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集積型パッシブデバイス(IPD)とは?基本から最新技術トレンド・市場動向まで徹底解説【2025年版】

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集積型パッシブデバイス(Integrated Passive Device、IPD)は、半導体産業において急速に注目を集めている技術です。本記事では、IPDの基本概念から最新の市場動向、主要な用途、技術的課題まで包括的に解説します。5G通信やIoTデバイスの普及に加え、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)やAI、車載向けの需要拡大を背景に、IPDの重要性はますます高まっています。

IPD関連の最新ニュース

  • 村田製作所の極小シリコンキャパシタ量産開始(2024年10月)
    村田製作所(Murata Integrated Passive Solutions)は、フランス・カーン工場に200mmウエハー生産ラインを新設し、厚さ50μmの極小シリコンキャパシタの量産を開始しました。同プロジェクトには6,000万ユーロが投資されており、2023〜2025年にかけて100人超の雇用創出も計画されているとされています。なお、2023年3月の計画発表時点では目標厚さ「40μm」と公表されており、量産品スペックの50μmとは若干の差異があります。また、電子デバイス産業新聞のインタビューによると、同社は最薄30μm品の実現も公表しており、50μm品を量産しつつさらなる薄型化にも取り組んでいるとされています。
  • ロームがシリコンキャパシタ市場に参入(2023年9月)
    ロームは2023年9月、独自の微細化技術「RASMID工法」を活用した業界最小クラスの0402サイズ(0.4mm×0.2mm)シリコンキャパシタ「BTD1RVFLシリーズ」の量産を開始したと報じられています。スマートフォン・ウェアラブル・光トランシーバー向けに展開しており、ローム公式白書(2024年1月付)によると、高周波対応の第2弾シリーズについて「2024年9月のサンプル出荷を目標に開発を進めている」と明示されていました。また、車載機器・産業機器向け製品も開発計画に含まれているとされています。なお、2024年9月時点で実際にサンプル出荷が実施されたかどうかの公式確認情報は現時点では見つかっていません。
  • X-FAB社の新IPD製造能力「XIPD」発表
    X-FAB Silicon Foundries SEは、新しいIPD製造能力「XIPD」を発表しました。X-FABの公式プレスリリースおよび複数の業界メディアによると、XIPDはXR013 130nm RF SOIプロセスをベースに、厚銅メタライゼーション層を採用したエンジニアドサブストレートを用いた構成とされています。動作温度範囲は−40〜125℃で、Sub-6GHzからミリ波帯(mmWave)まで広帯域に対応し、すでに70〜80GHz動作のプロジェクトにも取り組んでいるとX-FABは公表しています。

IPDとは?

IPDの定義

集積型パッシブデバイス(IPD)は、抵抗器、コンデンサ、インダクタなどの複数の受動部品を1つのパッケージに統合した電子部品です。これらのデバイスは、半導体製造技術を用いて基板上に直接製造されます。

IPDの特徴

IPDの主な特徴は、サイズと重量の削減、製造の複雑さの低減、そして性能の向上です。特に高周波(RF)アプリケーションにおいて、IPDはディスクリート受動部品に比べて優れた性能を発揮します。また、回路基板上のフットプリントの縮小や信頼性の向上にも貢献します。

IPDの利点

IPDの採用により、電子機器の小型化、高性能化、低消費電力化が可能になります。特に5G通信やIoTデバイスなど、スペースに制約のある現代の電子システムにおいて、IPDは不可欠な存在となっています。さらに、製造工程の合理化やシステム全体のフットプリントの削減にも寄与します。

IPDの市場規模

現在の市場規模(2025年時点)

2025年時点の複数の調査会社による最新レポートでは、IPD市場規模は約14〜24億米ドルと推定されています(SNS Insider: 約14.8億ドル、MarketGenics: 約18億ドル、Research and Markets: 約24億ドル等)。調査会社間で数値に幅があるため、単一の数値として断定することは難しい状況です。

成長予測

複数の市場調査レポートによると、IPD市場の年平均成長率(CAGR)は7〜12%超が主流の予測となっており、2034〜2035年には34〜56億米ドル前後に達するとの見方が複数社から示されています(SNS Insider、GlobeNewswire)。この成長は、モバイル機器、IoTデバイス、5GインフラなどのRF用途に加え、AI・HPCサーバー向けの需要増加にも支えられています。なお、調査会社によって数値に大きな開きがあるため、参照する際は調査会社名と調査実施時期を確認することをお勧めします。

