半導体パッケージング工程は、集積回路(IC)チップを外部環境から保護し、電気的に接続する重要なプロセスです。ウェハの切断から始まり、ダイシングによって個々のチップに分離されます。次に、チップはリードフレームやPCBに取り付けられ、ワイヤーボンディングやフリップチップ技術を用いて電気的接続が行われます。その後、成形工程で樹脂封止され、外部からの損傷を防ぎます。2.5Dや3Dパッケージングなどの先端技術も登場し、高性能化と小型化が進んでいます。最後に、パッケージテストで品質確認が行われ、完成した半導体チップは様々な電子機器に組み込まれます。この工程は、半導体製造の最終段階として、製品の信頼性と性能に大きく影響します。
半導体パッケージング工程の主な装置について記載します。
ダイシング装置
ダイシング装置は最先端の微細加工技術を駆使して重要な役割を果たしています。ウェハから個々のチップを精密に切り出すこの工程では、ステルスダイシングやプラズマダイシングなどの革新的な技術が採用されています。特に、5GやAI、メタバースなどの次世代デジタル技術の進化に伴い、より高精度で効率的なダイシング手法が求められています。レーザーダイシングは、薄型ウェハや狭スクライブラインにも対応可能で、IoTデバイスやMEMSセンサーの製造に適しています。さらに、ダイシング工程の最適化は、チップレット技術やファンアウトパッケージングなどの先端パッケージング技術の発展にも不可欠です。これらの革新的なダイシング技術は、半導体産業の競争力強化と持続可能な製造プロセスの実現に貢献しています。
主な工法と特長
- ブレードダイシング:ダイヤモンドブレードで切断。汎用性が高い。
- レーザーダイシング:レーザーで切断。薄いウェハや狭いスクライブラインに適する。
- プラズマダイシング:プラズマエッチングで切断。ダメージが少ない。
主な仕様
- 切断精度:±1μm以下
- 切断速度:100-300mm/秒
- 対応ウェハサイズ:最大300mm
主な製造メーカー
ディスコ | ダイシングソー |
東京精密 | ダイシングマシン |
浜松ホトニクス | ステルスダイシング |
ADT | ダイシングソー |
Synova | レーザーダイシング |
ダイボンダー
ダイボンダーは、切り分けたチップをリードフレームやパッケージ基板に接着する装置です。
ダイボンダー装置は先端技術の要となる重要な役割を果たしています。この装置は、ウェハーから切り出された個々の半導体チップ(ダイ)をパッケージ基板やリードフレームに高精度で実装する機能を担います。最新のダイボンダーは、2.5D/3Dパッケージングや先端フリップチップ技術に対応し、微細なバンプ接続やTSV(Through-Silicon Via)を活用した積層構造の実現に貢献しています。また、AIやIoTデバイスの高性能化に伴い、HBM(High Bandwidth Memory)やインターポーザーを用いた高集積パッケージにも対応可能です。さらに、次世代の5G通信やエッジコンピューティング向けの高周波デバイスにも適用され、熱管理や電気的性能の最適化を実現します。
主な工法と特長
- エポキシダイボンディング:エポキシ樹脂で接着。汎用性が高い。
- 共晶ダイボンディング:金-シリコン合金で接着。高信頼性。
- はんだダイボンディング:はんだで接着。放熱性に優れる。
主な仕様
- 接着精度:±5μm以下
- タクトタイム:0.5-2秒/チップ
- 対応チップサイズ:0.2mm角-20mm角
主な製造メーカー
キヤノンマシナリー | ダイボンダ |
芝浦メカトロニクス | 2.5D、FO-WLPボンダ |
ファスフォードテクノロジ | FO-PLP、チップレットダイボンダ |
パナソニックコネクト | ダイボンダ・フリップチップボンダ |
ASM Pacific Technology | ダイボンダ |
BE Semiconductor | ダイボンダ、フリップチップボンダ |
ワイヤーボンダー
ワイヤーボンダーは、チップの電極とリードフレームを細い金属線で接続する装置です。ワイヤーボンディング装置は、微細化と高集積化が進む半導体チップと基板を高精度に接続する重要な役割を担っています。最新のボンディング装置は、AI制御による自動化や画像認識技術を駆使し、1/1000ミリ単位の超精密な接合を実現。金、銅、アルミニウムなどの極細ワイヤを用いて、ボールボンディングやウェッジボンディングなど多様な接合方式に対応。さらに、IoTデバイスやパワー半導体向けに、低温接合や還元性ガス雰囲気下での接合など、革新的なプロセス技術も導入されています。高速・高精度なXYテーブルと超音波発振装置を搭載し、多品種少量生産にも柔軟に対応する次世代ワイヤーボンディング装置は、5G通信やAI時代の半導体製造に不可欠な存在となっています。
