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有機EL(OLED)~スマホから大型テレビまで、高ピーク輝度/マスクレス方式で市場拡大

デバイス

有機ELディスプレイ(OLED)技術は、ディスプレイ産業に革命をもたらしています。本記事では、OLEDの最新動向から市場規模、主要な用途、技術的課題まで、包括的に解説します。2025年に向けたOLED市場の展望と、業界をリードする企業の動向にも注目します。

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OLED関連の最新ニュース

  • サムスンの2025年OLED新モデル
    サムスンは2025年に新しいOLEDテレビモデルを発表予定です。「S85F」「S90F」「S95F」の3モデルが計画されており、83インチの大型モデルが新たに追加されます。これらの新モデルは、高品質なQD-OLEDパネルを採用する可能性が高く、2025年のCESで正式発表される見込みです。
  • ジャパンディスプレイの新型OLED「eLeap」
    ジャパンディスプレイ(JDI)は、新しいタイプのOLEDディスプレイ「eLeap」の量産を2024年12月に開始すると発表しました。eLeapは従来のOLEDと比較して2倍の効率、2倍のピーク輝度、3倍の寿命を実現すると言われています。初期の生産は主にラップトップ、スマートフォン、ウェアラブルデバイス向けとなります。
  • LG DisplayのOLED技術革新
    LG Displayは、OLEDテレビパネルの技術革新を続けています。最新の技術では、ピクセルディミング技術を採用し、各ピクセルの明るさを個別に制御することで、完璧な黒表現と精細な色彩表現を実現しています。これにより、LCDを超える画質性能を達成し、高コントラスト比と広視野角を実現しています。

OLEDとは?

自発光ディスプレイ技術

OLED(Organic Light Emitting Diode)は、有機化合物を使用した自発光型ディスプレイ技術です。各ピクセルが独自に発光するため、バックライトが不要で、薄型・軽量化が可能です。また、電流に反応して発光する有機発光ダイオードを使用しているため、高速応答性と広視野角を実現しています。

OLEDの基本構造

OLEDの基本構造は、陽極(Anode)と陰極(Cathode)の間に複数の有機層を挟んだ構造になっています。主要な層として、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)があります。これらの層を通じて、正孔と電子が再結合し、励起子(Exciton)を形成して光を放出します。

OLEDの発光原理

OLEDの発光原理は、エレクトロルミネッセンスと呼ばれます。陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子が発光層で再結合する際に、エネルギーが放出され、これが光として観察されます。この過程により、OLEDは外部光源を必要とせず、自ら発光することができます。また、発光色は使用する有機材料によって決定され、RGB(赤・緑・青)の3原色を組み合わせることで、フルカラー表示が可能となります。

有機ELテレビと液晶テレビ、画質をガチ比較

OLEDの市場規模

2024年から2029年の市場予測

OLEDパネル市場は急速に成長しており、2024年には516億3,000万米ドルに達すると予想されています。さらに、2029年までには959億3,000万米ドルまで拡大すると予測されており、2024年から2029年までの年間平均成長率(CAGR)は13.19%と高い成長が見込まれています。

地域別の市場動向

OLEDパネル市場において、最も急成長している地域はヨーロッパです。一方、2024年時点で最大の市場シェアを占めているのはアジア太平洋地域となっています。特に中国や韓国、日本などのアジア諸国がOLED技術の開発と生産において主導的な役割を果たしています。

市場成長の主要因

OLEDパネル市場の成長を牽引する主な要因として、スマートフォンやテレビなどの消費者向け電子機器の需要増加が挙げられます。また、フレキシブルディスプレイや透明ディスプレイなどの新しい形態のOLED製品の登場も市場拡大に寄与しています。さらに、自動車産業におけるOLEDディスプレイの採用増加や、AR/VRデバイスの普及も市場成長を後押ししています。

OLEDの主な用途

スマートフォンとタブレット

OLEDディスプレイは、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスで広く採用されています。薄型・軽量で省電力という特性が、バッテリー寿命の延長と端末の薄型化に貢献しています。また、高コントラスト比と鮮やかな色彩表現により、高品質な視聴体験を提供しています。特に、フレキシブルOLEDパネルを使用した折りたたみスマートフォンなど、革新的な製品設計を可能にしています。

テレビとモニター

大型OLEDパネルは、高級テレビやプロフェッショナル向けモニターで使用されています。完全な黒表現と高コントラスト比により、HDRコンテンツの再生に適しており、映画やゲームなどの視聴体験を大幅に向上させます。また、広視野角と高速応答性も、OLEDテレビの魅力となっています。最新のOLEDテレビでは、8K解像度やAI画質改善技術との組み合わせにより、さらなる高画質化が進んでいます。

ウェアラブルデバイス

スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスでも、OLEDディスプレイが多く採用されています。小型で省電力、かつ高い視認性を持つOLEDは、限られたバッテリー容量で長時間の使用が求められるウェアラブルデバイスに最適です。また、フレキシブルOLEDを使用することで、曲面デザインの製品も実現可能となり、装着感の向上にも貢献しています。

OLEDの主な種類

PMOLED(パッシブマトリクスOLED)

