インターポーザー技術は、半導体産業における革新的なパッケージング手法として注目を集めています。本記事では、シリコン、有機、ガラスの3種類のインターポーザーに焦点を当て、その特徴や市場動向、製造プロセス、技術的課題、そして関連企業の動向について詳しく解説します。高性能コンピューティングやAI、5G通信などの先端技術を支えるインターポーザーの重要性と将来展望を探ります。
インターポーザに関する最新ニュース
以下に、インターポーザに関する最新ニュースの4つの項目について、それぞれ個別の概要文を作成しました。
- レゾナックが先端半導体パッケージ向け感光性フィルムを開発
レゾナックは、AI用など先端半導体の製造に使用する高解像度の感光性フィルムを新たに開発しました。この感光性フィルムは、有機インターポーザー向けとして線幅と配線間隔がそれぞれ1.5μmという微細な銅回路を形成できます。パネルでの製造プロセスに適したフィルムタイプとなっており、2027年の実用化を目指しています。 - インテルがガラス基板技術開発に10億ドル以上を投資
インテルは、複数のチップレットを搭載する大規模半導体パッケージの進化に貢献するガラス基板技術の開発を進めています。この技術開発のために10億ドル以上を投資し、チャンドラー工場(米国アリゾナ州)にガラス基板を用いた半導体パッケージの研究開発ラインを構築しました。2020年代後半の実用化を目指し、2030年に1個の半導体パッケージ内に1兆のトランジスタを集積するという目標の実現に向けて開発を進めています。 - TOPPAN HDが単体電気検査可能なコアレス有機インターポーザーを世界初開発
TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANは、世界で初めて単体での電気検査が可能な次世代半導体向けコアレス有機インターポーザーを開発しました。再配線層(RDL)の両面を低CTE(熱膨張率)の材料で補強し、微細配線接続と低CTEの両立を図りつつ、剛直性の付与を実現しています。これにより、インターポーザーの不良に起因するチップの廃棄ロスの大幅な削減に貢献することが期待されています。 - 大日本印刷(DNP)、2027-28年めどにガラス製インターポーザーの量産開始を計画
DNPは、2027〜28年をめどに、チップと基板を接続するガラス製インターポーザーの量産を開始する方針を固めました。AI向け半導体の大型化に対応し、高性能化と低コスト化を両立させることを目指しています。すでに開発済みの「充填タイプ」に加え、「コンフォーマルタイプ」のガラスコア基板についても、パネルサイズ510×515mmへのスケールアップを進めており、2027年度に50億円の売り上げを目指しています。
インターポーザーとは?
インターポーザーは、半導体チップや電子部品を接続するための中間基板です。主に異なるサイズや形状の部品を効率的に接続するために使用され、電子機器の小型化や高性能化に不可欠な要素となっています。現在、シリコン、有機樹脂、ガラスなどの材料を用いたインターポーザの開発が活発に行われています。
シリコンインターポーザー
- 高密度配線が可能
- 熱伝導性に優れる
- コストが比較的高い
シリコンインターポーザーは、最も高性能なインターポーザーとして知られています。シリコンウェハーを基板として使用し、微細な配線パターンを形成することができます。これにより、高密度な配線が可能となり、チップ間の信号伝達を効率化します。
有機インターポーザー
- 柔軟性がある
- コストが比較的低い
- 大面積製造が可能
有機インターポーザーは、有機材料を基板として使用します。柔軟性があり、大面積での製造が可能なため、コスト効率が高いのが特徴です。最近では、ラピダスが選択したRDLインターポーザーのように、600mm角の大型パネル基板を使用することで、製造効率を大幅に向上させる取り組みも行われています。
ガラスインターポーザー
- 低誘電率
- 熱膨張係数が小さい
- 光学的透明性がある
ガラスインターポーザーは、ガラス基板を使用することで、低誘電率や小さな熱膨張係数といった利点を持ちます。また、光学的透明性があるため、光インターコネクトなどの新しい技術との親和性も高いです。
