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ウェット系半導体製造装置用途の薬液供給装置とは?仕組み・種類・最新トレンドを一気に理解

装置

半導体製造プロセスにおいて、薬液供給装置は洗浄、エッチング、CMP、めっきなどの工程で使用される重要な付帯設備です。 本記事では、薬液供給装置の最新動向から市場規模、種類、用途、主要メーカーについて解説します。​

最新の薬液供給装置では、スマートフォンやAIサーバー、2.5D/3Dチップレットパッケージングなど高度なデバイスへの対応が求められており、5Gや次世代通信、3D統合技術の進歩と歩調を合わせた薬液管理が主要なトレンドになっています。 加えて、IoTセンサーやデジタルツイン、AI解析を用いた流量・濃度の自動補正機能を組み込んだ「スマート薬液供給システム」の採用が進みつつあります。​

薬液供給装置に関する最新ニュース

  • Rapidus向けCMPスラリー調合・供給システムを受注
    エア・ウォーター株式会社は、Rapidus社の北海道千歳市の半導体工場向けに「CMPスラリー調合・供給システム」を受注し、2024〜2025年にかけて立ち上げを進めています。 このシステムは、スラリーの液種に応じて濃度や粒子径を均一化し、安定的かつ高精度に調合できる設備で、自動化ソリューションを組み込むことで人手依存を減らしつつ品質を確保することを狙いとしています。​

薬液供給装置とは?

薬液供給装置の定義

薬液供給装置は、半導体製造プロセスにおいて、洗浄装置、エッチング装置、CMP装置、めっき装置など、薬液を使用する半導体製造装置本体と別置きの付帯設備です。

これらの装置は、高純度の薬液を安定的かつ正確に供給する役割を果たし、濃度や温度、流量を制御しながら各装置のユースポイントまで薬液を届けます。​

薬液供給装置の重要性

薬液供給装置は、半導体製造プロセスの品質と効率を確保するために不可欠です。

高純度の薬液を正確な濃度で供給することで、ウェハーの洗浄、エッチング、研磨、めっきなどの工程を最適化し、半導体デバイスの性能と信頼性を向上させます。

また、安定した供給により装置ダウンタイムを削減し、ファブ全体のスループット改善にも寄与します。​

薬液供給装置の基本構成

一般的な薬液供給装置は、薬液タンク、ポンプ、バルブ、配管、フィルター、センサー、制御システムなどで構成されています。

これらのコンポーネントが連携して動作することで、必要な量と濃度の薬液を製造装置に安定的に供給します。

また、最新の装置では、自動化やIoT技術の導入により、遠隔監視やトレンド解析、異常検知など、より高度な制御と監視が可能になっています。​

薬液供給装置の市場トレンド、需要を生み出す主要半導体製造装置

半導体製造分野における薬液供給装置(Chemical Delivery System)は、湿式プロセスの拡大に伴い、近年安定した成長を続けています。

特にCMP、ウェットエッチング、洗浄、めっき、塗布・現像など、薬液を大量かつ高精度に扱う装置の需要が伸びており、市場拡大の直接的な原動力となっています。

市場トレンド

  • 市場調査では、半導体向け薬液供給装置の成長率は年率7〜9%程度と予測され、先端ロジック・メモリ・先端パッケージング投資が成長を牽引。
  • AI半導体や3Dパッケージングの普及で湿式工程が増加し、薬液供給システムの「高精度化」「安全性」「高純度化」ニーズが急拡大。
  • アジア各国(台湾・韓国・中国)での設備投資が続き、薬液インフラ需要が地域的にも拡大中。

薬液供給装置を必要とする主要プロセス装置

薬液を「供給・循環・希釈・管理」するインフラは、下記の装置分野で不可欠です。

① CMP(Chemical Mechanical Planarization)

  • スラリー(研磨液)の高精度供給が必要。
  • 先端ノードや3D積層によりCMP工程が増加 → スラリー量と品質管理の重要性が上昇。

② ウェットエッチング/洗浄装置

  • 酸・アルカリ・溶剤を使う湿式エッチングや洗浄工程で、多品種薬液の厳密な濃度管理が必須。
  • 歩留まり向上要求により、供給装置側の高純度・低コンタミ設計が重視。

