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部品内蔵基板〜アクティブ-パッシブ部品間を短距離接続、次世代半導体パッケージングの高密度実装と省エネを両立

デバイス

部品内蔵基板は、半導体パッケージングの革新的技術として注目を集めています。

キャパシタ、インダクタ、抵抗などの受動部品を樹脂基板内部に搭載することで、高密度実装と省エネ性能の両立を実現します。

本記事では、この先端技術の最新動向や市場展望、技術的課題などを詳しく解説します。

部品内蔵基板関連の最新ニュース

  • 村田製作所が垂直電源供給ソリューションを発表
    2024年10月、村田製作所はコンデンサ/インダクタ内蔵基板「iPaS™」がCEATEC AWARD 2024イノベーション部門賞を受賞しました。GPU向け垂直配電構造により電力損失を最大40%低減し、1000W級半導体の熱問題を解決する技術が高く評価されています。

【現在のGPUボードの構造】

【将来的なGPUボードの構造】

出典:村田製作所ホームページ

部品内蔵基板とは?

高密度実装を実現する3次元構造

従来の表面実装技術(SMT)では単位面積あたりの搭載個数に限界がありましたが、部品内蔵基板では基板内部に受動部品を分散配置することで更に高い実装密度を実現します。基板の水平方向の配線長を大幅に短縮し、寄生インダクタンスを大幅に抑制できます。

材料技術のブレイクスルー

TDKが開発した部品内蔵基板(SESUB:セサブ)用の熱圧着樹脂シートEOS(Embedding Organic Sheet)はボイドの発生無しにラミネートを可能にしました。

部品内蔵基板の市場動向

急増する需要

電子部品内蔵基板の市場規模推移は、2018 年約$21M から 2024 年約$231Mへ推移すると予測されています。

5G基地局向け需要が急拡大

ミリ波対応フェーズドアレイアンテナモジュールの普及に伴い、2025年までに基地局向け部品内蔵基板の需要が3.2倍増加すると見込まれています。

部品内蔵基板の主な用途

受動部品を樹脂基板の内部に埋め込んだ構造を持つ部品内蔵基板は、様々な分野で活用されています。以下に主な用途とその概要を示します。

モバイルデバイス

スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでは、部品内蔵基板技術が広く採用されています。この技術により、デバイスの小型化・薄型化が可能となり、限られたスペース内により多くの機能を搭載することができます。また、信号経路の短縮による電気的性能の向上や、部品の保護による信頼性の向上も実現しています。

高周波・無線通信機器

高周波無線モジュールや通信機器では、部品内蔵基板技術が特に重要です。埋め込み技術により、寄生インダクタンスや寄生容量を低減し、信号品質の改善やノイズの低減が可能となります。これにより、高周波での性能向上が実現し、無線通信の品質と効率が向上します。

自動車エレクトロニクス

自動車産業では、電子制御システムの高度化に伴い、部品内蔵基板技術の採用が進んでいます。この技術により、車載電子機器の小型化・軽量化が可能となり、同時に高い信頼性と耐環境性を確保することができます。

医療機器

医療機器分野では、小型化と高い信頼性が求められるため、部品内蔵基板技術が適しています。埋め込み技術により、医療用デバイスや携帯型医療機器の小型化・軽量化が可能となり、患者の負担軽減や使用性の向上につながっています。

航空宇宙・防衛機器

航空宇宙および防衛分野では、高い信頼性と耐環境性が要求されます。部品内蔵基板技術は、これらの要求を満たしつつ、機器の小型化・軽量化を実現します。特に、宇宙環境下での使用を想定した機器において、その優れた保護性能が活かされています。

IoTデバイス

IoT(Internet of Things)デバイスでは、小型化と多機能化が求められます。部品内蔵基板技術により、センサーや通信モジュールなどの多様な機能を小さな基板に統合することが可能となり、IoTデバイスの普及に貢献しています。

これらの用途において、部品内蔵基板技術は、機器の小型化・軽量化、電気的性能の向上、信頼性の確保など、多くの利点をもたらしています。今後も、エレクトロニクス産業の発展に伴い、さらなる応用範囲の拡大が期待されます。

部品内蔵基板の主な種類

コンデンサ内蔵型(iPaS™)

村田製作所が開発した大容量MLCC埋め込み技術では、10μF/mm²の容量密度を達成しています。低ESL設計によりPDNインピーダンスを100MHz帯で5mΩ以下に抑制できます。

インダクタ内蔵型(SESUB)

TDKの薄膜コイル技術により、100nHのインダクタを0.3mm厚に集積しています。5G mmWave対応パワーアンプモジュールで効率85%を実現しています。

薄膜コンデンサ(TFCP)