シリコンインターポーザー、ガラスインターポーザー、有機インターポーザーの違いについて、それぞれのメリットとデメリットを比較した表を以下に示します。
インターポーザーの種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
シリコンインターポーザー | – 高密度配線が可能 – 微細加工が可能 – 放熱性能に優れる – 高速・高周波特性に優れる |
– 製造コストが高い – 大面積化が難しい – 高周波特性に課題がある |
ガラスインターポーザー | – 低コストで高性能 – 熱膨張係数の調整が可能 – 大面積製造が可能 – 光学的透明性がある – 高周波特性に優れる |
– 製造プロセスが難しい – 加工が難しい – 薄板ガラスのハンドリングが課題 |
有機インターポーザー | – コストが比較的低い – 柔軟性がある – 大面積製造が可能 – 高周波特性に優れる |
– 微細加工が難しい – 熱膨張係数が高い – 剛直性に乏しい |
この表から、各インターポーザーにはそれぞれ特徴があり、用途や要求される性能に応じて選択されることがわかります。シリコンインターポーザーは高性能だが高コスト、ガラスインターポーザーは性能とコストのバランスが良く、有機インターポーザーは低コストだが性能面で課題があるという傾向が見られます。
2.xDについて
半導体パッケージングにおける2D、2.1D、2.3D、2.5D、3D、3.5Dの違いを簡潔に説明する表を以下に示します。半導体パッケージングは各社独自の設計と材料選定によって開発、製造されており、この名称は通称であり、標準化されたものではありません。TSV、RDL、マイクロバンプ、ハイブリッドボンディングといった技術により、異種チップ間を短距離接続することを目的としたチップレット集積における標準化が、今後、UCle等によって進められると予想されます。
パッケージング技術 | 説明 |
---|---|
2D | 従来の平面実装。サブストレートに直接チップをはんだ接続 |
2.1D | サブストレート側にRDL形成後、チップをはんだ接続 |
2.3D | 有機インターポーザにRDLを形成、複数チップをはんだ接続後、サブストレートにはんだ接続 |
2.5D | TSVを形成したシリコンインターポーザー上に複数のチップをはんだ接続後、シリコンインターポーザをはんだ接続 |
3D | 複数のチップをTSVを使用して垂直に積層、またはハイブリッドボンディングで積層後、サブストレートにはんだ接続 |
3.5D | シリコンインターポーザーと3D積層の組み合わせ |
この表は、半導体パッケージング技術の進化を示しており、2Dから3.5Dに向かうにつれて、実装密度が高くなり、性能が向上していくことがわかります。各技術は、要求される性能、コスト、製造の複雑さなどに応じて選択されます。
インターポーザーの市場規模
インターポーザー市場は急速に成長しており、2023年に3億3,000万米ドルだった市場規模が、2032年までに16億4,000万米ドルに達すると予測されています。これは年平均成長率(CAGR)19.7%という驚異的な成長率を示しています。
市場成長の主要因
- ウェアラブルデバイスの普及
- 高性能コンピューティングの需要増加
- 5G通信の展開
ウェアラブル接続デバイスや最新のストレージデバイスの台頭、そして電子デバイスの小型化に対する需要の高まりが、インターポーザー市場の成長を牽引しています。
地域別市場動向
- アジア太平洋地域が最大のシェア
- 北米が急速に成長
- 欧州も着実に市場を拡大
アジア太平洋地域、特に台湾や韓国、日本などの半導体製造大国が、インターポーザー市場の中心となっています。一方で、北米市場も急速に成長しており、インテルやAMDなどの大手企業が積極的に投資を行っています。
製品別市場セグメント
- 2.5Dインターポーザー
- 3D
- シリコンブリッジ
2.5Dインターポーザーが現在の主流ですが、3Dやシリコンブリッジなどの新技術も急速に市場シェアを拡大しています。
