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インダクタ(コイル)〜電流/電圧の安定化、ノイズの除去に不可欠な電子部品

デバイス

半導体デバイスの性能向上に不可欠なインダクタ。本記事では、インダクタの基礎から最新の技術動向、市場規模、主要メーカーまで、包括的に解説します。高周波回路や電源回路での重要性が増す中、インダクタの進化が半導体産業にもたらす影響を探ります。

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インダクタ関連の最新ニュース

  • Tai-Tech社が2024年の成長を予測
    パワーインダクタ専門メーカーのTai-Tech Advanced Electronicsは、2024年、特に下半期に売上成長を見込んでいます。AI サーバーや自動車向け電子機器の需要増加が背景にあります。

 

インダクタとは?

電磁誘導の原理を利用したデバイス

インダクタは、電磁誘導の原理を利用して磁場の形でエネルギーを蓄積する受動デバイスです。コイル状の導体に電流を流すと、周囲に磁場が発生し、この磁場の変化が逆起電力を生み出します。この特性により、インダクタは電流の急激な変化を抑制する働きを持ちます。

電気回路における重要な役割

インダクタは、電源回路やフィルタ回路など、様々な電子機器で使用されています。特に、スイッチング電源や高周波回路では、電圧の安定化やノイズの除去に不可欠な部品となっています。また、近年のIoTデバイスや5G通信機器の普及に伴い、高性能なインダクタの需要が増加しています。

インダクタンスの単位と特性

インダクタの性能を表す主な指標はインダクタンスで、単位はヘンリー(H)です。インダクタンスが大きいほど、電流の変化に対する抵抗が大きくなります。また、直流抵抗(DCR)や定格電流、共振周波数なども重要な特性です。これらの特性を考慮し、用途に応じた最適なインダクタを選択することが重要です。

インダクタの市場規模

2023年の市場規模と成長率

グローバルなインダクタ市場は、2023年に45億1,500万米ドルと推定されています。この市場は2024年から2030年にかけて、年平均成長率(CAGR)5.5%で拡大すると予測されています。

成長を牽引する要因

市場成長の主な要因として、消費者電子機器セクターにおける技術革新や、スマートホーム・スマートシティ技術の普及が挙げられます。特に、エネルギー効率の高い電子システムの需要増加が、インダクタ市場を押し上げています。また、電気自動車(EV)の販売増加も市場拡大に寄与しています。

地域別の市場動向

アジア太平洋地域、特に中国と日本が、インダクタ市場の主要な生産拠点となっています。一方で、北米や欧州でも、自動車産業や産業機器向けの高性能インダクタの需要が高まっています。今後は、5G通信やIoTデバイスの普及に伴い、各地域で市場が拡大すると予想されています。

インダクタの主な用途

電源回路での活用

インダクタは電源回路、特にスイッチング電源において重要な役割を果たします。DC-DCコンバータやバックコンバータなどの電圧変換回路で使用され、電圧の安定化や効率的なエネルギー変換を実現します。例えば、スマートフォンやノートPCの電源管理IC(PMIC)には、複数のインダクタが使用されています。

高周波回路でのノイズ抑制

高周波回路では、インダクタはノイズ抑制や信号の分離に使用されます。特に、RFフィルタやEMIフィルタとして、不要な高周波成分を除去し、回路の安定性を向上させます。5G通信機器やWi-Fi、Bluetoothモジュールなどの無線通信デバイスでは、高性能なRFインダクタが不可欠です。

自動車電装システムでの利用

自動車の電子化が進む中、インダクタの重要性が増しています。特に、車載PoC(Power over Coax)システムや、電動パワーステアリング(EPS)、電気自動車(EV)のインバータなどで使用されます。高温環境下での信頼性や大電流対応が求められるため、自動車用インダクタには特別な設計や製造プロセスが必要とされます。

インダクタの主な種類

巻線インダクタ

巻線インダクタは、フェライトコアに銅線を巻いた構造を持ちます。大電流領域や高インダクタンス領域で使用される場合が多く、携帯電話、TV、HDD、デジタルカメラなど幅広い用途に対応しています。巻線構造により、高いQ値(品質係数)を実現できるのが特徴です。

積層インダクタ

積層インダクタは、セラミック材料とコイル導体を積層した構造を持つモノリシックタイプです。巻線構造に比べて小型化・低背化が可能で、コスト面でも有利です。特に、スマートフォンなどの携帯機器の電源回路で多く使用されています。高周波特性に優れ、スイッチング周波数の高周波化に対応できます。

チップインダクタ

チップインダクタは、表面実装(SMD)タイプのインダクタで、プリント基板への実装性に優れています。フェライトコアにコイルを巻いた構造や、セラミック基板上に導体パターンを形成した構造など、様々なタイプがあります。小型化と高性能化の両立が進んでおり、IoTデバイスや携帯機器などで広く使用されています。

インダクタの技術的な課題

小型化と高性能の両立

インダクタの小型化と高性能化の両立は、常に技術的な課題となっています。特に、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどの小型機器では、限られたスペースで高いインダクタンスと低DCRを実現する必要があります。これに対し、新しい材料や構造の開発、製造プロセスの改善などが進められています。

高周波特性の向上

5G通信やミリ波レーダーなど、高周波アプリケーションの普及に伴い、インダクタの高周波特性の向上が求められています。特に、高いQ値の維持と自己共振周波数(SRF)の向上が課題となっています。これらの課題に対し、低損失材料の開発や、コイルパターンの最適化などの研究が進められています。

耐熱性と信頼性の向上

自動車用途や産業機器向けのインダクタでは、高温環境下での安定動作と長期信頼性が要求されます。特に、車載用インダクタでは、-40℃から150℃以上の温度範囲で安定した特性を維持する必要があります。これに対し、耐熱性の高い材料の採用や、熱設計の最適化、封止技術の改善などが行われています。

インダクタのトップシェアメーカー

  • TDK
    TDKは、インダクタ市場で世界トップのシェアを持つ日本の電子部品メーカーです。同社は幅広い製品ラインナップと高い技術力で知られており、特に高周波用インダクタと電源用インダクタで強みを発揮しています。
  • 村田製作所
    村田製作所は、TDKに次ぐ世界第2位のシェアを持つ日本の電子部品メーカーです。同社は積層チップインダクタなどの小型・高性能製品で高い評価を得ています。
  • Vishay Intertechnology Inc.
    Vishayは、アメリカを拠点とする大手電子部品メーカーで、インダクタ市場で第3位のシェアを持っています。同社は幅広い用途向けのインダクタを提供しています。
  • 太陽誘電
    太陽誘電は、日本の電子部品メーカーで、特に小型・高性能なインダクタ製品で強みを持っています。同社は市場で第4位のシェアを占めています。
  • Delta Electronics Inc.
    Delta Electronicsは、台湾を拠点とする電子部品メーカーで、特に電源用インダクタで高いシェアを持っています。同社は市場で第5位のシェアを占めています。


参考サイト