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電解めっき薬品~半導体前工程/先端パッケージング/PCB..電子デバイスの多様な配線/電極形成に欠かせない材料

材料

5G通信やAI、IoTの急速な普及に伴い、半導体の高性能化・微細化が加速しています。その中で、半導体製造における重要な工程の一つである「電解めっき」(Electroplating、Electrochemical Deposition:ECD)に注目が集まっています。

本記事では、半導体や電子デバイスの微細配線、電極形成に欠かせない電解めっき薬品について、最新の市場動向から主要メーカーの動向まで、エンジニア必見の情報をお届けします。

電解めっき薬品に関する最新ニュース

  • 田中貴金属、ネプコンジャパンで新製品を公開
    田中貴金属グループのEEJA株式会社は、2025年1月に開催される「第39回ネプコン ジャパン」にて、車載電子部品や半導体向けの新しいめっき技術を公開すると発表しました。高硬度耐摩耗性白金族めっきプロセス「プレシャスファブPd/Pt/Ru/Rh/Ir」や、貴金属使用量削減のための各種貴金属合金めっきプロセス「プレシャスファブHG/GT/GS」などが注目を集めています。
  • 奥野製薬工業、ガラスへの高密着めっきプロセスを披露
    奥野製薬工業は、ネプコンジャパンにおいて、ガラスへの高密着めっきプロセスの新ブランド「TORIZING(トライジング)」プロセスを発表しました。半導体後工程向けめっき薬品も展示される予定で、業界の注目を集めています。

電解めっき薬品とは?

電解めっきの基本原理

電解めっきは、電気の力を利用して金属表面に薄い金属層を形成する方法です。めっき液中に陽極と陰極を設置し、電流を流すことで、陽極から溶出した金属イオンが陰極(めっき対象物:ウエハや基板など)表面に析出します。

電解めっきと無電解めっきの違い

電解めっきは電気を使用してめっきを行うのに対し、無電解めっきは化学的な酸化還元反応を利用し、還元剤が触媒の作用により電子を供給することでめっき液中の金属イオンを基板表面に析出させてめっきを行います。電解めっきは厚膜形成や合金めっきが可能で、液管理が比較的容易という特徴があります。

電解めっき薬品の構成要素

一般的な電解めっき薬品は、金属塩(主成分)、錯化剤、添加剤(光沢剤、レベリング剤など)、pH調整剤などから構成されています。これらの成分のバランスを適切に調整することで、目的に応じた特性のめっき層を形成することができます。例えば、銅配線の形成では、高純度の硫酸銅溶液に有機添加剤を加えた電解めっき薬品が用いられ、微細で均一な配線パターンを実現しています.

半導体や電子部品の配線、電極の用途について、電解めっきによる被膜形成が可能な各種金属とその具体的な用途を以下の表にまとめました。

金属具体的な用途
金(Au)ICチップの電極パッドやコネクタの電極、高周波デバイス、光デバイスの配線
銀(Ag)接点やスイッチ部品、パワー半導体、高周波回路の配線
銅(Cu)プリント基板の導体層、半導体チップの多層配線(BEOL)、シリコン貫通ビア(TSV)、銅ピラー、再配線層(RDL)など
ニッケル(Ni)接点やバリア層、半導体パッケージの電極、電鋳(メタルマスクなど)、鉄、コバルトとの合金めっき(HDD磁気ヘッド、磁気センサなど)
パラジウム(Pd)接点やバリア層、微細配線の保護膜
スズ(Sn)半導体チップのマイクロバンプ、プリント基板や接点の半田めっき、リードフレームの表面処理。鉛フリーはんだとして用途に応じてAuSn、SnAg、SnSb、SnBi、SnInなど各種合金めっきもあり。MLCCなど受動部品のバレルめっき
ロジウム(Rh)高硬度接点、プローブカード、プローブピン、リードスイッチなど
プラチナ(Pt)センサーや接点、特殊な電極材料
アルミニウム(Al)水溶液では析出しないが、イオン液体(非水溶液)を用いることで析出可能(研究段階)

この表は、半導体や電子部品の製造において重要な役割を果たす電解めっき可能な金属とその用途を示しています。これらの金属は、それぞれの特性を活かして、様々な電子デバイスの性能向上や信頼性確保に貢献しています。

