半導体製造の最前線を支えるドライエッチング装置。この記事では、ナノレベルの精密加工を可能にする革新的技術の全貌に迫ります。基本原理から最新の市場動向、主要メーカーの動きまで、5つの重要なポイントを詳しく解説。IoTや5G時代の進展に伴い、急成長を遂げるドライエッチング装置市場。2030年には227億ドル規模に達すると予測される、この注目技術の今後の展望をお届けします。半導体業界に関わる方はもちろん、最先端技術に興味のある方必見の内容です。
ドライエッチング装置に関する最新ニュース
- 2024年のエッチング装置市場: ドライエッチング技術の進化とその影響
- 半導体産業の発展やIoTデバイスの普及により、ドライエッチングの需要が急増している
- 2024年の市場は数十億ドル規模に達すると予測されている
- アジア太平洋地域、特に中国、韓国、日本が市場成長を牽引している
- Lam Researchが打ち立てた金字塔、”1年間メンテナンスフリー”のドライエッチング装置
- Lam Researchが「Sense.i」という365日メンテナンスフリーのドライエッチング装置を開発
- 消耗部品の自動交換機能を実現し、装置のフットプリントを従来比で50%以上削減
- 3次元NANDのメモリホール用HARC(High Aspect Ratio Contact)エッチング装置市場を独占
- もっと深く、もっと速く 3次元半導体が突きつける難問
- 3次元半導体構造の進化により、より深く、速く、直線的なエッチングが求められている
- NANDフラッシュメモリーの200~400層水準の多層化やDRAMの3D化に伴い、高アスペクト比のエッチングが必要に
- 先端半導体ではドライエッチングのニーズが拡大しており、Lam Research、東京エレクトロン、Applied Materialsが市場をリード
- Lam Researchが次世代3D NAND向けの革新的な極低温エッチング技術「Lam Cryo 3.0」を発表
- Lam Cryo 3.0は、AIの時代に必要な3D NANDデバイスを製造するための重要な誘電体エッチング技術
- 従来のプラズマエッチング技術と比較して2.5倍速いエッチングレートを実現
- 高アスペクト比(HAR)エッチングが可能で、400層以上のメモリデバイスのスケーリングに不可欠
- ウェハあたりのエネルギー消費を40%削減し、排出量を最大90%削減する環境に配慮した技術
ドライエッチング装置とは?
1. ドライエッチングの基本原理
ドライエッチング装置は、半導体製造プロセスにおいて不可欠な装置です。この装置は、真空環境下でガスをプラズマ化し、イオンやラジカルを用いて基板表面を精密に加工します[1]。ウェットエッチング方式と比較して、より微細な加工が可能であり、ナノメートルレベルの精度を実現します。
2. ウェットエッチングとの違い
ウェットエッチングが液体の薬品を使用するのに対し、ドライエッチングは気体やプラズマを使用します。この違いにより、ドライエッチングは異方性エッチングが可能となり、垂直方向の加工精度が格段に向上します[1]。
3. ドライエッチング装置の構造
典型的なドライエッチング装置は、プロセスチャンバー、真空システム、高周波電源、ガス供給系、機構部、制御系から構成されています[9]。これらの要素が高度に統合されることで、精密な加工制御が可能となり、最先端の半導体デバイスの製造を支えています。
ドライエッチング装置の市場規模
1. 世界市場の成長予測
半導体ドライエッチングシステムの世界市場規模は、2023年に151億1,000万米ドルと推定されています。さらに、2024年から2030年にかけてCAGR 5.8%で成長すると予測されており、2030年には227億9,000万米ドルに達する見込みです[8]。この成長は、IoTの進展や自動車電子機器分野の急成長に牽引されています。
2. 日本企業のシェア
2021年度の半導体製造装置における日本のシェアは、アメリカに次ぐ第2位で31%を占めています[9]。しかし、2011年には35%を超えていたシェアが低下傾向にあり、海外メーカーとの競争が激化しています。日本メーカーは、高性能化技術の開発により差別化を図る必要があります。
3. 市場成長の要因
市場成長の主な要因として、民生用電子機器の需要拡大、5G技術の普及、クラウド・コンピューティングの拡大が挙げられます[8]。これらの技術トレンドに対応するため、より高精度で効率的なドライエッチングシステムの需要が高まっています。特に、深部反応性イオンエッチング(DRIE)やプラズマエッチングなどの革新的技術が注目を集めています。
ドライエッチング装置の種類
