

PVD装置の市場規模

1. 世界市場の成長予測

PVD装置の世界市場は着実に成長を続けています。Mordor Intelligenceの調査によると、PVD装置市場は2020年にUSD 19.35 billionと評価され、2026年にはUSD 25.93 billionに達すると予測されています。2021年から2026年の予測期間において、年平均成長率(CAGR)は8.9%と見込まれています。

2. 成長を牽引する要因

PVD装置市場の成長を牽引する主な要因として、以下が挙げられます:

  1. 医療機器や装置の需要増加
  2. マイクロエレクトロニクス分野での需要拡大
  3. 環境に優しい成膜技術としてのPVDの採用増加
  4. 新興国市場における半導体産業の成長
    特に、アジア太平洋地域での需要増加が市場成長を大きく後押ししています。

3. 市場成長の課題

一方で、PVD装置市場の成長を妨げる要因もあります:

  1. 高額な設備投資の必要性
  2. 技術の複雑さと専門知識の要求
  3. 代替技術の台頭
    これらの課題に対応するため、装置メーカーは継続的な技術革新と、より使いやすく効率的な装置の開発に注力しています。

PVD装置の種類

スパッタリング装置

スパッタリング装置は、アルゴンイオンなどの高エネルギー粒子をターゲット材料に衝突させ、はじき出された原子を基板上に堆積させる方式です。主な特徴として、低温プロセスが可能であること、ウェハーへのダメージが少ないこと、金属膜(電極膜や配線膜)の成膜に適していることが挙げられます。近年では、アルミニウムを用いた金属配線膜の形成に広く利用されています。

2. 真空蒸着装置

真空蒸着装置は、抵抗加熱や電子ビームなどを用いて材料を加熱・蒸発させ、基板上に堆積させる方式です。この方法の利点は、成膜速度が速いこと、装置構成がシンプルであること、処理温度が低いため基板へのダメージが少ないことです。主にガラスやプラスチックなどへの成膜に適しており、光学部品や装飾品の製造に広く使用されています。

イオンプレーティング装置

イオンプレーティング装置は、蒸発した原子をイオン化し、電界によって加速して基板に衝突させる方式です。この方法の特徴は、高いエネルギーを持つイオンが基板に衝突するため、密着性の高い膜が得られることです。また、複雑な形状の基板にも均一な成膜が可能です。代表的な装置として、アークイオンプレーティング(AIP)装置があり、切削工具や金型などの表面処理に広く利用されています。

PVD装置の主な用途

半導体製造プロセスでの応用

PVD装置は、半導体製造プロセスにおいて重要な役割を果たしています。主な用途として、以下が挙げられます:

  1. 金属配線の形成:アルミニウムやチタンなどの金属薄膜を形成し、半導体デバイスの配線として利用します。
  2. バリア層の形成:銅配線プロセスにおいて、銅の拡散を防ぐためのバリア層(TaN、TiNなど)を形成します。
  3. 電極形成:ゲート電極やソース/ドレイン電極などの形成に利用されます。
    これらの用途において、PVD装置は高品質で均一な薄膜を形成する能力が評価されています。

ディスプレイ製造での利用

PVD装置は、各種ディスプレイの製造プロセスでも重要な役割を果たしています:

  1. 透明導電膜の形成:ITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電膜を形成し、タッチパネルや液晶ディスプレイの電極として利用します。
  2. 反射膜の形成:アルミニウムなどの高反射率金属膜を形成し、液晶ディスプレイのバックライト効率を向上させます。
  3. カラーフィルターの形成:有機ELディスプレイにおいて、金属マスクを用いたRGB発光層の形成に利用されます。
    これらの用途において、PVD装置は大面積基板への均一成膜能力が重視されています。

光学部品・装飾品への応用

PVD装置は、光学部品や装飾品の製造にも広く利用されています:

  1. 反射防止膜の形成:カメラレンズやメガネレンズなどの光学部品に、反射防止膜を形成します。
  2. 装飾用コーティング:時計やアクセサリーなどの装飾品に、金や銀などの金属薄膜を形成し、高級感や耐久性を付与します。
  3. 硬質保護膜の形成:工具や機械部品の表面に、TiNやDLCなどの硬質保護膜を形成し、耐摩耗性を向上させます。
    これらの用途では、PVD装置の低温プロセス能力や、多様な材料に対応できる柔軟性が評価されています。

PVD装置の主な製造メーカー

国内メーカー

日本国内には、高品質なPVD装置を製造する優れたメーカーが多数存在します:

  • アルバック(ULVAC)
    真空技術を基盤とした成膜装置のリーディングカンパニーです。スパッタリング装置では、プラスチックフィルムやフレキシブル基板への高機能多層膜形成が可能な「SPWシリーズ」を提供しています。また、真空蒸着装置は、板状基板からフレキシブル基板まで対応し、次世代電子機器やディスプレイ製造に最適化されています。これらの装置は半導体、太陽電池、有機ELなど幅広い分野で活用されています。
  • キヤノンアネルバ
    磁性膜成膜用のマグネトロンスパッタリング装置や蒸着装置で高い技術力を持つ企業です。特に、HDD用磁性薄膜や半導体デバイス向けの薄膜形成で高い評価を得ています。同社の装置は、高融点金属や複合材料の成膜に対応しており、精密な薄膜形成が可能です。また、特許総合力ランキングではトップクラスに位置し、業界をリードする存在として知られています。
  • 芝浦メカトロニクス
    芝浦メカトロニクスは、スパッタリング装置や真空蒸着装置を中心に展開するメーカーです。スパッタリング装置では、超高真空対応の多層成膜技術を提供し、磁気デバイスや化合物材料の研究開発に貢献しています。また、蒸着装置では抵抗加熱法を採用し、高品質な薄膜形成が可能です。同社はカスタマイズ性の高い専用設計にも対応しており、多様な産業ニーズに応えています[5][8]。
  • 昭和真空
    昭和真空は、スマートフォンや自動車などで使用される薄膜形成技術を支える真空装置メーカーです。スパッタリング装置や蒸着装置を含む多様な成膜装置を提供し、特に高精度な薄膜形成に適した製品が特徴です。
  • シンクロン
    シンクロンは光学薄膜や真空蒸着、スパッタリング技術に特化した真空薄膜形成装置メーカーです。研究開発から量産対応まで幅広いニーズに対応し、高品質な光学コーティングや電子部品向けの薄膜形成技術を提供しています。
  • サンバック
    スパッタリング装置や真空蒸着装置、CVD装置など、多様な真空プロセス装置を設計・製造しています。既製品だけでなく、完全カスタマイズ型の装置も提供し、多様な産業分野に対応可能です。
  • キヤノントッキ
    有機ELディスプレイ製造用の真空蒸着装置で世界的に知られています。同社の技術は、高精度かつ均一な薄膜形成を実現し、大面積基板への対応も可能です。
  • サンユー電子
    スパッタリング装置や真空蒸着装置を中心に、電子顕微鏡関連機器や試験計測機器も製造しています。コンパクトで使いやすい設計が特徴で、研究用途から産業用途まで幅広く対応します。
  • 神港精機
    真空ポンプや真空装置の専門メーカーであり、光学検査装置やアセンブリ装置も手掛けています。特に高い信頼性と耐久性を持つ製品が特徴です。
  • エイエルエステクノロジー
    研究用の蒸着装置や真空機器の製造販売を行っています。独自の技術と経験を活かし、高度な研究開発ニーズに応える製品ラインナップが揃っています。
  • マイクロフェーズ
    カーボンナノチューブ(CNT)などの新規材料合成や評価用CVD成膜装置を提供しています。先端材料分野での研究開発支援を得意としています。
  • テルモセラジャパン
    高温炉や超高温真空ヒーターなどの熱応用機器とともに、薄膜実験用の蒸着装置も提供しています。研究開発向けの高性能機器が特徴です。
  • ジャパンクリエイト
    スパッタリング装置やEB蒸着装置など半導体製造向けの真空プロセス装置を提供しています。研究用から量産用まで柔軟なカスタマイズ対応が可能です。
  • 真空デバイス
    スパッタリング装置や蒸着装置、プラズマ照射装置など多岐にわたる真空プロセス機器を設計・製造しています。特に小型研究用機器から産業用途まで幅広いラインナップが特徴です。
  • ナノテック
    DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングを中心としたPVD成膜装置の開発・製造を行っています。代表的な「PSII方式マルチPVD成膜装置(NPSシリーズ)」は、イオン化蒸着法を採用し、高硬度で低摩擦のDLC膜形成を可能にします。
  • 株式会社FKDファクトリ
    スパッタリング装置や蒸着装置の製造・販売を行う企業で、特に受託加工サービスにも注力しています。同社のスパッタリング装置は、多様なターゲット材料に対応しており、金属膜や酸化膜の成膜が可能です。また、蒸着用部材やターゲット材料も取り扱っており、カスタマイズ性の高い製品提供が特徴です。研究開発から量産まで幅広い用途に対応するソリューションを提供しています。
  • エイ・エス・ディ株式会社
    スパッタリング装置の設計・製造および受託成膜サービスを提供しています。代表的な製品「HMS2-300」は、2インチマグネトロン式スパッタカソードを搭載し、高温環境下での成膜が可能です。また、圧電膜形成用装置では、高速かつ安定したリアクティブスパッタ成膜が実現できるため、MEMSや半導体デバイス製造に適しています。