③ コータ/デベロッパ(塗布・現像)

  • フォトレジストや現像液の微量・均一供給に薬液システムが不可欠。
  • 自動切替や流量安定の精度要件が上昇。

④ 電気めっき装置(特に先端パッケージング用途)

  • Cu柱形成、RDL形成、ファンアウトなどでめっき液の循環・濃度維持が重要。
  • 先端パッケージ需要の増加により、大きな成長領域に。

⑤ クリーニング装置

  • パーティクル除去性能が高度化し、薬液の純度・安定供給が歩留まりに直結。

市場成長と薬液供給システムの関係

薬液供給装置市場は、単体ではなく「湿式プロセスの増加」と連動して拡大します。

  • 先端ロジック/メモリの微細化 → CMP・洗浄の増加
  • AI時代のパッケージ多層化 → めっき・洗浄需要が増大
  • 多品種化する薬液 → 高機能な供給システム(温調、濃度管理、自動洗浄)が必須に

そのため薬液供給装置は、単なるインフラから「プロセス品質を左右する重要装置」へと位置づけが変化しています。

今後の注目ポイント

  • 先端パッケージ向け薬液の多様化への対応(高速切替・自動CIP)
  • 高純度・低コンタミ技術(配管・ポンプ・バルブ材質の最適化)
  • デジタル監視・トレーサビリティ(流量・pH・温度のリアルタイム管理)
  • 環境対応(PFAS代替、廃液削減)

薬液供給装置の種類

大容量セントラルユニット

大容量セントラルユニットは、100L~400Lの液容量に対応し、大規模な半導体製造ラインで使用されます。 これらのユニットは、複数の製造装置に同時に薬液を供給することができ、効率的な運用が可能です。 高度な制御システムを備え、薬液の濃度や温度を厳密に管理し、安定した供給を実現します。​

装置付帯ユニット

装置付帯ユニットは、18L~100Lの液容量に対応し、個別の半導体製造装置に直接取り付けて使用されます。 これらのユニットは、特定の製造プロセスに最適化された薬液を供給し、柔軟な運用が可能です。 コンパクトな設計で、製造装置の近くに設置できるため、薬液の供給距離を短縮し、コンタミネーションのリスクを低減します。​

自動希釈混合装置

自動希釈混合装置は、現像液、ふっ化水素酸、アンモニア水、エッチング液、混酸などの薬液を高精度で任意の濃度に希釈または混合調整することができます。 これらの装置は、ロードセルや流量計を使用して薬品や超純水の量を正確に計量し、ブレンドタンクやインラインミキサーで精度良く混合します。 混合後は、電導度計や超音波濃度計、滴定装置などを用いて濃度を確認し、必要に応じて補正を行い、調整した薬液をストレージタンクを経由してユースポイントに供給します。​

薬液供給装置の主な用途

CMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセス

CMPプロセスは、半導体製造において欠かすことのできない主要な技術です。 薬液供給装置は、CMPプロセスで使用されるスラリーを安定的に供給する役割を果たします。 特に、沈降性・凝集性の高いスラリーをCMP装置に送液する際には、定流量制御や循環配管設計が重要であり、スラリーの粒子径分布や酸化剤濃度を安定させる仕組みが組み込まれています。 また、スラリー液中の過酸化水素濃度などをオンラインで測定し、濃度を一定に保持する機能を備えたシステムも増えています。​

エッチングプロセス

エッチングプロセスでは、薬液供給装置が様々な種類のエッチング液を製造装置に供給します。 例えば、アルミニウムエッチャント液(リン酸、硝酸、酢酸などの混酸)やシリコンエッチャント液(硝酸+フッ化水素酸系)などの混酸を、オンサイトで調合して供給することができます。 高精度インライン濃度測定装置を装備することで、薬液の濃度を高精度で制御し、エッチングレートやプロファイルの安定化に寄与します。​

洗浄・現像プロセス

洗浄・現像プロセスでは、薬液供給装置が超純水や各種洗浄液、現像液を供給します。 例えば、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)などの現像液の濃度を適時調整することにより、現像レートを安定させながら現像液の消費を削減することができます。 また、フォトレジスト集中供給システムでは、大型容器による集中供給と脱泡構造を組み合わせることで、バブル(気泡)を含まない安定供給を実現しています。​