1. 反応性イオンエッチング(RIE)
反応性イオンエッチング(RIE)は、最も一般的なドライエッチング方式の一つです[1]。この方式では、反応性ガスをプラズマ化し、生成されたイオンを電界で加速して基板に衝突させます。化学反応と物理的なスパッタリングの両方の効果を利用することで、高精度な加工が可能となります。
2. 誘導結合プラズマ(ICP)エッチング
誘導結合プラズマ(ICP)エッチングは、高密度プラズマを生成する方式として広く使用されています[5]。ICPでは、コイルに高周波電力を印加することで磁場を発生させ、プラズマを効率的に生成します。この方式は、高アスペクト比の構造を形成する際に特に有効です。
3. 電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング
電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチングは、磁場中の電子の回転運動を利用してプラズマを生成する方式です[11]。ECRでは、2.45GHzのマイクロ波と875ガウスの磁場を使用し、高密度かつ低圧力のプラズマを実現します。この技術により、ダメージの少ない精密なエッチングが可能となります。
ドライエッチング装置の主な用途
1. 半導体デバイスの微細加工
ドライエッチング装置の最も重要な用途は、半導体デバイスの微細加工です[1]。最新のプロセッサやメモリチップの製造では、数ナノメートルレベルの精度が要求されます。ドライエッチングは、このような超微細構造を形成する上で不可欠な技術となっています。特に、多層配線構造やフィンFET、3D NANDフラッシュメモリなどの先端デバイスの製造に広く活用されています。
2. MEMS(微小電気機械システム)の製造
MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)デバイスの製造においても、ドライエッチング装置は重要な役割を果たしています[5]。MEMSセンサーやアクチュエータなどの微小な機械構造を形成する際に、深堀エッチングや犠牲層エッチングなどの技術が用いられます。これにより、スマートフォンの加速度センサーや圧力センサーなど、私たちの日常生活に欠かせないデバイスが実現されています。
3. 光デバイスの製造
光通信や光センシングなどの分野で使用される光デバイスの製造にも、ドライエッチング装置が活用されています[5]。例えば、レーザーダイオードや光導波路、回折格子などの光学素子の製造において、高精度な形状制御が要求されます。ドライエッチングは、これらの複雑な光学構造を形成する上で重要な技術となっています。
ドライエッチング装置の主な製造メーカー
1. 日本のメーカー
日本のドライエッチング装置メーカーとしては、東京エレクトロン株式会社、株式会社日立ハイテク、アルバック株式会社などが挙げられます。これらの企業は、長年の技術蓄積と高い品質管理により、世界市場で高いシェアを維持しています。特に、東京エレクトロンの「Certas LEAGA™」シリーズや、日立ハイテクの「9000シリーズ」[7]は、最先端のプロセス技術に対応した装置として評価されています。
2. 海外のメーカー
海外のメーカーとしては、アメリカのアプライド・マテリアルズ社やラム・リサーチ社が世界市場をリードしています[8]。これらの企業は、革新的な技術開発と積極的な市場戦略により、急速にシェアを拡大しています。例えば、アプライド・マテリアルズ社の「Centris®」「Centura®」シリーズがよく知られています。
参考サイト:
[1] ドライエッチング – Wikipedia
[2] 世界のドライエッチング装置市場規模(タイプ別、用途別、地理的範囲別、予測)
[3] エッチング装置の主要メーカ3選!選び方や製品特徴とメリットも解説 – 株式会社FAプロダクツJSS事業部|関東最大級のロボットSIer
[4] ドライエッチングの特徴やメリット・デメリットとは?
[5] ドライエッチング
[6] ドライエッチング装置 – 企業と製品の一覧 – IPROS
[7] ドライエッチング装置とは|半導体用語集|セミコンネット
[8] 半導体ドライエッチングシステムの市場規模、シェア、動向分析レポート:エッチング技術別、用途別、最終用途別、地域別、セグメント別予測、2024年~2030年
[9] エッチング装置とは?その種類や特徴・構造・メリット・デメリット | オンライン展示会プラットフォームevort(エボルト)
[10] ドライエッチング装置の製品一覧 | メトリー
[11] エッチング装置|半導体製造装置|日立ハイテク