パワー半導体(パワーデバイス )
パワー半導体とは?
パワー半導体は、プロセッサーやメモリなど微細化により進化が進むLSIと異なり、様々な用途の電気、電子機器の電源の制御に用いられるデバイスです。
したがって、スマートフォンやパソコンなどの小さな電流、電圧から、照明、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの家電、自動車など、中くらいの電流電圧、鉄道や発電所、変電所など大電流、高電圧まで幅広い範囲を扱うするため、多種多様な製品が市場に出回っています。
パワー半導体の機能
電気を使用するあらゆる機器に、パワー半導体が搭載されます。パワー半導体には、スイッチングを行うトランジスタやサイリスタ、整流を行うダイオードがあります。
パワー半導体には主に4つの使用目的があります。
2. 周波数変換 交流の周波数を異なる周波数に変換する
3. レギュレーター 直流を昇圧または降圧する
4. インバーター 直流から交流に変換する
ハイブリッド車、電気自動車(EV)市場の拡大に伴って、直流のリチウムイオン電池を電源として交流のモーターを駆動させるためのインバーターを始め、様々なパワーデバイスが搭載されるようになりました。
パワー半導体の種類
市場に出回っているほとんどのパワー半導体はシリコンウエハから作られています。
主に、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBTの3種類があります。
1個の半導体素子のみでパッケージングしたものを個別半導体(ディスクリート)と呼んでいます。
また、大電流に対応するため複数個の素子を1つにパッケージしたものをパワーモジュールと呼びます。
次世代パワー半導体
ワイドバンドギャップ(WBG)半導体と呼ばれるシリコンよりもさらに高電圧、高周波に対応できる材料を用いたパワー半導体が開発され、一部の市場で製品化されています。
窒化ガリウム(GaN) 高周波向き
酸化ガリウム(Ga2O3) SiC,GaNよりも高いバンドギャップ
パワー半導体市場
矢野経済研究所に調査結果によると、パワー半導体の市場規模は2025年には、243億ドル、約3.3兆円に拡大すると予測されています。
富士経済の予測では2030年に5兆円に達するとしています。
マーケットシェアの高い順に、インフィニオン(ドイツ)、オン セミコンダクター(アメリカ)、三菱電機、東芝、STマイクロエレクトロニクス(スイス)、富士電機となっています。
そのほかの日本のメーカーでは、ローム、日立パワーデバイス、サンケン電気、新電元工業などがあります。
インフィニオン、オンセミコンダクターなど海外勢が、シリコンのパワー半導体工場の300mm化で先行しています。その動きに追従するように、日本のメーカーも300mmラインへの投資計画を相次いで発表しています。
シリコンパワー半導体の課題
デバイス構造の工夫による性能向上
プレーナ構造からトレンチ構造の微細パターンに変わり、またウエハ厚さをより薄くすることでシリコンIGBTは性能向上してきました。現在は第7世代と呼ばれる製品が市場に流通しており、第8世代が開発されています。
東芝は、トリプルゲート構造により、スイッチング損失を4割減らす技術を2021年に発表しています。
大口径化
海外メーカーの動きに追従するように、日本のパワー半導体メーカーも300mm化に向けて設備投資が活発になっています。
加賀東芝に300mm量産ラインを建設する設備投資を発表しています。
三菱電機は、シャープから取得した福山工場に300mmライン建設する設備投資計画を発表しています。
モジュール構造
複数のチップを1つのモジュールに搭載したモジュール製品では、絶縁体としてのセラミック基板上にチップをはんだ付けし、ワイヤボンドで配線を接続して、樹脂で埋め込む構造となっています。放熱性を確保するため放熱フィンが付けられます。ハイブリッド車、EVなど車載用IGBTモジュールにおいては、高効率で省スペースであることが求められます。デンソーのパワーカードはチップの両面を銅板で挟み込む構造により放熱性を高めています。
https://www.denso.com/jp/ja/-/media/global/business/innovation/review/16/16-doc-8-ja.pdf
パワー半導体メーカー
日本のパワー半導体メーカー
サンケン電気
新電元工業
デンソー
東芝
富士電機
日立パワーデバイス
三菱電機
ローム
海外のパワー半導体メーカー
インフィニオン
STマイクロエレクトロニクス
オン・セミコンダクター
セミクロン