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露光装置(リソグラフィー)~2nm微細パターン形成用EUV/チップレット向け大判インターポーザ/直接描画/ナノインプリント..多様なニーズに応える

装置

半導体製造の要、露光装置。この記事では、最新のEUV技術から従来のArF液浸技術まで、露光装置の全貌に迫ります。2024年、半導体業界は大きな転換期を迎えています。日本企業Rapidusが国内初のEUV露光装置を導入し、世界最先端の半導体製造に向けた一歩を踏み出しました。本記事では、露光装置の基本原理から最新の市場動向、主要メーカーの動きまでを包括的に解説。さらに、チップレットやFan-Out技術など、次世代パッケージング技術における露光装置の役割にも焦点を当てます。

露光装置に関する最新ニュース

  • 日本初!Rapidusが最先端EUV露光装置を導入
    Rapidus株式会社は2024年12月18日、北海道千歳市の工場に最先端のEUV露光装置「NXE:3800E」の設置作業を開始したと発表しました。これは日本で初めての量産対応EUV露光装置の導入となります。Rapidusは2027年頃の量産化を目指しており、この装置の導入は日本の半導体産業にとって大きな一歩となります。
  • 京セラ、半導体露光装置から宇宙へ進出
    京セラは、半導体露光装置で培ったセラミック材料技術を活かし、宇宙関連事業への展開を拡大しています。同社は宇宙関連での売り上げを6倍に増やすことを目指しており、半導体製造技術の応用範囲の広がりを示しています。
  • EUV露光装置の独占状態続く
    2024年現在、EUV露光装置の開発に成功しているのはオランダのASMLのみで、同社が市場シェアを100%独占しています。この状況は半導体業界の技術革新と競争に大きな影響を与えており、各国の半導体戦略にも影響を及ぼしています。

露光装置とは?

露光装置の基本原理

露光装置は、半導体チップの製造過程で回路パターンをシリコンウェハに転写する装置です。パソコンで作成した回路パターンデータを、ウェハと呼ばれるシリコンの板に焼き付けます。原版(マスク)をステージに置き、上から紫外線(UV)光を照射すると、光が投影レンズを通過して、半導体基板に回路パターンを結像します。

露光装置の重要性

露光装置は半導体製造プロセスの中核を担う装置です。半導体の性能向上と微細化の進展に伴い、露光装置の精度と解像度が半導体の性能を左右する重要な要素となっています。最先端の露光装置は、ナノメートル単位の精度で回路パターンを形成することができ、これにより高性能かつ小型の半導体チップの製造が可能となります。

露光装置の基本構造

露光装置は主に光源、光学系、ウェハステージから構成されています。光源は回路を刻むためのレーザーを発生させ、光学系は光を制御して回路パターンを正確に投影します。ウェハステージは、ウェハを高精度で位置決めし、露光プロセスを制御します。これらの要素が高度に統合されることで、ナノメートル単位の精密な回路パターンの形成が可能となります。

露光装置の市場規模

2024年の市場規模

半導体露光装置の市場規模は、最新の予測によると2024年に276億6000万米ドルに達し、2032年までに551億3000万米ドルに成長すると見込まれています。この成長は、年平均成長率(CAGR)9.0%で推移すると予測されており、半導体産業の持続的な発展と技術革新の加速を反映しています。

露光装置市場では、ムーアの法則(More Moore)に基づく微細化を追求する最先端のロジックやメモリ向けのEUV装置が依然として注目を集めています。EUV装置は1台あたり200億円以上の高額な装置であり、ASMLが市場を独占しています。主要な顧客は、微細化を推進するインテル、サムスン電子、TSMCの3社に限定されています。

一方、More-than-Mooreと呼ばれる領域でも露光装置の需要が高まっています。この分野には、センサ、RFFE(高周波フロントエンド)、シリコンフォトニクスなどが含まれ、5G/6G通信、自動運転車、IoT(Internet of Things)デバイスの発展に不可欠とされています。2020年のMore-than-Moore向け露光装置市場は10億ドルに達し、そのうち30%がCMOSイメージセンサ向けでした。