IPDの主な用途

モバイル通信デバイス

IPDは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル通信デバイスで広く使用されています。特に5G対応デバイスでは、高周波数帯での性能向上と小型化が求められるため、IPDの需要が高まっています。

IoTデバイス

IoT(Internet of Things)デバイスの普及に伴い、IPDの需要が急増しています。センサー、アクチュエーター、通信モジュールなど、IoTデバイスの主要コンポーネントにIPDが使用されています。特に、低消費電力と小型化が要求されるウェアラブルデバイスやスマートホーム機器では、IPDの採用が不可欠となっています。

自動車エレクトロニクス

自動車産業のデジタル化と電動化に伴い、IPDの自動車向け用途が拡大しています。特に、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システム、LiDARなどの高度な電子機器では、IPDの高性能と信頼性が重要視されています。村田製作所のシリコンキャパシタ事業においても、車載(LiDARなど)向けの引き合いが増加していると報じられています(電子デバイス産業新聞)。また、ロームも車載機器・産業機器向けシリコンキャパシタの開発計画を持つとされており(ローム公式白書)、車載分野への展開が業界全体で進んでいます。

ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)・AI

近年、IPDの需要はスマートフォンや車載にとどまらず、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)やAIサーバー分野にも広がりつつあります。村田製作所(Murata Integrated Passive Solutions)のシリコンキャパシタはHPC市場向けの引き合いも増加していると公言されており(電子デバイス産業新聞)、データセンターや高性能演算基板における小型・高容量パッシブ部品の需要拡大が背景にあります。AI推論・学習処理の高負荷環境においても、電源ノイズ低減や信号品質確保のためのパッシブ部品集積化ニーズが高まっています。

IPDの主な種類

RF IPD

RF IPD(Radio Frequency Integrated Passive Device)は、高周波回路で使用される集積型パッシブデバイスです。主に、マッチング回路、フィルター、バラン、カプラーなどの機能を1つのチップに統合します。5G通信やWi-Fi 6などの高速無線通信技術の普及に伴い、RF IPDの需要が急増しています。BroadcomやSkyworks Solutionsなどの企業が高性能なRF IPDを開発・製造しています。

また、ON Semiconductorは2025年1月、IPD技術を強化したフロントエンドモジュールを発売し、スマートフォンでシステム全体の消費電力を最大18%削減することを達成したと報告されています。RF IPD分野における競争は従来の主要プレーヤーに加え、新たな参入企業によってさらに活発化しています。

EMI/EMS保護IPD

EMI/EMS保護IPDは、電子機器を電磁干渉から保護するために設計された集積型パッシブデバイスです。ノイズフィルタリング、サージ保護、静電気放電(ESD)保護などの機能を提供します。特に、高密度実装が求められるスマートフォンや自動車用電子機器で広く使用されています。TDKや村田製作所などの企業が高性能なEMI/EMS保護IPDを提供しています。

デジタル&ミックスドシグナルIPD

デジタル&ミックスドシグナルIPDは、デジタル回路とアナログ回路の両方で使用される集積型パッシブデバイスです。デカップリングキャパシタ、プルアップ/プルダウン抵抗、フィルター回路などの機能を1つのチップに統合します。特に、高速デジタル回路やミックスドシグナル回路での信号品質改善や電源ノイズ低減に効果を発揮します。

シリコンキャパシタIPD

シリコンキャパシタIPDは、薄膜半導体技術を活用して製造される高性能な集積型パッシブデバイスです。印加電圧や温度変化に対して静電容量が安定しているという特長を持ちます。主な特性は以下のとおりです。

  • 高信頼性:医療機器や自動車市場向けに適しています。
  • 薄型設計:村田製作所(Murata Integrated Passive Solutions)は量産品として厚さ50μmを実現しており、さらに最薄30μm品の実現も公表しています(電子デバイス産業新聞、EE Times Japan、2024年10月)。
  • 高耐熱性:250℃までの高温環境に耐えられます。
  • 広帯域特性:60GHz以上の高周波帯域まで対応可能です。

村田製作所(Murata Integrated Passive Solutions、旧IPDiA)は、「トライポッドピラー」と呼ばれるテトラポッド状の独自構造体と新開発のナノポーラス構造を組み合わせることで、従来比5倍の高容量化を実現し、2023年にセルラー向けで量産化したとされています(電子デバイス産業新聞)。スマートフォン向けにとどまらず、HPC市場および車載(LiDARなど)向けの引き合いも増加しているとされています。

また、ロームが2023年9月に「RASMID工法」を用いた業界最小クラスの0402サイズ(0.4mm×0.2mm)シリコンキャパシタ「BTD1RVFLシリーズ」の量産を開始したと報じられており(日経クロステック、2023年9月)、シリコンキャパシタIPD市場の競合状況は変化しつつあります。

