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シリコンフォトニクス~光導波路・受光素子・レーザー統合を実現する、高速・低消費電力時代の革新的プロセス技術

プロセス

 シリコンフォトニクスは、光通信と半導体プロセス技術を融合した最先端技術です。

 データセンターや5G、AI分野で期待が高まる本技術は、急速に市場規模を拡大中。

 この記事では、専門用語を交えて、シリコンフォトニクスの基礎、最新市場動向、主な用途、製造工程、技術課題、注目企業について、信頼できる情報源から網羅的にまとめます。

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 シリコンフォトニクスとは?

 シリコンフォトニクスは、シリコン半導体技術と光デバイス技術を融合した先端テクノロジーです。シリコン基板上に光変調器、受光器、波長多重器、導波路などのフォトニック素子を集積し、大容量・超高速かつ低消費電力のデータ伝送・処理を可能にします。

 既存のCMOSプロセスとの高い互換性により、従来の半導体工場で量産でき、コスト低減や小型・高集積化が可能になっています。

 データセンターの高速ネットワークやAI・スーパーコンピュータ間の大規模インターコネクト、医療・センシング分野など、幅広い産業で活用が拡大しており、次世代情報通信やエッジコンピューティングの根幹を支える重要技術とされています。

光集積回路(PIC:Photonic Integrated Circuit)とは

 光集積回路は、多数の光素子(例えば波長分割多重(WDM)素子や変調器、フォトダイオードなど)をシリコン基板上に集積化した半導体デバイスです。これにより、従来の電気信号よりも高速で大容量なデータ伝送が可能となります。PICは低消費電力、高帯域幅、超小型化という優位性からデータセンター・光通信ネットワーク・AIアクセラレータなどで注目されています。

シリコン(Silicon)の役割

 シリコンは豊富で安価な素材であり、半導体基板としてだけでなく、その高い光伝搬特性やCMOSプロセス互換性も評価されています。シリコンは透明度が高く、1,300nmや1,550nm帯の通信波長で特に低損失な伝搬が可能です。これにより「シリコン光導波路」や「マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)」など、半導体基板上で光回路を形成できます。従来のIII-V族材料と比較して量産性にも優れており、データ通信装置のコスト競争力向上に貢献しています。

光電融合とは?

 光電融合とは、光(フォトニクス)デバイスと電子(エレクトロニクス)デバイスをひとつのシステムやチップ上に統合し、電気信号と光信号の双方を最適に利用することで、従来の電子回路だけでは実現できなかった高速・大容量・低消費電力の情報処理や通信を可能にする技術領域を指します。近年の半導体プロセス高度化により、シリコン基板上で光変調器や受光器・導波路などのフォトニック素子を集積し、CMOSプロセスの電子回路と一体化する手法が主流になっています。これにより、遅延の少ないデータ伝送や超高速演算、データセンター・AI分野・IoTデバイスにおける省電力・小型化の要求に応えられる技術基盤が実現され、次世代情報通信インフラやスーパーコンピュータ、医療機器など幅広い応用が期待されています。

コパッケージド・オプティクスとは?

 コパッケージド・オプティクス(CPO:Co-Packaged Optics)は、スイッチASICやネットワークプロセッサなどの電子ICと、光トランシーバや光I/Oデバイスを一つのパッケージ内部に密接に集積する革新的技術です。従来は基板外部で光信号の入出力を行っていましたが、CPOでは電子チップと光モジュールを最短距離で接続可能となるため、伝送損失の低減や高速化、省スペース・省電力化が大幅に向上します。次世代データセンターの超高速スイッチや人工知能向けの大規模計算環境のインターコネクト技術として、急速に関心が高まっています。

シリコンフォトニクスの市場規模

グローバル市場動向

 シリコンフォトニクスの世界市場規模は、2024年時点で約10憶USDとされ、2029年までに20億USD超へと倍増が予想されています(CAGR:約14%)。こうした急成長の背景には、クラウド化や5G/6G、AI計算の爆発的なデータトラフィック増加があります。2025年以降はデータセンター間の長距離伝送や、ハイエンドスーパーコンピュータにも本格展開が進むと見込まれています。

日本国内の市場動向

 日本のシリコンフォトニクス市場も世界市場とパラレルに成長中です。NECや日立、富士通といった大手が研究開発を推進し、多層配線や光I/Oインターフェースの量産化トレンドが顕在化しています。国内AI・IoTベンダーの通信基盤強化需要も、研究開発や実証案件の加速を後押ししています。

用途別成長セグメント

 特に成長著しいのは、データセンター向け高速光インターコネクト、および5G/6G基地局・バックホール、医療・バイオ分野の光センシング装置向けPIC(フォトニック集積回路)です。製品群としては100Gbps、400Gbps光トランシーバが本命で、1.6Tbps世代開発も活発です。この他、量子コンピュータや自動運転車用LiDAR領域でも研究開発が進んでいます。