半導体パッケージング分野では、チップレット技術や、FO-WLP(Fan-Out Wafer-Level Packaging)、FO-PLP(Fan-Out Panel-Level Packaging)、2.5Dシリコンインターポーザ、有機インターポーザなどの新技術が活発に研究開発されています。これらの技術は、異なるプロセスノードで製造されたチップを効率的に接続し、高性能かつコスト効果の高いシステムを実現します。

市場シェアに関しては、More-than-Moore分野でも日本企業の存在感が際立っています。2020年のパワーデバイス向けフォトリソグラフィ装置市場では、キヤノンが39%、ニコンが11%、ウシオ電機が9%のシェアを持ち、日本勢3社で合計59%のシェアを占めています。

今後の市場展望として、AI関連半導体(GPUやHBMなど)の需要増加や、メモリー投資の回復が見込まれており、2026年度には市場がさらに拡大すると予測されています。この成長に伴い、コストパフォーマンスの高い露光装置への需要も増加すると予想されます。

2029年までの成長予測

市場調査によると、半導体露光装置市場は2024年から2029年にかけて年平均成長率(CAGR)7.38%で成長し、2029年には378億1,000万米ドルに達すると予測されています。この成長は、IoT、AI、5Gなどの新技術の普及による半導体需要の増加に支えられています。

地域別市場動向

アジア太平洋地域が半導体露光装置市場で最大のシェアを占めており、最も急速に成長している地域でもあります。特に中国、台湾、韓国、日本などの国々が市場をけん引しています。北米と欧州も重要な市場ですが、成長率はアジア太平洋地域に比べて緩やかです。

露光装置の種類

光源による分類

波長が短くなるほど、より微細な回路パターンの形成が可能になります。

光源波長回路パターンサイズ
g線(水銀ランプ)436nm1μm
I線(水銀ランプ)365nm0.5μm
KrFエキシマレーザー248nm0.18μm
ArFエキシマレーザー193nm0.13μm以下(液浸+ダブルパターニングで
さらなる微細化を可能に)
極端紫外線(EUV)13.5nm30nm以下

露光方式による分類

露光装置は露光方式によっても分類されます。現在の最先端の半導体製造では、主にスキャナー方式のArFやEUV露光装置が使用されています。

  • コンタクト露光:マスクとウェハを密着させて露光
  • プロキシミティ露光:マスクとウェハの間に隙間を空けて露光
  • 投影露光:マスクとウェハの間に投影レンズを入れて露光

マスクアライナ、ステッパ、スキャナの違い

マスクアライナー、ステッパー、スキャナーは半導体製造における露光装置の主要な種類であり、それぞれ異なる特徴と用途を持っています。

マスクアライナー

マスクアライナーは、半導体製造の初期段階で使用される露光装置です。

  • ウェハー全体を一度に露光する
  • マスクとウェハーを直接接触させる(コンタクト方式)か、わずかな隙間を空ける(プロキシミティ方式)
  • 比較的低コストで簡易な半導体デバイスの製造に適している
  • 解像度は比較的低い

ステッパー

ステッパーは、マスクアライナーの進化形として登場した露光装置です。

  • ウェハー上の一部分(ダイ)ずつを露光し、ステップ・アンド・リピート方式で全体を露光する
  • マスク(レチクル)のパターンを縮小してウェハーに投影する
  • 高精度な露光が可能で、1μm以下の微細なパターンを形成できる
  • 各露光ポイントでフォーカス調整が可能
  • マスクアライナーよりも高価だが、より高精度な半導体製造に適している

スキャナー

スキャナーは、ステッパーをさらに進化させた最新の露光装置です。

  • 細長いスリット状の光をウェハー全面にスキャンしながら露光する
  • レチクル(マスク)とウェハーを同時に移動させながら露光する
  • 大面積のウェハーに対しても高精度な露光が可能
  • ステッパーよりもさらに高解像度で、最先端の半導体製造に使用される
  • 露光範囲が長方形になり、ステッパーよりも広い面積を露光できる

マスクアライナーは比較的簡易な製造に、ステッパーは高精度な製造に、そしてスキャナーは最先端の微細加工に使用されています。製造する半導体の種類や要求される精度、生産規模などに応じて、適切な露光装置が選択されます。

レチクルとは?

