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シリコンウエハ〜現代のエレクトロニクス産業を支える基盤材料

材料

シリコンウエハは、現代のデジタル社会を支える半導体産業の根幹を成す重要な材料です。本記事では、シリコンウエハの基本から最新の市場動向まで、エンジニアが知っておくべき情報を包括的に解説します。

シリコンウエハに関する最新ニュース

  • 2024年第3四半期の出荷面積が6%増加
    2024年第3四半期の世界シリコンウエハ出荷面積が前年同期比で6%増加しました。この成長は、データセンターや生成AI向け製品の需要増加によるものと考えられます。
  • 12インチウエハの本格供給開始
    三菱電機が2024年9月30日から、12インチSiウエハを用いたパワー半導体チップの本格的な供給を開始しました。これにより、最新のSiパワー半導体モジュールの安定生産が可能になります。
  • 2025年に向けて市場回復の兆し
    SEMI(国際半導体製造装置材料協会)の予測によると、2024年のシリコンウエハ出荷量は2%減少するものの、2025年には10%の反発が見込まれています。AI関連需要や先端プロセス技術の進展が、この回復を後押しすると予想されています。

シリコンウエハ市場は、短期的な変動はあるものの、長期的には成長が見込まれています。特に、AIやIoT、5Gなどの新技術の普及に伴い、高性能半導体の需要が増加することが予想されます。エンジニアは、これらの市場動向を注視し、技術開発や製品設計に活かすことが重要です。

 

シリコンウエハとは?

定義と基本構造

シリコンウエハは、高純度の単結晶シリコンを薄い円盤状に加工した半導体材料です。9が11個並ぶ「イレブンナイン」と呼ばれる99.999999999%の高純度です。通常、直径は100mm、120mm、200mm、300mmで、厚さは数百マイクロメートルです。

製造プロセス

シリコンウエハの製造は、珪石から高純度シリコンを精製するところから始まります。その後、単結晶インゴットを作成し、それを薄くスライスして研磨することでウエハが完成します。主な工程には、スライシング、ベベリング、研磨、エッチング、熱処理などがあります。

特性と重要性

シリコンウエハは、半導体デバイスの基板として使用されます。その平坦性、純度、結晶性が、最終的な半導体製品の性能や歩留まりに大きく影響します。また、シリコンは地球上に豊富に存在し、加工しやすく、電気的特性も優れているため、半導体産業で広く使用されています。

シリコンウエハは、現代のエレクトロニクス産業を支える基盤材料です。その品質と供給は、スマートフォンからデータセンター、自動車まで、私たちの生活のあらゆる面に影響を与えています。エンジニアにとって、シリコンウエハの特性や製造プロセスを理解することは、より効率的で高性能な半導体デバイスを設計・開発する上で不可欠です。

 

シリコンウエハの市場規模

現在の市場規模

2024年のシリコンウエハ市場規模は約200億ドルと推定されています。この数字は、半導体産業全体の成長と密接に関連しており、スマートフォン、PC、データセンター、自動車など、幅広い分野での半導体需要を反映しています。

成長率と将来予測

市場調査によると、シリコンウエハ市場は2024年から2033年にかけて年平均成長率(CAGR)6.3%で成長し、2033年には340億ドルに達すると予測されています。この成長は、AI、IoT、5G、自動運転技術などの新興技術分野における半導体需要の増加によって牽引されると考えられています。

地域別市場動向

シリコンウエハ市場は、アジア太平洋地域、特に台湾、韓国、中国が主導しています。これらの国々は、世界の主要な半導体製造拠点であり、大量のシリコンウエハを消費しています。一方で、欧米地域でも、先端技術開発や特殊用途向けの需要が堅調に推移しています。

シリコンウエハ市場の拡大は、半導体産業全体の成長を反映しています。エンジニアにとって、この市場動向を理解することは、キャリア選択や技術開発の方向性を決める上で重要です。特に、AI、IoT、5Gなどの新興技術分野に関連するシリコンウエハの需要増加は、これらの分野でのイノベーションや新製品開発の機会を示唆しています。また、地域別の市場動向を把握することで、グローバルな視点での技術開発や事業展開の戦略立案にも役立ちます。

シリコンウエハの種類

ポリッシュドウェーハ(PW)

ポリッシュドウェーハ(PW)は、最も基本的なシリコンウエハの形態です。単結晶シリコンを約1mm厚にスライスし、超平坦・鏡面に仕上げたものです。PWは他の種類のウエハの基礎となり、多くの半導体デバイス製造に直接使用されます。