電解めっき薬品の市場動向

世界市場規模の予測

QYResearch社の調査によると、半導体めっき薬品の世界市場規模は2030年までに10.5億米ドルに達し、今後数年間の年平均成長率(CAGR)は5.4%になると予測されています。

主要企業の市場シェア

2023年時点で、世界のトップ10メーカーが市場シェアの約64.0%を占めています。主要企業にはAtotech、MacDermid、Umicore、DuPont、TANAKA、Guangzhou Sanfu New Materials Technology、Shanghai Sinyang Semiconductor Materials、Japan Pure Chemical、Jiangsu AiSen Semiconductor Material、Guangdong Guanghua Sci-Techなどが含まれます。

市場成長の主な要因

5GやAI産業の爆発的な成長に伴う半導体IC産業の拡大や、エレクトロニクス製造業に対する政府の支援政策が、電解めっき薬品市場の成長を後押ししています。また、新材料や新プロセスの需要増加も市場拡大の要因となっています。

電解めっき薬品の種類

銅めっき薬品

銅めっきは、半導体の配線形成に広く使用されています。半導体前工程の多層配線形成工程(BEOL)で採用されているデュアルダマシンプロセスでは、硫酸銅めっき液が用いられ、添加剤によって成膜速度、均一性、埋込性、密着性などが制御されます。

金めっき薬品

金めっきは、半導体パッケージや電子部品の接点に使用されます。純金めっき液や硬質金-コバルトめっき液などがあり、それぞれ用途に応じて選択されます。シアン系とノーシアン系のめっき液があり、半導体分野で後者が主に採用されています。基板やリードフレーム向けの純金めっき液で、均一電着性に優れています。

ニッケルめっき薬品

ニッケルめっきは、主に下地めっきとして使用されます。銅ピラーめっきでは銅とスズが合金化しないようバリア膜として使われています。耐食性や密着性の向上に寄与し、その上に金やスズなどのめっきを施すことが一般的です。

はんだめっき薬品

はんだめっきは、半導体パッケージの端子や基板の接続部に使用されます。鉛フリー化に伴い、Sn-Cu、Sn-Ag、Sn-Zn、Sn-Biなどの合金めっきが開発されています。これらは、従来の鉛含有はんだに代わって、環境への配慮のため普及しています。

主な電解めっき薬品には、銅めっき薬品、金めっき薬品、ニッケルめっき薬品、銀めっき薬品などがあります。それぞれの金属に適した組成と添加剤が使用されています。例えば、銅めっき薬品は配線形成に、金めっき薬品は電極形成やボンディングパッドの形成に使用されます。ニッケルめっき薬品は、下地めっきや拡散バリア層の形成に用いられることが多いです。

pH別の分類

電解めっき薬品は、酸性浴、アルカリ性浴、中性浴に分類されます。酸性浴は銅やニッケルめっきに、アルカリ性浴は亜鉛めっきに多く使用されます。中性浴は特殊な用途に用いられます。

酸性浴においては、硫酸塩や塩化物など無機塩の他、スルファミン酸やメタンスルホン酸といった有機塩もあり、用途によって使い分けられます。

選択する電解めっき薬品のpHによって、形成されるめっき膜の特性が大きく変わるため、半導体製造プロセスにおいては、目的に応じた最適なpHの選択が極めて重要となっています。パターンめっきにおいてはフォトレジスト材料へのダメージも考慮する必要があります。

機能別の分類

光沢めっき薬品、ストライクめっき薬品、合金めっき薬品など、目的に応じて様々な種類があります。例えば、光沢めっき薬品は装飾用途に、ストライクめっき薬品は密着性向上に使用されます。ニッケルー金電極パッドにおいては、ニッケルと金の密着性改善のため、ニッケル上にストライク金めっきの被膜を施したあとに金めっきが行われます。

最近では環境に配慮した無シアン系めっき薬品や、ナノレベルの制御が可能な高機能めっき薬品の開発が進んでいます。これらの新しい電解めっき薬品は、半導体デバイスの微細化や高性能化に大きく貢献しています。