レチクルは、半導体チップの回路パターンを保持する「原版」のような役割を果たします。シリコンウェハー上に微細な回路パターンを転写するために使用され、露光装置内で光源からの光を制御してウェハー上に正確にパターンを投影します。レチクルの品質と精度は、半導体チップの性能と歩留まりに直接影響します。そのため、レチクルの管理と保護は非常に重要です。マルチビーム描画装置を使用して、より微細で複雑なパターンをレチクル上に形成する技術が開発されています。EUV用レチクルの開発は、半導体の微細化において重要な役割を果たしています。

構造と材質

  • 通常、石英ガラス製の基板上に回路パターンが形成されています。
  • EUV(極端紫外線)露光装置用のレチクルは、EUV光を反射するための特殊な多層膜構造を持っています。

露光方式による違い

  • ArF液浸露光装置では、レチクルを「透過」した光がウェハーに照射されます。
  • EUV露光装置では、レチクルが光を「反射」してウェハー上にパターンを形成します。

特殊な露光装置

最近では、特殊な用途や研究開発向けの露光装置も登場しています:

  1. マスクレス露光装置:マスクを使用せず、直接データからパターンを描画
  2. ナノインプリント:ナノメートルサイズのパターンを物理的に転写
  3. 電子ビーム露光装置:電子ビームを使用して直接パターンを描画
  4. DSA(Directed self-assembly, 自己組織化リソグラフィ)

露光装置の主な用途

半導体チップの製造

露光装置の最も一般的な用途は、CPUやメモリなどの半導体チップの製造です。最先端のプロセッサやメモリチップの製造には、EUVやArF液浸露光装置が使用されています。これらの装置により、7nm、5nm、さらには3nmノードの超微細プロセスが可能となり、より高性能で省電力な半導体チップの生産が実現しています。

半導体パッケージング

先端半導体パッケージング工程における露光装置は、チップレットやFan-Out技術に対応するため、高度な機能を備えています。これらの装置は、1.0μmから2.0μmの高解像度と100mm×100mmの広画角露光を実現し、515×510mmまでの大型基板に対応しています。多様な基板材料や厚膜フォトレジストにも適応可能で、チップ再配置時の位置ズレを自動補正する機能も搭載しています。高い生産性と柔軟性を持ち、ステッパー方式や直接描画方式など多様な露光技術を採用しています。これらの特徴により、高性能かつ低コストな次世代半導体パッケージの製造を可能にし、半導体産業の技術革新を支えています。

ディスプレイパネルの製造

液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイの製造にも露光装置が使用されます。これらの用途では、大面積の基板に均一にパターンを形成する必要があるため、大型のスキャナー型露光装置が用いられます。最新のディスプレイ技術では、より高精細な画素構造を実現するために、高解像度の露光技術が求められています。

MEMS・センサーの製造

微小電気機械システム(MEMS)やさまざまなセンサーの製造にも露光装置が重要な役割を果たしています。加速度センサー、ジャイロスコープ、圧力センサーなどの製造では、3次元的な構造を形成するために複雑な露光プロセスが必要となります。これらのデバイスは、スマートフォンやIoTデバイス、自動車などに広く使用されており、露光技術の進歩がこれらの製品の性能向上と小型化に貢献しています。

露光装置の主な製造メーカー

ASML(オランダ)

ASMLは、世界最大の半導体露光装置メーカーです。特に、EUV露光装置の分野では独占的な地位を築いています。ASMLの装置は、Intel、TSMC、Samsungなど世界の主要な半導体メーカーに採用されており、最先端の半導体製造プロセスに不可欠となっています。2024年現在、EUV露光装置市場でのASMLのシェアは100%となっています。

ニコン(日本)

ニコンは、ArF液浸露光装置やKrF露光装置などの分野で強みを持つ日本の露光装置メーカーです。特にArFドライ露光装置では高いシェアを誇っています。ニコンの装置は、高い精度と安定性で知られており、世界中の半導体メーカーに採用されています。最近では、次世代のリソグラフィ技術の開発にも注力しています。