エピタキシャルウェーハ(EPW)

エピタキシャルウェーハ(EPW)は、PWの表面に高品質な単結晶シリコン層を気相成長させたものです。EPWは、より高品質で結晶完全性の高い表面を持ち、先端デバイスプロセスに使用されます。また、多層構造の形成も可能で、デバイスの性能向上に貢献します。

SOIウェーハ

SOI(Silicon On Insulator)ウェーハは、2枚のPWを酸化膜を介して貼り合わせたものです。SOIウェーハは、デバイス層と基板層の間に絶縁層があるため、寄生容量の低減や放射線耐性の向上などの利点があります。高性能・低消費電力デバイスの製造に適しています。

シリコンウエハの種類は、半導体デバイスの性能や用途に大きく影響します。ポリッシュドウェーハは汎用性が高く、多くのデバイス製造に使用されますが、エピタキシャルウェーハやSOIウェーハは、より高性能や特殊機能を要求するデバイスに適しています。エンジニアは、これらの違いを理解し、目的に応じて適切なウエハを選択することが重要です。また、新しいウエハ技術の開発は、半導体デバイスの性能向上や新機能の実現につながる可能性があるため、常に最新の技術動向にも注目する必要があります。

シリコンウエハの標準規格

標準化機関と規格の概要

シリコンウエハの標準規格は、主にSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)やJEITA(電子情報技術産業協会)によって策定されています。これらの機関は、シリコンウエハの寸法、品質、性能基準を定め、製造業者やユーザーが共通の理解を持つための指針を提供しています。特にSEMI M1規格は、鏡面単結晶シリコンウェーハに関する国際的な基準として広く認知されています。

シリコンウエハの寸法規格

シリコンウエハの寸法に関する標準規格では、直径や厚さ、フラット形状などが詳細に定められています。例えば、200mmおよび300mm径のウェーハについては、直径許容差や厚さむら(最大)などが具体的に示されており、製造過程での品質管理が重要視されています。これにより、半導体デバイスの性能や歩留まりに影響を与える要因を最小限に抑えることが可能です。

SEMI規格とJEITA規格のシリコンウエハの直径、厚さ、オリエンテーションフラットのサイズを比較した表を以下に示します。

サイズ SEMI規格 JEITA規格
2インチ 直径: 50.8±0.38mm
厚さ: 279±25μm
OF: 15.88±1.65mm
直径: 50±0.5mm
厚さ: 280±10μm
OF: 17.5±2.5mm
3インチ 直径: 76.2±0.63mm
厚さ: 381±25μm
OF: 22.22±3.17mm
直径: 76±0.5mm
厚さ: 380±15μm
OF: 22.0±2.5mm
4インチ 直径: 100±0.5mm
厚さ: 520±20μm
OF: 32.5±2.5mm
直径: 100±0.2mm
厚さ: 525±15μm
OF: 32.5±2.5mm
5インチ 直径: 125±0.5mm
厚さ: 625±20μm
OF: 42.5±2.5mm
直径: 125±0.2mm
厚さ: 625±15μm
OF: 42.5±2.5mm
6インチ 直径: 150±0.2mm
厚さ: 675±20μm
OF: 57.5±2.5mm
直径: 150±0.2mm
厚さ: 625±15μm
OF: 47.5±2.5mm
8インチ

直径: 200±0.2mm
厚さ: 725±20μm
OF: 57.5±2.5mm
ノッチ深さ:1mm

直径: 200±0.5mm
厚さ: 725±25μm
OF: 57.5±2.5mm
ノッチ深さ:1mm

12インチ 直径: 300±0.2mm
厚さ: 775±20μm
ノッチ深さ:1mm
直径: 300±0.2mm
厚さ: 775±25μm
OF: (60.0±2.5mm)
ノッチ深さ:1mm

注意点:

  • 12インチウエハについて、SEMI規格ではノッチを採用していますが、JEITA規格ではオリエンテーションフラットを規定しています。
  • 6インチウエハの厚さとオリエンテーションフラットの長さに関して、SEMI規格とJEITA規格で違いがあります。
  • 一部の寸法で、SEMI規格とJEITA規格で許容差が異なる場合があります。

シリコンウエハの電気抵抗値による用途の違いについて

シリコンウエハの抵抗値には様々な種類がありますが、代表的な4品種について抵抗値と主な用途を表にまとめました。

抵抗値区分 抵抗値範囲 主な用途
低抵抗 0.01~1 Ω・cm 一般的な集積回路(IC)、メモリデバイス
中抵抗 1~100 Ω・cm パワー半導体デバイス、アナログIC
高抵抗 100~1,000 Ω・cm 高周波デバイス、センサー
超高抵抗 1,000 Ω・cm以上 RFデバイス、特殊センサー、検出器