ガラス基板IPD(Glass IPD)

5G/6G対応の高周波アプリケーションを中心に、シリコン基板に代わるガラス基板を使用したIPD(IPD on Glass)が新たな技術トレンドとして台頭しています。ガラス基板はシリコンや有機基板と比較して優れた電気絶縁性・低誘電損失・高い寸法安定性を持ち、ミリ波帯での高周波性能に適しているとされています。

Semiconductor Insight(2026年5月)の調査によると、RF用途でのIPD on Glass市場は2025年時点で約18.7億ドル規模との推計もあります。3D Glass Solutions(3DGS)などの専業ファウンドリが5G/6G・ミリ波向けにガラスコアIPDフィルターやバランを製品化しており、ASEも5G向けガラスIPDフィルターを手がけているとされます。今後のRF IPD市場において重要なカテゴリになる可能性があります。

IPDのSiP統合トレンドとAI・HPC向け需要拡大

近年、IPDをSiP(System-in-Package)モジュールのパッシブダイとして統合するアーキテクチャが加速しているとされています。3D統合IPDがアクティブダイのインターポーザーとして機能し、Wi-Fi 7・5G向けの超コンパクトSiPを実現する事例が増えているとする調査報告もあります(HDin Research)。

AI・HPCサーバーの普及に伴い、高密度実装が求められる演算基板向けのパッシブ部品需要も拡大しており、IPDの活用範囲はモバイル・車載にとどまらず、データセンターやエッジAI機器にまで広がりつつあります。村田製作所はHPC市場向けの引き合い増加を公言しており(電子デバイス産業新聞)、IPDのSiP統合はIPD市場の次なる成長ドライバーとして注目されています。

IPDの技術的な課題

設計の複雑さ

IPDの設計は、複数の受動部品を1つのチップに統合するため、非常に複雑です。特に、高周波回路や高密度実装が求められる応用分野では、寄生効果や相互干渉の管理が重要な課題となります。設計者は、電磁界シミュレーションや高度なモデリング技術を駆使して最適な性能を実現する必要があります。また、製造プロセスの変動を考慮した設計マージンの設定も重要です。

製造プロセスの最適化

IPDの製造には高度な半導体製造技術が必要です。特に、高Q値のインダクタや高容量のキャパシタを実現するためには、特殊な材料や製造プロセスが求められます。例えば、高周波IPDでは低損失基板材料や高精度な薄膜形成技術が不可欠です。製造歩留まりの向上と製造コストの削減も大きな課題となっています。

信頼性と長期安定性の確保

IPDは、さまざまな環境条件下で長期間安定して動作することが求められます。特に自動車や産業機器向けのIPDでは、高温・高湿度・振動などの厳しい環境下での信頼性が重要です。また、電気的ストレスや熱サイクルによる経年劣化も考慮する必要があります。これらの課題に対応するため、新しい材料開発や封止技術の改良、高度な信頼性試験方法の確立が進められています。

IPDの主要メーカー

村田製作所(Murata Integrated Passive Solutions)

村田製作所は、IPD市場において世界トップクラスのシェアを誇る日本の電子部品メーカーです。RF IPDやEMI/EMS保護IPD、シリコンキャパシタIPDなど幅広い製品ラインナップを展開しています。旧IPDiAを統合したMurata Integrated Passive Solutionsは、「トライポッドピラー」とナノポーラス構造を組み合わせた独自アーキテクチャにより高容量化を実現しており、スマートフォン・HPC・車載向けに事業を拡大しています(電子デバイス産業新聞)。

ローム

ロームは2023年9月、独自の「RASMID工法」を用いた0402サイズのシリコンキャパシタ「BTD1RVFLシリーズ」を量産開始したと報じられており(日経クロステック)、シリコンキャパシタIPD市場への後発参入企業として注目されています。スマートフォン・ウェアラブル・光トランシーバー向けに展開しており、ローム公式白書(2024年1月付)によれば高周波対応の第2弾シリーズや車載・産業機器向け製品の開発計画も持つとされており、競合状況に新たな変化をもたらしています。

Broadcom

Broadcomは、米国を拠点とする半導体大手で、特にRF IPDの分野で強みを持っています。同社のIPDは高周波性能と小型化を両立させており、5G通信機器やWi-Fi 6ルーターなどの最先端無線通信デバイスに広く採用されています。ミリ波帯に対応した次世代IPDの開発も継続的に進められています。

参考サイト