キヤノン(日本)

キヤノンは、i線露光装置やKrF露光装置の分野で強い競争力を持つ日本の露光装置メーカーです。特にi線露光装置では世界トップシェアを誇っています。キヤノンの装置は、コストパフォーマンスに優れており、幅広い半導体製造プロセスで使用されています。近年は、ナノインプリント技術など、次世代のリソグラフィ技術の開発にも積極的に取り組んでいます。

Veeco(アメリカ)

Veecoは、高性能の半導体製造装置を提供する企業です。AP200/300リソグラフィシステムは、先進的なパッケージングアプリケーション向けに設計された露光装置で、高精度と高スループットを実現しています。

SUSS MicroTec(ドイツ)

SUSS MicroTecは、半導体製造および関連市場向けの装置とプロセスソリューションを提供するグローバル企業です。マスクアライナーやコーターなど、幅広いリソグラフィ関連製品を展開しています。

Heidelberg Instruments(ドイツ)

Heidelberg Instrumentsは、マスクレスレーザーリソグラフィ技術を専門とする企業です。直接描画技術を用いた露光装置を提供し、研究開発から小規模生産まで幅広い用途に対応しています。

露光装置用光源メーカー

露光装置用光源メーカーは、半導体製造プロセスにおいて極めて重要な役割を果たしています。これらの企業は、最先端の光源技術を開発し、提供することで、半導体チップの微細化と高性能化を可能にしています。

具体的には、以下のような貢献をしています:

  1. 高精度露光の実現:ナノメートル単位の微細な回路パターンを形成するために必要な高品質で安定した光源を提供しています。
  2. 技術革新の推進:EUVリソグラフィなど、次世代の露光技術に対応する新しい光源の開発を行っています。
  3. 製造効率の向上:高出力かつ安定した光源により、半導体製造プロセスの生産性と歩留まりの向上に寄与しています。
  4. 品質管理の支援:検査用光源を提供することで、製造プロセスの品質管理を支援しています。

これらの光源メーカーの技術力が、半導体産業全体の発展を支える重要な基盤となっています。

主なメーカーを以下に挙げます。

  • レーザーテック
    レーザーテックは、EUV向け検査装置で世界市場を独占する企業です。最先端半導体製造に不可欠な高性能検査装置を提供しており、独自開発の高輝度EUVプラズマ光源「URASHIMA」を搭載した検査装置「ACTISシリーズ」で業界をリードしています。同社は直近10年間で売上高を7倍超に急成長させ、半導体産業における重要な役割を果たしています。
  • ギガフォトン
    ギガフォトンは、露光装置用エキシマレーザーの世界シェア約50%を持つ小松製作所の完全子会社です。ArFとKrFの2種類のエキシマレーザーを生産し、半導体リソグラフィ技術の発展に大きく貢献しています。同社はEUV光源の開発にも取り組んでおり、次世代の半導体製造技術の進化を支えています。
  • ウシオ電機
    ウシオ電機は、露光装置向けUVランプやEUVリソグラフィマスク検査用EUV光源を開発する企業です。同社の超高圧UVランプは、半導体や液晶ディスプレイの製造プロセスで広く使用されており、高い信頼性と性能で業界に貢献しています。
  • Cymer (ASMLの子会社)
    CymerはASMLの子会社であり、EUV光を照射するレーザーに関する技術を多数保有しています。同社は2000件以上の特許出願を行っており、EUV光源技術において業界をリードしています。ギガフォトンのライバル企業として、半導体露光装置用光源市場で重要な位置を占めています。

まとめ

露光装置は半導体製造の核心技術であり、その進化は半導体産業全体の発展を牽引しています。EUV技術の実用化や、日本企業の新たな取り組みなど、業界は常に変化しています。市場規模の拡大予測や、各メーカーの技術革新への取り組みを見ると、露光装置の重要性は今後さらに高まると考えられます。半導体業界に関わる全ての人々にとって、露光装置の動向は今後も注目すべきトピックとなるでしょう。

参考サイト