インターポーザーの主な用途
インターポーザー技術は、様々な分野で活用されています。その高性能と効率性により、次世代の電子機器や通信システムに不可欠な要素となっています。
高性能コンピューティング
- スーパーコンピューター
- データセンターサーバー
- AIアクセラレーター
高性能コンピューティング分野では、インターポーザーを使用することで、CPUやGPU、メモリなどの異なるチップを効率的に接続し、システム全体の性能を大幅に向上させることができます。特に、AIアクセラレーターでは、大量のデータを高速に処理する必要があるため、インターポーザーの役割が重要です。
モバイルデバイス
- スマートフォン
- タブレット
- ウェアラブルデバイス
モバイルデバイスでは、小型化と高性能化の両立が求められます。インターポーザーを使用することで、限られたスペース内に複数のチップを効率的に配置し、高速なデータ通信を実現することができます。
5G通信インフラ
- 基地局
- ネットワーク機器
- ミリ波通信デバイス
5G通信の普及に伴い、高周波数帯での通信が増加しています。インターポーザーは、これらの高周波信号を効率的に伝送し、低遅延かつ高帯域幅の通信を可能にします。
インターポーザーを構成する主な製造工程
インターポーザーの製造プロセスは、使用する材料や目的とする性能によって異なりますが、一般的に以下のような工程が含まれます。
ウェハー処理
- シリコンウェハーの準備
- 絶縁層の形成
- TSV(Through-Silicon Via)の形成
シリコンインターポーザーの場合、まずシリコンウェハーを準備し、表面に絶縁層を形成します。その後、TSVと呼ばれる貫通電極を形成し、上下の配線層を接続します。
配線形成
- 銅配線の形成
- 再配線層(RDL)の形成
- バンプの形成
配線層の形成は、インターポーザーの性能を左右する重要な工程です。高密度な銅配線を形成し、必要に応じて再配線層(RDL)を追加します。最後に、チップを接続するためのバンプを形成します。
パッケージング
- チップの実装
- アンダーフィル注入
- 封止
完成したインターポーザーに半導体チップを実装し、アンダーフィルを注入して接続部を保護します。最後に、全体を樹脂で封止してパッケージングを完了させます。
インターポーザーの技術的な課題
インターポーザー技術は急速に進化していますが、同時にいくつかの技術的課題も存在します。これらの課題を克服することが、次世代のインターポーザー開発の鍵となります。
熱管理
- 高密度実装による発熱問題
- 熱膨張係数の不一致
- 効率的な放熱設計
高性能チップの集積度が高まるにつれ、熱管理が重要な課題となっています。特に、異なる材料間の熱膨張係数の不一致は、信頼性の低下につながる可能性があります。効率的な放熱設計や新しい材料の開発が進められています。
信号品質の維持
- 高周波信号の伝送損失
- クロストーク
- インピーダンス整合
高速信号の伝送において、信号品質の維持は重要な課題です。高周波信号の伝送損失やクロストークを最小限に抑え、インピーダンス整合を適切に行うことが求められます。新しい配線構造や材料の開発が進められています。
コスト削減
- 大口径ウェハーへの対応
- 歩留まりの向上
- 製造プロセスの効率化
インターポーザーの製造コストは依然として高く、これが普及の障壁となっています。大口径ウェハーへの対応や歩留まりの向上、製造プロセスの効率化などを通じて、コスト削減が進められています。
インターポーザー関連の注目企業
インターポーザー技術の発展には、多くの企業が貢献しています。ここでは、特に注目される企業とその取り組みを紹介します。
半導体メーカー
- TSMC
- インテル
- AMD
TSMCは、高性能なシリコンインターポーザーの量産で業界をリードしています。インテルは、ガラス基板技術の開発に10億ドル以上を投資し、次世代のパッケージング技術の開発を進めています[5]。AMDは、高性能GPUにインターポーザー技術を採用し、製品の競争力を高めています。
材料メーカー
