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DRAM~AI時代に欠かせないHBM(広帯域幅メモリ)

デバイス

半導体業界の要、DRAM(Dynamic Random Access Memory)市場が2024年、驚異の46%成長を遂げると予測されています。本記事では、この急成長の背景にある最新技術や市場動向を詳細に解説します。キオクシアの新技術「OCTRAM」やSamsungのEUVリソグラフィ導入など、DRAMの進化を支える革新的な取り組みにも注目。さらに、DRAMの基本構造から主要メーカーの戦略まで、幅広いトピックをカバーし、DRAM市場の全体像を浮き彫りにします。AI時代に欠かせないHBMの台頭や、スケーリングの限界といった技術的課題にも切り込み、DRAMの現在と未来を多角的に分析します。半導体業界に関心のある方、最新のテクノロジートレンドを押さえたい方必見の内容です。

DRAM関連の最新ニュース

  • マイクロン、1γ ノード DRAM のサンプル出荷を開始 未来のコンピューティング・ニーズに応えるメモリ技術を切り拓く
    1γ DRAM ノードのイノベーションは、トランジスタ性能を向上させる次世代の High-k メタルゲート技術による高速化や設計の最適化、メモリサイズの微細化など、CMOS 技術のさまざまな進展に支えられ、これらにより省電力化とパフォーマンスの向上が可能になります。さらに、最先端の EUV 露光に加え、高アスペクト比エッチング技術や業界をリードする革新的な設計技術の最適な導入を図り、業界最先端のビット密度を実現しました。
  • キオクシアが新DRAM技術「OCTRAM」を開発
    半導体メモリー大手キオクシアは、酸化物半導体(InGaZnO)トランジスタを用いた新しいDRAM技術「OCTRAM」を開発したと発表しました。この技術は、低いオフ電流という特長により、従来のDRAMよりも低消費電力化が期待されます。AI、ポスト5G情報通信システム、IoT製品など、幅広いアプリケーションでの低消費電力化を実現できる可能性があります。
  • 2024年のDRAM市場、46%成長の見込み
    市場調査会社TechInsightsによると、2024年のグローバルDRAM市場は前年比46%成長し、780億ドルに達すると予測されています。この成長は、モバイル端末やラップトップなどの電子機器への強い需要に支えられています。さらに、小売価格の上昇傾向も市場拡大に寄与しています。
  • DRAMの技術革新が進行中
    DRAMの微細化が進む中、新たな技術革新が行われています。例えば、Samsungは14nmプロセスでEUVリソグラフィ技術を導入し、DDR5 DRAMの量産を開始しました。また、SK HynixもEUVを導入して1αnmクラスのプロセスでLPDDR4 DRAMの量産に入っています。これらの技術革新により、DRAMの性能向上と低消費電力化が期待されています。

DRAMとは?

DRAMの基本構造

DRAM(Dynamic Random Access Memory)は、半導体素子を利用した揮発性メモリの一種です。DRAMの基本構造は、トランジスタとコンデンサの組み合わせで構成されています。各メモリセルは1ビットの情報を保持し、コンデンサに電荷を蓄えることで「1」、電荷がない状態で「0」を表現します。

DRAMの動作原理

DRAMの動作は、読み出しと書き込みの2つの基本操作から成り立ちます。読み出し時には、トランジスタを介してコンデンサの電荷を測定し、情報を判断します。書き込み時には、コンデンサの電荷量を変更して情報を記録します。しかし、DRAMの特徴として、電荷が時間とともに減少するため、定期的なリフレッシュ操作が必要となります。

DRAMの特徴と利点

DRAMの主な特徴は、高集積度と低コストです。単純な回路構造により、チップ上に大量のメモリセルを配置できるため、大容量のメモリを比較的安価に提供できます。また、読み書きが高速であるため、コンピュータのメインメモリとして広く使用されています。ただし、リフレッシュ動作が必要なため、SRAMと比べると若干消費電力が大きくなる傾向があります。

DRAMの市場規模

2024年第2四半期の市場動向

TrendForceの報告によると、2024年第2四半期のDRAM市場規模は前四半期比24.8%増の229億ドルに達しました。この大幅な成長は、主要メーカーの出荷量増加と契約価格の上昇が要因とされています。特に、4月の台湾地震やHBMへの高需要が、バイヤーの積極的な調達戦略を促進しました。

主要メーカーの業績

業界トップのSamsungは、ASP(平均販売価格)が17~19%上昇し、売上高を前四半期比22%増の98億2000万ドルに伸ばしました。2位のSK hynixは、HBM3e製品の大量出荷により売上高を38.7%増の79億1000万ドルとしました。3位のMicronも、ビット出荷量の増加により売上高を14.1%増の45億ドルに伸ばしています。

2024年後半の市場予測

TrendForceは、2024年第3四半期のDRAM契約価格上昇率を8%~13%と予測しています。中国のクラウドサービスプロバイダ(CSP)が調達規模を前年同期比2倍に増やしていることや、SamsungのHBM3e生産開始がDDR5の生産スケジュールに影響を与える可能性があることから、今後数四半期はDRAM価格が下がる可能性は低いと指摘されています。

DRAMの主な用途

コンピュータのメインメモリ

DRAMの最も一般的な用途は、コンピュータのメインメモリ(主記憶装置)です。高速なデータアクセスと大容量を兼ね備えたDRAMは、CPUと密接に連携し、アプリケーションの実行やデータの取得に必要な情報を一時的に保持します。パソコンでは、複数のDRAMチップを小さな電子基板に実装した「メモリモジュール」をマザーボードに差し込んで使用します。

