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半導体チップの性能向上を支えるプリント基板の製造プロセス

プロセス

プリント基板(PCB)製造の最先端技術をご紹介します。基板穴あけから外形加工まで、各工程の最新技術と特徴を詳しく解説。レーザー穴あけ、アディティブ製法、高精度パターン形成など、PCB製造の革新的な手法を網羅。微細化・高密度化が進む電子機器に対応する、最新のPCB製造プロセスをわかりやすく解説します。半導体業界のプロフェッショナルから、電子工学を学ぶ学生まで、幅広い読者にとって有益な情報満載です。PCB技術の進化が、いかに最先端のエレクトロニクス製品を支えているかをご覧ください。

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プリント基板に関する最新ニュース

DuPont and Zhen Ding Technology Group Sign Strategic Cooperation Agreement to Advance High-End Printed Circuit Board Technology Development
 DuPontとZhen Ding Technology Groupは、先進的なプリント基板(PCB)技術に関する戦略的協力協定を締結しました。この提携を通じて、両社はエンドユーザーアプリケーションの強化、最先端の研究開発の推進、材料性能の向上、電子機器セクターの持続可能な発展を促進することを目指しています。

During Manufacturing Month, Governor Hochul Joins TTM Technologies to Celebrate Beam Signing at $130 Million High-Tech Manufacturing Facility in the Town of Dewitt
 TTM Technologiesは、ニューヨーク州デウィット町に1億3000万ドルの最先端製造施設を建設中です。この施設では、主に米国軍事用途に使用される超高密度インターコネクト(UHDI)プリント基板を生産し、最大400の高給職を創出します。この施設は北米最大級の先進PCB製造施設となり、短納期、迅速な納品、国内生産能力の大幅な増加を実現します。

日本メクトロン、7月1日に「メクテック株式会社」に社名変更
 NOK株式会社のフレキシブルプリント基板製造子会社である日本メクトロンが、2024年7月1日付でグローバルブランド名と統一した「メクテック株式会社」に社名変更。グローバルでの存在感向上と更なる飛躍を目指す。

OKI、最先端半導体の製造・検査装置向け超高多層PCBの回路形成ラインを新設
 OKIグループのOKIサーキットテクノロジーは、新潟県の上越事業所に100層を超す超高多層PCBの回路形成ラインを新設し、2024年7月より本格稼働を開始した。新ラインでは、極薄材料対応の表面処理ラインやダイレクトイメージ装置を増設し、生産能力を従来比約1.4倍に向上させた。

日本のメタルコアプリント基板市場、輸出額が約398億米ドルに
 2022年度、日本は世界のプリント基板輸出で上位5か国の1つとなり、輸出額は約398億米ドルに達した。日本政府の「日本の半導体戦略2023」などの取り組みにより、国内のメタルコアプリント基板市場の成長が期待されている。日本市場の主要プレーヤーには、Nippon Mektron、Ibiden、Shinko Electric Industries、Ihara Corporation、Meikoなどが含まれる。

プリント基板とは?

電子回路の基盤となる重要部品

プリント基板(PCB: Printed Circuit Board)は、電子機器の心臓部とも言える重要な部品です。絶縁体の基板上に導体パターンを形成し、電子部品を実装するための土台となります。プリント基板は、電子部品間の電気的接続を確保し、機械的な支持を提供する役割を果たします。

片面基板から多層基板まで多様な種類

プリント基板には、片面基板、両面基板、多層基板など、様々な種類があります。最も基本的な片面基板から、高密度実装が可能な多層基板まで、用途に応じて選択されます。特に近年は、IoTデバイスやスマートフォンの小型化・高性能化に伴い、ビルドアップ基板やHDI(High Density Interconnect)基板の需要が増加しています。

材質と特性:FR-4からフレキシブル基板まで

プリント基板の材質も多岐にわたります。最も一般的なのは、ガラス繊維強化エポキシ樹脂(FR-4)ですが、高周波特性に優れたテフロン基板や、曲げられるフレキシブル基板など、特殊な用途に応じた材質も存在します。材質の選択は、基板の電気特性、機械特性、熱特性に大きく影響するため、設計段階で慎重に検討する必要があります。

プリント基板の市場規模

2032年に1,134億9000万ドル規模へ

プリント基板市場は着実な成長を続けており、2023年の市場規模は696億9000万ドルと評価されています。さらに、2024年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)5.9%で成長し、2032年には1,134億9000万ドルに達すると予測されています。この成長は、電子機器の需要増加や、IoT、5G、自動車電装化などの技術トレンドに支えられています。

アジア太平洋地域が市場をリード

世界のプリント基板市場において、アジア太平洋地域が最大のシェアを占めています。特に中国は、国内製造業の強さと、PCB製造における確固たる地位により、地域内で大きなシェアを持っています。また、インドも製造拠点としての地位を確立しつつあり、長期的には市場シェアの拡大が期待されています。