TDKのフレキシブルなシートタイプの薄膜コンデンサは厚さは、50μm以下、LSI直下のパッケージ基板内部に内蔵させることで、高周波領域できわめてすぐれたデカップリング効果が得られます。

ハイブリッド統合型

メイコーエレクトロニクスが開発した抵抗/コンデンサ複合内蔵基板では、ノイズ除去効果30dB向上を確認しています。レーザービア接続技術で10μmピッチの微細接続が可能です。

部品内蔵基板の技術的な課題

部品内蔵基板技術には、その革新的な性質ゆえに複数の技術的課題が存在します。

以下に主要な3つの課題とその解説を示します。

発熱対策

部品内蔵基板では、電子部品が基板の内部に高密度に配置されるため、従来の表面実装技術と比較して、内蔵された部品からの熱を効果的に逃がすことが困難です。熱集中や熱拡散の制約があり、デバイスの性能低下や信頼性の問題につながる可能性があります。この課題に対処するためには、以下のような方策が必要です:

  • 高熱伝導性材料の使用
  • 効率的な熱設計と熱シミュレーション
  • 適切な冷却システムの導入

製造技術の複雑性

部品内蔵基板の製造には、高度な技術と専門的な設備が必要です。従来の基板製造プロセスとは異なり、部品の埋め込みや内部配線の形成など、特殊な工程が要求されます。具体的には以下のような課題があります:

  • 部品の実装精度の確保
  • 内部配線の形成と接続の信頼性
  • 基板の穴あけや埋め込み工程の最適化

設計とシミュレーション

部品内蔵基板の設計は、従来の表面実装技術を用いた基板設計と比較して非常に複雑です。3次元的な部品配置や内部配線の最適化が必要となり、以下のような課題が生じます:

  • 部品の3次元配置の最適化
  • 内部配線の経路設計
  • 部品間の相互干渉やノイズの制御
  • 信号経路のクロストーク対策

これらの課題に対処するためには、高度な3D CADツールの使用や、電磁界シミュレーションなどの高度な設計手法が必要となります。また、設計者の技術力向上や、設計ガイドラインの確立も重要です。

部品内蔵基板のトップシェアメーカー

以下の表は、部品内蔵基板製品をリリースしている国内外の主な製造メーカー、その製品名、特徴、および用途をまとめたものです。

メーカー名製品名特徴用途
TDKSESUB– ICチップを薄く研削したベアダイを基板内部に埋め込む
– Cu-Cu接続による高い接続信頼性
– 低ESR・低ESL、優れたノイズ特性
– スマートフォンの電源管理モジュール
– ウェアラブルデバイス
– IoTデバイス用通信モジュール
TDKTFCP– 厚さ50μm以下の超薄型でフレキシブル
– 高結晶化チタン酸バリウム系誘電体により高誘電率を実現
– 高い静電容量
– LSI直下のパッケージ基板内に内蔵可能
– 電極パターンの設計により任意の静電容量が可能
– 基板内蔵用コンデンサ
– 高速LSIのデカップリング
– データセンターのサーバなどハイエンド機器のCPUデカップリング
– スマートフォン、ウェアラブル機器、IoTデバイスなどの小型・薄型電子機器
AT&SECP (Embedded Component Packaging)– 多層プリント回路基板の空間を効率的に使用
– アクティブおよびパッシブ部品の埋め込みが可能
– モバイルデバイス
– 自動車エレクトロニクス
– 産業用電子機器
新光電気工業MCeP– ICチップや能動・受動部品を内蔵
– 優れた電気特性と高い信頼性
– 小型・低背パッケージ
– モバイル機器
– 車載機器
– 産業機器
メイコー部品内蔵基板– チップ部品(抵抗・コンデンサ)内蔵による基板面積縮小
– 表面実装ICと内蔵部品との配線長短縮化
– レーザービアおよび銅めっきによる部品端子接続
– メモリサブストレート
– 各種モジュール
村田製作所iPaS– 大容量キャパシタ内蔵基板
– 低ESR/ESLキャパシタ内蔵基板
– パワーインダクタ内蔵基板
– モバイルデバイス
– 通信機器
– 自動車エレクトロニクス
ASEEmbedded Die Substrate
(a-EASI, SESUB:TDKと提携)
– フルターンキーソリューションの提供
– 先進的なパッケージングと基板設計・製造能力
– スマートフォン
– ウェアラブルデバイス
– IoTデバイス

まとめ

部品内蔵基板は半導体の高性能化と省エネ化を両立するキーテクノロジーとして、2025年以降さらなる進化が期待されます。

市場拡大と技術革新の相乗効果で、新たな応用分野の開拓が加速するでしょう。

高密度実装、熱マネジメント、微細加工など、多岐にわたる技術課題の克服が今後の発展の鍵となります。

 参考サイト