海外メーカー

グローバル市場では、以下のメーカーが高いシェアを持っています:

  • Applied Materials(アプライド・マテリアルズ)
    半導体やディスプレイ製造向けの材料工学ソリューションを提供する世界的なリーダー企業です。同社のPVD装置は、半導体ウェハー製造プロセスにおける薄膜形成に使用され、高精度かつ高効率な成膜技術を実現します。また、CVDやALDを含む多様な成膜技術を統合した「Integrated Materials Solutions」により、AIや次世代デバイス向けの高性能チップ製造を支援しています。特に、電力消費削減や性能向上を可能にする技術で業界を牽引しています。
  • Veeco Instruments(ヴィーコ・インストゥルメンツ)
    半導体および化合物半導体製造向けのプロセス装置を設計・製造する企業です。同社のPVD装置は、先進パッケージングや光電子デバイス製造において重要な役割を果たしており、薄膜形成技術における高い信頼性が特徴です。また、MOCVDやMBE(分子線エピタキシー)など、多様な成膜技術にも対応しており、AI、5G、自動運転車などの最先端分野で活用されています。特に、レーザーアニールやイオンビームエッチング技術も提供し、多様な製造プロセスをサポートしています。
  • AIXTRON(アイストロン)
    化合物半導体やナノテクノロジー材料の成膜用デポジション装置を専門とするドイツの企業です。同社はMOCVD装置で世界的に高いシェアを持ち、LED、レーザーダイオード、高周波デバイスなどの製造に不可欠な技術を提供しています。特に、高効率で均一な薄膜形成が可能な装置設計が強みです。また、次世代通信(5G)、電気自動車、量子コンピューティングなどの分野で使用される先端材料開発にも貢献しています。

    これら3社は、それぞれ独自の技術と製品ラインアップを持ち、半導体業界や次世代デバイス製造分野で重要な役割を果たしています。特に、高精度な薄膜形成技術と多様なプロセス対応力が、それぞれの市場競争力を支えています。

まとめ

PVD装置は、半導体製造やディスプレイ製造、光学部品製造など、幅広い分野で不可欠な技術となっています。市場は着実に成長を続けており、特にアジア太平洋地域での需要増加が顕著です。スパッタリング装置、真空蒸着装置、イオンプレーティング装置など、様々な種類のPVD装置が開発されており、それぞれの特徴を活かして多様な用途に対応しています。

今後は、IoTやAI、5Gなどの技術進化に伴い、より高性能で効率的なPVD装置の需要が増加すると予想されます。また、環境負荷の低減や省エネルギー化など、サステナビリティへの対応も重要な課題となるでしょう。

参考サイト