高密度実装と環境配慮型製品の需要増加

市場トレンドとしては、高密度実装技術の進化と環境配慮型製品の需要増加が挙げられます。スマートフォンやウェアラブルデバイスの小型化・高機能化に伴い、HDI基板やビルドアップ基板の需要が拡大しています。また、RoHS指令やREACH規則などの環境規制に対応した、鉛フリーはんだ対応基板や、ハロゲンフリー基板の需要も増加傾向にあります。

プリント基板の主な用途

消費者向け電子機器:スマートフォンからIoTデバイスまで

プリント基板は、スマートフォン、タブレット、ノートPCなど、私たちの日常生活に欠かせない電子機器に広く使用されています。特に近年は、IoTデバイスやウェアラブル機器の普及により、小型で高性能なプリント基板の需要が急増しています。これらのデバイスでは、限られたスペースに多くの機能を詰め込む必要があるため、HDI基板やフレキシブル基板が多用されています。

産業用機器:自動化と高信頼性が鍵

産業用機器分野では、プリント基板は制御システム、センサー、モーターコントローラーなど、様々な用途で使用されています。特に、Industry 4.0やスマートファクトリーの概念が広まる中、高信頼性と長寿命が求められるプリント基板の需要が増加しています。これらの用途では、耐振動性や耐熱性に優れた特殊な基板材料が使用されることも多く、厳しい環境下でも安定した性能を発揮します。

自動車産業:電動化と自動運転技術の進展

自動車産業におけるプリント基板の重要性は、年々高まっています。特に電気自動車(EV)や自動運転技術の発展に伴い、高性能なプリント基板の需要が急増しています。EVのバッテリー管理システムや、自動運転車のセンサー制御システムなどには、高い信頼性と耐環境性を持つプリント基板が不可欠です。また、車載インフォテインメントシステムの高度化も、車載用プリント基板市場の成長を後押ししています。

プリント基板を構成する主な製造工程

設計・レイアウト:CADツールを駆使した精密設計

プリント基板の製造工程は、設計・レイアウトから始まります。CADツールを使用して回路図を作成し、部品配置や配線パターンを決定します。この段階では、信号の伝送特性やノイズ対策、熱設計なども考慮に入れる必要があります。設計が完了したら、設計ルールチェック(DRC)を行い、エラーがないことを確認します。

パターン形成:フォトリソグラフィ技術の応用

パターン形成工程では、フォトリソグラフィ技術を用いて基板上に回路パターンを形成します。まず、銅箔が貼られた基板全体にフォトレジストを塗布し、回路パターンが描かれたフィルムを通して紫外線を照射します。その後、現像処理を行い、不要な部分のフォトレジストを除去します。最後に、エッチング処理によって露出した銅箔を溶かし、目的の回路パターンを得ます。

基板穴あけ:レーザー穴あけ

レーザー穴あけは、高精度かつ効率的なPCB穴あけ方法です。レーザービームを使用して材料を選択的に除去し、基板に穴を形成します。この方法は以下の特徴があります:

  • 高精度:より小さな穴サイズと複雑なデザインが可能
  • ブラインドビアや埋め込みビアの形成に適している
  • 非接触プロセスのため、PCBへの機械的損傷リスクが低い
  • デリケートな基材に適している

配線・ビア形成

◉ パネルめっき

パネルめっきは、基板全体に均一な銅めっき層を形成する工程です。この工程により、スルーホールの内壁や基板表面に導電性の層が形成されます。

◉ パターンめっき

パターンめっきは、回路パターンに沿って選択的に銅めっきを施す工程です。これにより、必要な箇所のみに銅の厚みを増すことができます。

◉ セミアディティブ法

セミアディティブ法は、以下の手順で行われます:

  1. 薄い銅層またはシード層を形成
  2. めっきレジストでパターンを形成
  3. 露出した部分に電解銅めっきを施す
  4. レジストを除去し、不要な銅を軽くエッチング

この方法は、微細なパターン形成に適しています。

◉ フルアディティブ法

フルアディティブ法は、絶縁基板上に直接回路パターンを形成する方法です:

  1. 絶縁基板上に触媒を付与
  2. 回路パターン部分のみに無電解めっきを施す

この方法は、非常に微細なパターンの形成が可能です。

パターン形成

◉ レジスト形成

感光性のあるレジスト材料(ドライフィルムなど)を基板表面に塗布または貼り付けます。

◉ 露光

回路パターンが描かれたフォトマスクを通して紫外線を照射し、レジストを感光させます。

◉ 現像

露光後、現像液でレジストを処理し、不要な部分を除去してパターンを形成します。

絶縁層形成

◉ 樹脂付き銅箔積層

樹脂が付いた銅箔を基板に積層し、加熱・加圧して接着します。この方法は、絶縁層と導体層を同時に形成できる利点があります。

◉ 熱硬化性絶縁樹脂層

液状の熱硬化性樹脂を塗布し、加熱して硬化させます。この方法は、平滑な表面を形成できる利点があります。

導通化処理

◉ デスミア

樹脂スミアを除去し、銅めっきの密着性を向上させる工程です。従来のウェットデスミアに代わり、フォトデスミアなどの新技術も開発されています。

◉ シード層形成(無電解めっき)