電解めっき薬品の主な用途

半導体製造プロセスでの応用

半導体製造では、主に3つの工程で電解めっきが使用されます。配線、バンプ形成が主な用途です。特にロジックでは、デュアルダマシンプロセスにおける電解めっきが普及しています。

電解めっき薬品は、半導体製造プロセスの様々な段階で使用されています。主な用途には、配線形成、バンプ形成、TSV(Through-Silicon Via)形成などがあります。

特に、銅配線の形成では、高純度の硫酸銅溶液と有機添加剤を組み合わせた電解めっき薬品が不可欠です。5G対応デバイスでは、高周波特性に優れた銅配線が必要とされ、表皮効果による伝送損失の少ない平滑かつ密着性の高いめっきプロセスの開発が進められています。

半導体パッケージングへの適用

半導体パッケージングでは、チップと基板を接続するバンプ形成や、再配線層(RDL)の形成に電解めっきが使用されます。

最近では、チップレット技術の進展に伴い、インターポーザ部のCu微細配線化にも電解めっきが適用されています。シリコンインターポーザではシリコン貫通電極(TSV)、ガラスインターポーザではガラス貫通電極(TGV)が形成され、形状に応じてボイドレスで埋め込み可能なめっき液添加剤が開発されています。

最新の半導体パッケージング技術、例えばファンアウトウェーハレベルパッケージング(FOWLP)や3D-ICなどにも、電解めっき薬品が重要な役割を果たしています。

これらの技術では、微細で均一なめっき層の形成が要求されます。電解めっき薬品メーカーは、より微細で均一なめっき層を形成できる薬品や、特殊な物性を持つめっき層を形成できる薬品の開発に注力しています。

プリント基板製造での利用

プリント基板製造では、スルーホールめっきや配線パターン形成に電解めっきが使用されます。特に、高周波対応や高密度実装に対応するため、銅めっきの品質向上や微細化技術の開発が進められています。

電子部品への応用

コネクタ、リードフレーム、プリント基板など、様々な電子部品の製造にも電解めっき薬品が使用されています。例えば、金めっき薬品は接点の信頼性向上に、ニッケルめっき薬品は耐食性向上に用いられます。自動車産業のEV化に伴い、パワー半導体向けの特殊な電解めっき薬品の需要も増加しています.

その他電子部品への応用

コネクタや端子などの電子部品にも電解めっきが広く使用されています。例えば、コネクタの端子には、導電性向上や耐食性確保のために、ニッケル下地めっきの上に金めっきやスズめっきが施されることが一般的です。

電解めっき薬品の品質管理と分析技術

インライン分析技術の進歩

めっき液の品質管理は、製品の信頼性に直結する重要な要素です。

最新のインライン分析技術では、サイクリックボルタンメトリー(CVS)や分光分析を用いて、めっき液中の金属イオン濃度や添加剤濃度をリアルタイムでモニタリングしながら濃度を一定に保つための補給液の自動補給を行うことが可能になっています。

これにより、めっき品質の安定化と歩留まりの向上が実現されています。

めっき被膜の検査技術の高度化

めっき皮膜の品質評価には、非破壊検査技術の高度化が不可欠です。X線蛍光分析(XRF)や渦電流測定法の精度向上により、ナノメートルオーダーの膜厚測定が可能になっています。

また、走査型電子顕微鏡(SEM)と組み合わせた元素マッピング技術により、めっき皮膜の組成分布を詳細に分析することができます。

さらに、電気抵抗測定法を用いることで、めっき皮膜の導電性や均一性を評価し、表面粗さ計による測定では、皮膜の表面状態を定量的に把握することが可能です。

最新の分析技術として、集束イオンビーム(FIB)加工を用いた高精度な断面作製と、電子後方散乱回折(EBSD)法による結晶方位解析を組み合わせることで、めっき皮膜の微細構造や結晶成長過程を詳細に観察できるようになりました。