シリコンフォトニクスの主な用途

データセンター高速光通信

 シリコンフォトニクスはデータセンター内・間のネットワーク高速化・省電力化に革新をもたらしています。従来の電気信号より高密度な波長多重(DWDM)が可能であり、400GbEや800GbEなど次世代規格に対応します。とくに光トランシーバや光I/Oモジュールとして、インテルやアバゴ(ブロードコム)が量産実績を積み重ねています。これにより、サーバ増加による消費電力・発熱問題も軽減されています。

AI/スーパーコンピュータへの応用

 AIやスーパーコンピュータ分野でも、膨大なデータ伝送が課題となっています。シリコンフォトニクスは低遅延・大容量のデータパス確立に最適であり、NVIDIAやAMD、富士通などがCPU-GPU間インターコネクトやToR(トップ・オブ・ラック)スイッチ向け光I/Oに採用を拡大。計算密度がさらに高まる次世代ハイエンドシステムでは、シリコンフォトニクスの役割が一段と大きくなるでしょう。

医療・バイオセンサー/自動運転への展開

 医療・バイオ分野では、シリコンフォトニクスによる非侵襲型センサーやバイオチップ、小型分光器の研究が進行中です。また、自動運転・ADAS分野でも高精度LiDAR(光検出および距離測定)モジュールのコア技術として脚光を浴びています。波長の選択性・高感度性・CMOSプロセスによる小型一体化が商用化のカギです。

シリコンフォトニクスを構成する主な製造工程

SOI基板とウェハプロセス

 シリコンフォトニクス素子の多くはSOI(Silicon on Insulator)基板を使用し、光導波路構造や変調器などをフォトリソグラフィー、エッチング、イオン注入などの半導体製造プロセスで形成します。SOIは絶縁層を介して光損失を低減しつつ、光回路の高集積化を可能とします。

光素子・電子素子の集積化

 シリコン導波路と共に、III-V族材料(InPやGaAs)をハイブリッド実装することで、高効率なレーザーや受光素子(PD:Photodetector)の形成が可能となります。シリコン上でのモノリシック集積も進み、電気/光I/Oを一体化した複合デバイス開発が加速中です。異種材料集積はプロセス制御と歩留まりが課題ですが、年間数百万個単位の量産も現実化しています。

パッケージングと検査技術

 高周波動作・高密度実装を実現するため、光ファイバアレイとのアライメント技術やパッシブアライメント手法、チップバンプ接合技術も鍵となっています。加えて、自動検査装置や光特性評価、冷却機構の開発も不可欠。低コスト/ファブレス対応のターンキー・パッケージング技術の進化が、今後の量産・低価格化の決め手です。

シリコンフォトニクスの技術的な課題

波長変換・光源の高効率化

 シリコン自体はレーザー発振が困難なため、外部光源やIII-V族材料とのハイブリッド化が依然として必要です。レーザー素子との集積化・大量生産時のコスト低減、波長変換効率・広帯域性の改良が主要課題として挙げられます。研究開発は進展中ですが、他材料とのシームレス実装には技術的ハードルも残っています。

損失低減と集積密度の向上

 シリコン導波路の散乱損失・吸収損失、温度安定性、フォトニック結晶構造の精密加工といった課題も依然残ります。45nm以下のナノスケール加工精度や、マルチレイヤー構造のプロセス管理による超集積化が次世代大容量光I/Oの鍵です。E/O(電気光変換)デバイスの高速化と同時に、CMOSプロセスとの歩留まり改善も重要です。

実装コスト・量産体制

 シリコンフォトニクスの普及には、既存CMOSファブを活用した低コスト量産体制構築が不可欠です。しかし、部材コストやプロセス歩留まり向上、光ファイバ連結作業の自動化など、実装部の最適化やパッケージングの標準化にも課題が残ります。次世代量産ファウンドリやファブレス型新興企業の台頭も期待されています。

シリコンフォトニクス関連の注目企業

世界大手半導体・電子部品メーカー

 Intel、Broadcom(Avago)、Cisco、IBM、Nokiaなどがシリコンフォトニクス技術でリーダー的存在です。とくにIntelは光トランシーバ分野で世界トップクラスのシェアを誇り、400G/800Gなど次世代通信モジュールの供給体制を強化しています。

日本国内メーカーと研究機関

 日本勢ではNECや富士通、三菱電機、日立製作所などが、光通信機器や光スイッチ、センシング応用に取り組んでいます。また、産総研や東京大学、大阪大学などの研究機関も次世代フォトニクスデバイス開発で世界的なイノベーターとなっています。

新興企業・ベンチャー

 Ayar Labs、Rockley Photonics、Effect Photonicsなどのスタートアップは、独自アーキテクチャや超高集積インターポーザ技術で業界を牽引中です。これらベンチャーは独自設計IPや高速Interface標準(CXL、Co-Packaged Optics)推進で今後さらなる市場拡大が期待されています。

まとめ

 シリコンフォトニクスは、高速大容量・省電力通信ソリューションとして通信・データセンター・AI・自動車・医療業界などの広範な分野で活用が広がっています。今後の量産コスト低減や基礎技術向上、異業種との連携により、シリコンフォトニクスの社会実装とイノベーションがますます加速することが期待されます。

参考サイト

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