モバイルデバイスのメモリ

スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでも、DRAMは重要な役割を果たしています。特に、低消費電力型のLPDDR(Low Power DDR)が広く使用されており、デバイスのバッテリー寿命を延ばしつつ、高速な処理を可能にしています。例えば、SamsungはLPDDR5X DRAMを開発し、5Gや機械学習、ビッグデータの最終応用機器向けに提供しています。

グラフィックス処理用メモリ

高性能なグラフィックス処理を必要とするゲームやビデオ編集ソフトウェアでは、専用のグラフィックスメモリとしてGDDR(Graphics DDR)が使用されています。また、AI処理やビッグデータ解析などの高帯域幅を必要とする用途では、HBM(High Bandwidth Memory)と呼ばれる3D積層型のDRAMが採用されています。これらの特殊なDRAMは、通常のDRAMよりも高速なデータ転送を実現し、処理性能の向上に貢献しています。

DRAMの主な種類

SDR DRAM と DDR DRAM

SDR(Single Data Rate)DRAMは、クロック信号の立ち上がりエッジでのみデータを転送する従来型のDRAMです。一方、DDR(Double Data Rate)DRAMは、クロック信号の立ち上がりと立ち下がりの両方でデータを転送するため、同じクロック周波数でSDRの2倍の帯域幅を実現します。現在は、DDR4やDDR5が主流となっており、より高速なデータ転送と低消費電力化が図られています。

モバイル向け LPDDR

LPDDR(Low Power DDR)は、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス向けに開発された低消費電力型のDRAMです。標準的なDDRと比べて動作電圧が低く、省電力機能が強化されています。最新のLPDDR5Xは、従来のLPDDR5よりも1.3倍高い8.5Gbpsのデータ処理速度を持ち、5Gや機械学習、ビッグデータ処理などの高速用途に適しています。

高帯域幅メモリ HBM

HBM(High Bandwidth Memory)は、複数のDRAMチップを3次元的に積層し、TSV(Through-Silicon Via)技術で接続した高性能メモリです。従来のDRAMと比べて非常に広い帯域幅を持ち、AI処理やグラフィックス処理など、大量のデータを高速に処理する必要がある用途に適しています。最新のHBM3eは、さらなる高速化と大容量化を実現し、データセンターやスーパーコンピュータなどで採用が進んでいます。

DRAMの技術的な課題

スケーリングの限界

DRAMの微細化(スケーリング)は、性能向上とコスト削減の主要な手段ですが、物理的な限界に近づきつつあります。10nm以下のプロセスでは、セル間の物理的な距離が短くなり、干渉の問題が深刻化します。また、微細化によるばらつきの増大が、弱いセルを作り出す原因となっています。これらの問題に対処するため、新たな製造技術や設計手法の開発が進められています。

Row Hammer問題

Row Hammer問題は、DRAMの微細化に伴って顕在化した信頼性の問題です。特定の行(Row)に繰り返しアクセスすることで、隣接する行のデータが損なわれる現象です。この問題は、20nm台以降のDRAMプロセスで特に顕著になっており、メモリコントローラーレベルでの対策や、In-DRAM ECCなどの新技術の導入が検討されています。

リフレッシュ動作の最適化

DRAMのリフレッシュ動作は、データを保持するために不可欠ですが、消費電力の増加や性能低下の原因にもなります。微細化が進むにつれ、リフレッシュの頻度を増やす必要があり、この問題はさらに深刻化しています。この課題に対して、リフレッシュ動作の最適化や、新しいセル構造の開発など、様々なアプローチが研究されています。例えば、Samsungは「Variable Retention Time (VRT)」の問題に対処するための新技術を開発しています。

DRAMのトップシェアメーカー

市場シェアの最新動向

2024年第3四半期のDRAM市場において、トップシェアメーカーの順位は以下の通りとなっています:

  1. Samsung Electronics: 売上高107億ドル(市場シェア41.1%)
  2. SK hynix: 売上高89.5億ドル(市場シェア34.4%)
  3. Micron Technology: 売上高57.8億ドル(市場シェア22.2%)

この3社で市場全体の97.7%を占めており、寡占状態が続いています。

各社の特徴と戦略

Samsung Electronics

  • 長年にわたりトップシェアを維持
  • 14nmプロセスでEUVリソグラフィ技術を導入し、最先端のDDR5やLPDDR5X、HBM3e製品を開発・量産

SK hynix

  • HBM(High Bandwidth Memory)のトップシェアメーカー
  • AI半導体向けHBMの需要増加により急成長中
  • 2024年第2四半期にHBM3eの量産開始予定

Micron Technology

  • 米国を代表するメモリーメーカー
  • 2013年に日本のエルピーダメモリを買収し、世界最大手級に成長
  • HBM3をスキップし、2024年第2四半期にHBM3eの量産開始予定

今後の展望

HBMの需要増加がDRAM市場の成長を牽引しており、特にSK hynixの躍進が顕著です。HBMのビット単価はPC用DRAMの10倍以上と言われており、各社とも開発競争から降りることはできない状況です。

今後はHBMの生産能力と歩留まりの向上が各社の競争力を左右する可能性が高く、特にSK hynixがHBMを武器にSamsungを追い上げる展開が注目されます。

参考サイト