低抵抗ウエハは一般的な集積回路に広く使用され、中抵抗ウエハはパワーデバイスなどに適しています。高抵抗ウエハは高周波特性が求められる用途に、超高抵抗ウエハは特殊なRFデバイスや検出器などに使用されます。

抵抗値の調整は主にドーパントの種類と濃度によって行われ、製造メーカーは顧客の要求に応じて0.01~1,000 Ω・cmの範囲で任意の抵抗値のウエハを提供できることが一般的です。

標準化の意義と今後の展望

シリコンウエハの標準化は、半導体産業全体の効率性と互換性を向上させるために不可欠です。標準規格に従うことで、異なるメーカー間での製品互換性が確保され、新技術への迅速な適応も可能になります。今後も技術革新が進む中で、新しい材料やプロセスが登場することが予想されるため、標準規格も随時見直される必要があります。特にAIや量子コンピューティングなど新たな分野への応用が進む中で、柔軟かつ迅速な対応が求められるでしょう。

 

シリコンウエハの主な用途

集積回路(IC)製造

シリコンウエハの最も一般的な用途は、集積回路(IC)の製造です。マイクロプロセッサ、メモリチップ、アナログICなど、様々な種類の半導体デバイスがシリコンウエハ上に作られます。これらのICは、スマートフォン、コンピュータ、家電製品など、私たちの日常生活で使用する多くの電子機器に搭載されています。

パワー半導体デバイス

シリコンウエハは、パワー半導体デバイスの製造にも広く使用されています。これらのデバイスは、電力変換や制御に使用され、電気自動車、産業用機器、再生可能エネルギーシステムなどの分野で重要な役割を果たしています。特に、大口径(12インチ)のシリコンウエハを使用することで、より効率的な生産が可能になっています。

センサーとMEMS

シリコンウエハは、各種センサーやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの製造にも使用されます。加速度センサー、ジャイロスコープ、圧力センサーなどがシリコンウエハ上に作られ、スマートフォンやウェアラブルデバイス、自動車などに組み込まれています。

シリコンウエハの用途は、半導体技術の進歩とともに拡大し続けています。集積回路製造では、より高性能で低消費電力のチップを実現するために、ウエハの品質向上と微細化が進んでいます。パワー半導体分野では、エネルギー効率の向上が重要な課題となっており、シリコンウエハの特性改善が求められています。センサーとMEMS分野では、IoTの普及に伴い、より小型で高感度なデバイスの需要が増加しています。エンジニアは、これらの用途別要求事項を理解し、適切なウエハ選択や製造プロセスの最適化を行うことが重要です。また、新しい用途の開発や既存用途の改善に取り組むことで、シリコンウエハ技術のさらなる発展に貢献することができます。

シリコンウエハの主な製造メーカー

グローバルウェーハーズ

グローバルウェーハーズは、世界有数のシリコンウエハメーカーの一つです。同社は、2024年にイタリアの工場拡張に対して1億ユーロのIPCEI(Important Project of Common European Interest)補助金を獲得しました。これにより、欧州でのシリコンウエハ生産能力が強化されることが期待されています。

信越化学工業

信越化学工業は、日本を代表するシリコンウエハメーカーです。同社は、高品質なシリコンウエハを世界中の半導体メーカーに供給しており、特に大口径ウエハの製造技術で高い評価を受けています。

SUMCO

SUMCOも日本の主要なシリコンウエハメーカーの一つです。同社は、先端技術を駆使した高品質ウエハの製造で知られており、世界中の半導体メーカーに製品を供給しています。特に、300mmウエハの生産能力拡大に注力しています。

シリコンウエハの製造は、高度な技術と大規模な設備投資を必要とする産業です。上記の主要メーカーに加え、SK Siltron(韓国)、Siltronic(ドイツ)、Wafer Works(台湾)なども、グローバル市場で重要な役割を果たしています。これらのメーカーは、常に技術革新と生産効率の向上に取り組んでおり、半導体産業の発展に大きく貢献しています。エンジニアにとって、これらのメーカーの動向を把握することは、市場トレンドや技術の方向性を理解する上で重要です。また、各メーカーの特徴や強みを知ることで、プロジェクトや研究開発において最適なウエハ選択が可能になります。さらに、これらのメーカーとの協力や共同開発を通じて、新しい技術や製品の創出につながる可能性もあります。

参考サイト