めっきプロセス(めっき液の分析補給装置)

めっきプロセスでは、銅めっきやニッケルめっきなどの薬液を適切な成分濃度で維持することが品質に直結します。 めっき液の分析補給装置は、めっき液中の金属イオン濃度、酸濃度、添加剤濃度などをオンラインで自動測定し、不足成分を自動で補給する仕組みを備えています。 これにより、めっき膜の膜厚均一性、結晶性、応力制御などが安定し、先端パッケージング(RDL、Cuピラー、TSVなど)で求められる高い膜品質を実現します。 また、人手による分析作業を削減し、液組成の変動を最小化することで、装置の稼働率向上や生産性向上にも貢献します。

薬液供給装置の主な製造メーカー

国内メーカー

メーカー名主な製品・特徴想定用途・強み
エア・ウォーター株式会社CMPスラリー調合・供給システムなど、先端ロジック向け薬液供給・自動化ソリューション。​Rapidusなど先端ファブ向けCMP・洗浄系薬液供給。
関東化学株式会社薬品自動供給装置・自動希釈混合装置(CDS)。1979年から半導体向け自動供給設備を展開し、数千台の納入実績。​現像液・HF・混酸などの高精度調合と集中供給。
三菱ケミカルエンジニアリング株式会社半導体・電池・電子デバイス向け薬液供給・回収システム。供給からリサイクルまで一体設計。​薬液供給+回収・再利用を含むESG対応トータルシステム。
ダイキンファインテック株式会社大容量セントラルユニット/装置付帯ユニットなどの薬液供給ユニット。​洗浄・エッチング装置向けの中央供給・装置近傍供給。
三益半導体工業株式会社洗浄・薬液供給装置など半導体ウェット装置全般を展開。​ウェットステーションと一体化した薬液供給。
JAPAN BLUE株式会社薬液供給装置(システム)・半導体洗浄装置の専門メーカー。フルオーダー/セミオーダー対応。​開発用・実験用も含めたカスタム薬液供給システム。
株式会社テクノメイトCMP向け連続式薬液供給装置(P112)など、圧力・温度・流体制御を活かした装置。​CMPスラリーや薬液の安定供給・2種2系統供給。
株式会社ダン科学ドラムタイプ薬液供給機やHF調合ユニットなど組立事例多数。​危険物・有害物質を扱う薬液供給機の設計・組立。
株式会社セラスラリー・薬液調合用の供給装置を含む薬液供給装置の設計・製作実績。​スラリー調合と排気・排水切替など安全対応。

海外メーカー

海外では、米国や欧州、韓国を中心に薬液供給装置・関連ポンプメーカーが市場で存在感を持っています。​

  • Verder Liquidsなどは計量・投与ポンプの新製品を投入し、精度向上とコスト削減を両立したソリューションを展開しています。​
  • 韓国のUNISEMやLOT VACUUMは、半導体装置向けの薬液供給・真空システムを組み合わせたソリューションで、アジア市場でのシェア拡大を図っています。​

新興企業の動向

半導体製造技術の急速な進歩に伴い、新興企業も薬液供給装置市場に参入しています。 これらの企業は、IoTやAI技術を活用した革新的な薬液供給システムの開発に注力しており、状態監視・予知保全・リモートサポートといった機能を前面に出しています。

例えば、SEMI関連のスタートアップや国内中堅企業が、クラウドベースの監視プラットフォームと薬液供給ユニットを組み合わせた「スマート薬液供給」コンセプトを推進しつつあります。​

まとめ

薬液供給装置は、半導体製造プロセスにおいて不可欠な付帯設備であり、その市場は急速に成長しています。 最新のトレンドとしては、IoTやAI技術の活用、環境負荷の低減、高精度化、そして薬液のリサイクル・回収・再利用を含む循環型システムへのシフトが挙げられます。 今後も、半導体技術の進化とESG要請の高まりに伴い、薬液供給装置の重要性はさらに高まると予想され、製造メーカーはこれらの市場ニーズに応えるべく、革新的な製品・システム開発を続けていくでしょう。​

参考サイト

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