主な工法と特長
- ボールボンディング:金線を使用。高速化が可能。
- ウェッジボンディング:アルミ線を使用。低コスト。
主な仕様
- ボンディング精度:±2μm以下
- ワイヤー径:15-50μm
- 生産性:10-15ワイヤー/秒
主な製造メーカー
㈱カイジョー | 超音波ワイヤボンダ |
超音波工業㈱ | 超音波ワイヤボンダ |
日本アビオニクス㈱ | ワイヤボンダ |
㈱新川 | ワイヤボンダ |
Kulicke & Soffa | ボールボンダ、ウェッジボンダ |
ASM Pacific Technology | ボールボンダ、ウェッジボンダ |
F&K Delvotec/エルテック | 超音波ワイヤボンダ、レーザーボンダ |
モールド装置
モールド装置は、チップを樹脂で封止する装置です。最新のモールド装置は、3Dパッケージングや2.5Dインターポーザー技術に対応し、高精度な樹脂封止を実現します。Fan-Out Wafer Level Packaging (FOWLP)やSystem-in-Package (SiP)などの先端パッケージング技術に不可欠な装置です。最新のモールド装置は、AIやIoTを活用した高度な制御システムを搭載し、ナノレベルの精度で樹脂を注入します。また、5G対応やHigh Bandwidth Memory (HBM)に必要な微細な配線にも対応可能です。さらに、環境負荷低減のため、低温硬化樹脂や省エネ設計を採用しています。Through Silicon Via (TSV)技術やフリップチップ実装にも対応し、高性能コンピューティングや人工知能チップの製造に欠かせない装置となっています。モールド装置の進化は、半導体産業の技術革新を支える重要な要素となっています。
主な工法と特長
- トランスファーモールド:熱硬化性樹脂を使用。量産性に優れる。
- コンプレッションモールド:薄型パッケージに適する。
主な仕様
- 成形圧力:5-10MPa
- 成形温度:150-200℃
- サイクルタイム:30-120秒
主な製造メーカー
TOWA㈱ | コンプレッションモールディング、トランスファモールディング |
アピックヤマダ㈱ | WLP,PLP用モールディング装置 |
アユミ工業㈱ | 真空封止装置 |
住友重機械工業㈱ | 封止プレス |
I-PEX㈱ | モールディング装置 |
BE Semiconductor | モールディング装置 |
検査装置
半導体検査装置は、完成したパッケージの電気的特性を検査する装置です。半導体パッケージング製造工程におけるテスト装置は、先端技術の粋を集めた高度な品質保証システムです。AI搭載の自動光学検査(AOI)装置が、ナノレベルの欠陥を高精度で検出し、3Dパッケージや2.5Dインターポーザの構造的完全性を確認します。また、5G対応の高周波テスターがミリ波帯域での性能を評価し、IoTデバイスの信頼性を担保します。さらに、EUV露光技術を用いたマスクパターン検査装置が、次世代チップの微細構造を検証します。熱画像解析システムは、AIチップの発熱特性を分析し、サーマルマネジメントの最適化に貢献します。これらの装置群が、ビッグデータ解析と機械学習アルゴリズムを駆使して、高度に自動化されたスマートファクトリーを実現し、次世代半導体の品質と信頼性を確保しています。
主な工法と特長
- ファンクションテスト:動作確認を行う。
- パラメトリックテスト:電気的特性を測定する。
主な仕様
- テスト速度:1-10ms/テスト項目
- 測定精度:0.1%以下
- 対応ピン数:最大2,000ピン
主な製造メーカー
㈱アドバンテスト | SoC、パワー半導体他 |
TERADYNE | デジタル/ミックスドシグナル、パワー&アナログ、メモリ他 |
その他の装置
バリ取り装置、封止用加熱炉、半田リフロー装置、半田ボールマウンティング装置 、リード加工機、マーキング装置など様々な装置があります。
参考サイト
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2021FY/000633.pdf
以上、半導体パッケージング製造の主要装置について解説しました。各装置メーカーは、高精度化や生産性向上、新しいパッケージング技術への対応など、継続的な技術革新を行っています。今後も、半導体の高性能化・小型化に伴い、パッケージング装置の進化が続くでしょう。