絶縁層表面に薄い導電性層(シード層)を形成します。これにより、後続の電解めっきが可能になります。

シード層除去

◉ レジスト剥離

不要になったレジストを除去します。通常、アルカリ洗浄液や有機溶媒を使用します。

◉ エッチング

露出したシード層を除去します。配線パターンに影響を与えないよう、ソフトエッチング液を使用することが一般的です。

ソルダーレジスト形成

ソルダーレジストは、回路パターンを保護し、はんだ付け部分以外への半田付着を防ぐ役割があります。通常、緑色のインクを使用し、以下の手順で形成します:

  1. ソルダーレジストインクを塗布
  2. 露光・現像によりパターン形成
  3. 加熱硬化

外形加工

外形加工は、基板を最終的な形状やサイズに加工する工程です。主な方法には以下があります:

  • ルーターによる切断
  • パンチングによる打ち抜き
  • Vカット(基板の分割を容易にするためのV字溝加工)

これらの工程を経て、高品質なプリント基板が製造されます。

表面処理・検査:品質と信頼性の確保

パターン形成後は、はんだ付け性の向上や酸化防止のため、表面処理を行います。一般的には、無電解ニッケル/金(ENIG)めっきや有機可溶性防錆処理(OSP)などが施されます。最終工程では、光学検査や電気検査を実施し、パターンの形状や導通・絶縁性を確認します。高度な検査装置を用いることで、微細な欠陥も見逃さず、高品質なプリント基板の製造を実現しています。

プリント基板の技術的な課題

微細化・高密度化:限界への挑戦

プリント基板の技術的課題の一つは、さらなる微細化と高密度化です。スマートフォンやウェアラブルデバイスの小型化・高機能化に伴い、配線幅や層間接続用ビアホールの微細化が求められています。現在、最先端の技術では配線幅30μm以下、ビアホール径50μm以下の製造が可能ですが、さらなる微細化には材料や製造プロセスの革新が必要です。

高速信号伝送:インピーダンス制御と損失低減

高速デジタル機器の普及に伴い、プリント基板上での高速信号伝送が重要な課題となっています。GHz帯の高周波信号を扱う場合、配線のインピーダンス制御や、クロストーク・反射の抑制が不可欠です。また、高周波での誘電損失を低減するため、低誘電率・低誘電正接の基板材料の開発も進められています。これらの課題に対応するため、電磁界シミュレーションなどの高度な設計技術が活用されています。

環境対応:グリーン化への取り組み

環境規制の強化に伴い、プリント基板の製造プロセスや使用材料のグリーン化も重要な課題です。特に、RoHS指令に対応した鉛フリーはんだの使用や、ハロゲンフリー基板材料の採用が進んでいます。また、製造過程での化学物質使用量の削減や、リサイクル性の向上も求められています。これらの課題に対応するため、新たな材料開発や製造プロセスの改善が継続的に行われています。

プリント基板関連の注目企業

日本メーカー:高品質・高付加価値製品で世界をリード

日本のプリント基板メーカーは、高品質・高付加価値製品で世界市場をリードしています。例えば、メイコー(株)は、スマートフォン向けHDI基板や車載用高多層基板で高いシェアを持っています。また、日本シイエムケイ(株)は、高周波基板や放熱基板などの特殊基板で強みを発揮しています。これらの企業は、高度な技術力と品質管理能力を武器に、グローバル市場で競争力を維持しています。

海外大手:量産力と価格競争力で市場をけん引

海外のプリント基板メーカーも、市場で重要な位置を占めています。台湾のZhen Ding Technology Holding Limitedや、韓国のSamsung Electro-Mechanics Co., Ltd.などは、スマートフォンやPC向けの大量生産基板で強みを持っています。これらの企業は、大規模な生産設備と効率的な製造プロセスにより、コスト競争力を武器に市場シェアを拡大しています。

新興企業:革新的技術で市場に新風

プリント基板業界では、革新的な技術を持つ新興企業も注目を集めています。例えば、米国のNanopack Technologies, Inc.は、ナノテクノロジーを応用した超薄型・高密度基板の開発で注目を集めています。また、イスラエルのNano Dimension Ltd.は、3Dプリンティング技術を用いたプリント基板の試作・少量生産システムを提供し、製品開発のスピードアップに貢献しています。これらの企業は、従来の製造方法に捉われない新しいアプローチで、業界に変革をもたらす可能性を秘めています。

参考サイト