PMOLED(パッシブマトリクスOLED)は、ディスプレイの各ピクセルをパッシブに制御する技術です。構造がシンプルで製造コストが低いため、小型のディスプレイに適しています。主に時計や小型デバイスの表示に使用されており、情報量が少ない単純な表示に適しています。PMOLEDは、電極を格子状に配置し、交差点で発光させる仕組みを採用しているため、大型ディスプレイには向いていません。しかし、低消費電力と高コントラスト比を実現できるため、特定の用途では依然として重要な役割を果たしています。

AMOLED(アクティブマトリクスOLED)

AMOLED(アクティブマトリクスOLED)は、各ピクセルを個別に制御する技術を採用したディスプレイです。薄膜トランジスタ(TFT)を使用して各ピクセルを制御するため、高精細な表示と高い応答速度を実現します。AMOLEDは主にスマートフォンやテレビなどの大型ディスプレイに適しており、鮮やかな色再現と高コントラストが特徴です。また、動画や高画質なコンテンツの表示にも対応可能で、広視野角と低消費電力も実現しています。最新のAMOLEDディスプレイでは、フレキシブルパネルや透明ディスプレイなど、革新的な製品開発も進んでいます。

QD-OLED(量子ドットOLED)

QD-OLED(量子ドットOLED)は、OLEDと量子ドット技術を組み合わせた最新のディスプレイ技術です。青色OLEDと赤色・緑色の量子ドットを組み合わせることで、従来のOLEDよりも広い色域と高い輝度を実現します。QD-OLEDは、高い色純度と輝度を維持しながら、OLEDの特徴である深い黒表現と高コントラスト比を両立させています。主に高級テレビやプロフェッショナル向けモニターに採用されており、HDRコンテンツの再生に特に優れた性能を発揮します。サムスンディスプレイが開発を主導しており、2025年の新モデルでも採用が期待されています。

OLEDの技術的な課題

寿命と焼き付き

OLEDディスプレイの主要な技術的課題の一つは、寿命と焼き付きの問題です。有機材料を使用しているため、長時間の使用や経年劣化により、画面の明るさや色の劣化が進行します。特に、同じ画面に長時間静止画像が表示される場合、特定のピクセルが過度に発光し続けることで、その領域の有機材料が劣化し、周囲よりも明るさが低下する「焼き付き」現象が発生します。この問題に対処するため、メーカーは画面シフト技術や画素の均等な使用を促進する機能を組み込んでいますが、完全に防ぐことは難しい場合もあります。

製造コストと歩留まり

OLEDディスプレイの製造コストは依然として高く、特に大型パネルの生産において課題となっています。高度な製造プロセスと専門的な素材の使用が必要なため、液晶ディスプレイ(LCD)に比べて製造コストが高くなります。また、製造過程での歩留まりの問題も存在し、特に大型パネルの生産では不良品率が高くなる傾向があります。これらの要因が、OLEDディスプレイ搭載製品の価格を押し上げる原因となっています。ただし、技術の進歩や競争の激化により、将来的には製造コストの低減と歩留まりの向上が期待されています。

青色OLEDの効率と寿命

OLEDディスプレイにおいて、青色発光材料の効率と寿命は依然として大きな技術的課題です。赤色や緑色のOLED材料に比べて、青色OLEDは効率が低く、寿命も短いという問題があります。これは、青色光を発する有機材料が他の色に比べて不安定であることが原因です。青色OLEDの性能向上は、ディスプレイ全体の消費電力削減と寿命延長に直結するため、多くの研究開発が行われています。最新の研究では、新しい青色発光材料の開発や、量子ドット技術との組み合わせによる効率向上などが進められています。この課題の解決は、OLEDディスプレイの更なる普及と性能向上につながると期待されています。

OLEDのトップシェアメーカー

サムスンディスプレイ

サムスンディスプレイは、OLEDパネル市場で長年トップシェアを維持してきた企業です。特に中小型OLEDパネルにおいて強みを持ち、スマートフォン向けディスプレイで圧倒的なシェアを誇っています。最新のQD-OLED技術を開発し、高級テレビ市場にも参入しています。2021年の世界市場シェアは17.91%で業界2位でしたが、高付加価値製品に注力することで収益性を維持しています。サムスンは経営資源を有機ELへ集中させており、今後も技術革新をリードすることが期待されています。

LGディスプレイ

LGディスプレイは、大型OLEDパネル市場で圧倒的なシェアを誇っています。特にOLEDテレビパネルの生産において世界をリードしており、自社ブランドだけでなく、他のテレビメーカーにもパネルを供給しています[9]。2024年の第3四半期累計で、LG電子はOLED TV市場の52%のシェアを占め、207万600台を出荷しました。LGディスプレイは、高品質なOLEDパネルの生産技術を持ち、特に75インチ以上の超大型OLED TV市場では56%のシェアを記録しています。

中国メーカーの台頭

中国のBOEや天馬(Tianma)などのメーカーが急速にシェアを拡大しています。BOEは特に中小型OLEDパネル市場で急成長を遂げており、2024年第1四半期には中小型OLED市場で50.5%のシェアを獲得し、韓国企業を上回りました。天馬もLCD市場で急速にシェアを拡大しており、LTPS技術を活用して差別化を図っています。

参考サイト