これらの技術に加え、プラズマFIB-SEMによる三次元観察や、クライオ機能を活用した熱に弱い試料の分析など、より高度な構造解析も可能になっています。

これらの先進的な分析手法を組み合わせることで、めっき皮膜の品質管理や新規開発における課題解決に大きく貢献しています。

電解めっき薬品の将来展望

量子コンピューティング向けめっき技術

電解めっき薬品技術は、半導体産業の発展とともに進化を続けています。ナノスケールでの制御技術や環境配慮型薬品の開発、AIを活用した品質管理など、最先端の技術革新が日々行われています。さらに、量子コンピューティングやバイオエレクトロニクス、宇宙産業など、新たな分野への応用も広がっています。

量子コンピューティングの実用化に向けて、超伝導材料を用いためっき技術の開発が進んでいます。例えば、超伝導の特性を持つインジウムは、量子ビットの製造に不可欠な技術として注目されています。

エンジニアの皆様には、これらの最新動向を把握し、自社の技術開発や製品設計に活かしていただくことをお勧めします。電解めっき薬品技術は、今後も電子デバイスの進化を支える重要な基盤技術として、さらなる発展が期待されています。

電解めっき薬品の主な製造メーカー

奥野製薬工業

奥野製薬工業は、半導体後工程向けめっき薬品の開発に注力しています。最近では、ガラスへの高密着めっきプロセス「TORIZING」を開発し、注目を集めています。同社は、環境に配慮した各種ノンシアンプロセスの開発にも取り組んでいます。

上村工業

上村工業は、半導体パッケージ向けのめっき薬品開発で知られています。特に、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FO-WLP)向けの再配線層(RDL)形成用めっき薬品の開発に力を入れています。同社の技術は、次世代パッケージの小型化・高性能化に貢献しています。

田中貴金属/EEJA

田中貴金属グループのEEJA株式会社は、貴金属を活用した高機能めっき薬品の開発に強みを持っています。最近では、高硬度耐摩耗性白金族めっきプロセス「プレシャスファブ」シリーズや、貴金属使用量削減のための合金めっきプロセスを開発し、注目を集めています。

石原ケミカル

石原ケミカルは、半導体向けはんだバンプめっき薬品の開発・製造で知られています。ウェハレベルパッケージ(WLP)向けのめっき薬品や、配線形成用のめっき薬品の開発に注力しています。同社の技術は、3D実装技術の進展に貢献しています。

JCU

JCUは、電子・半導体関連処理薬品の開発・製造で業界をリードしています。半導体パッケージ向けの銅めっき薬品だけでなく、プリント基板や電子部品向けのめっき薬品も幅広く展開しています。最近では、5G対応の高周波基板向けめっき薬品の開発にも注力しています。

グローバル企業の動向

世界的に有名な電解めっき薬品メーカーには、Atotech、MacDermid、DuPont、Dow Chemcal、MLI(Moses Lake Industries:多摩化学の子会社)などがあります。

これらの企業は、高品質な製品と幅広い製品ラインナップで市場をリードしています。大手企業は、研究開発への大規模投資や他社との戦略的提携を通じて、市場シェアの維持・拡大を図っています。

まとめ

電解めっき薬品は、半導体産業と電子デバイス製造において不可欠な材料として、その重要性が増しています。5G、AI、IoTの普及に伴う半導体の高性能化・微細化の要求に応えるため、各メーカーは新技術の開発に注力しています。市場規模は2030年までに10.5億米ドルに達すると予測され、特にアジア太平洋地域での成長が顕著です。

この薬品は、半導体製造プロセスにおいて微細配線、電極形成、バンプ形成、TSV形成など、多様な用途で使用されています。また、電子部品製造や先端パッケージング技術にも広く応用されています。

技術開発の面では、環境に配慮したノンシアンプロセスや、貴金属使用量削減のための合金めっき技術など、サステナビリティを意識した開発が注目されています。高速銅めっき技術も次世代の半導体製造に不可欠な技術として期待されています。

業界はグローバル企業、日本企業、新興企業など様々なプレイヤーで構成され、各社が独自の戦略で市場シェアの拡大を図っています。今後は環境規制への対応や技術革新が主要な課題となるでしょう。

エンジニアにとっては、これらの最新動向を把握し、製品開発や製造プロセスの改善に活かすことが重要です。電解めっき薬品の進化は、次世代の半導体技術を支える重要な要素となることが期待されています。

参考サイト