- レゾナック
- 信越化学工業
- AGC
レゾナックは、先端半導体パッケージ向けの感光性フィルムを開発し、有機インターポーザーの性能向上に貢献しています。信越化学工業は、インターポーザーを不要にする新技術「信越デュアルダマシン法」を開発し、業界に新たな選択肢を提供しています。AGCは、ガラスインターポーザーの開発で注目を集めています。
装置メーカー
- ASML
- アプライドマテリアルズ
- 東京エレクトロン
ASMLは、最先端のリソグラフィ装置を提供し、高精度なインターポーザーの製造を可能にしています。アプライドマテリアルズと東京エレクトロンは、インターポーザー製造に必要な様々な装置を開発・提供しています。
まとめ
インターポーザー技術は、半導体パッケージングの革新を牽引する重要な技術として、急速に発展しています。シリコン、有機、ガラスの3種類のインターポーザーは、それぞれの特性を活かして様々な用途で活用されています。市場規模は2032年までに16億4,000万米ドルに達すると予測され、年平均成長率19.7%という驚異的な成長が期待されています。
高性能コンピューティング、モバイルデバイス、5G通信インフラなど、幅広い分野でインターポーザー技術の需要が高まっています。一方で、熱管理、信号品質の維持、コスト削減などの技術的課題も存在し、これらの克服が今後の発展の鍵となります。
TSMCやインテル、AMDなどの半導体メーカー、レゾナックや信越化学工業、AGCなどの材料メーカー、ASML、アプライドマテリアルズ、東京エレクトロンなどの装置メーカーが、インターポーザー技術の進化に貢献しています。
インターポーザー技術は、今後も半導体産業の発展を支える重要な基盤技術として、さらなる革新と進化を続けていくことが期待されます。
参考サイト一覧
- 2024年の高速インターポーザ市場:技術革新がもたらす成長の可能性
- 先端半導体パッケージ向けの感光性フィルムを開発――有機インターポーザー向け
- インターポーザ – 夏目光学株式会社
- 【徹底解説】最先端の次世代半導体パッケージ、材料および基板の開発動向
- 半導体製造装置(後工程
- 株テーマ:インターポーザーの関連銘柄
- 高速インターポーザ技術の革新がもたらす半導体パッケージングの未来 | Reinforz Insight
- インターポーザ – Wikipedia
- タイプ別(2D インターポーザー、2.5D インターポーザーおよび 3D インターポーザー)、アプリケーション別(CIS、CPU または GPU、MEMS 3D キャッピング インターポーザー、RF デバイス、ロジック SoC、ASIC または FPGA、およびハイパワー LED)、地域の洞察、および 2032 年までの予測
- 微細な銅回路を形成できる…レゾナック、AI半導体向け「感光性フィルム」開発 ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
- インテルがガラス基板で半導体進化の限界を打ち破る、2020年代後半に量産適用
- TOPPAN、単体での電気検査が可能なコアレス有機インターポーザを開発
- (7912) 大日本印刷 DNP、AI向けガラス製インターポーザーの量産へ
- 先端半導体パッケージ向け新規感光性フィルムを開発 | レゾナック
- TOPPAN、世界初の単体での電気検査が可能な次世代半導体向けコアレス有機インターポーザーを開発
- DNP、ガラス製インターポーザーの量産を開始 2027~28年をめどに
- レゾナック、AI半導体向け感光性フィルムを開発 – 有機インターポーザーに1.5μmの微細銅回路を形成
- 革新的な3Dインターポーザ技術が高性能計算を加速させる | Reinforz Insight
- 次世代半導体パッケージ技術の動向と課題
- インターポーザの新技術、チップレット間の高速通信を実現
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- 高性能インターポーザの開発と応用
- TSMCのCoWoS技術:3Dパッケージングの革新