九州の半導体産業が急速な成長を遂げています。台湾のTSMCによる大規模投資、成功を収めた九州半導体産業展、相次ぐ関連企業の投資、そして人材育成への積極的な取り組みなど、様々な動きが活発化しています。この記事では、九州の半導体産業に関する最新のニュースと動向、地域経済への影響や今後の展望について触れてみたいと思います。
九州エリアにおける半導体産業関連の最新ニュース
九州の半導体産業は急速な発展を遂げており、最近のニュースでは以下のような動きが注目されています。
- 住友不動産 ~不動産業界初!九州サイエンスパーク構想で台湾 陽明交通大学、ITRIと連携協定
日本での半導体クラスターを核としたサイエンスパーク構築に関して台湾の陽明交通大学、台湾工業技術院(ITRI)それぞれと連携協定締結。
- TSMCの投資拡大
TSMCは熊本県に建設中の第1工場で2024年12月に量産を開始しました。第2工場の建設も予定されており、2025年には着工する見込みです。これにより、九州の半導体サプライチェーンはさらに強化されると期待されています。
- 九州半導体産業展の成功
2024年9月25日〜26日に福岡市で初めて開催された「九州半導体産業展」は大盛況となりました。261社が出展し、予想を上回る7,314名が来場しました。次回は2025年10月8日〜9日に規模を拡大して開催予定で、500社の出展と10,000名の来場者を見込んでいます。
- 半導体関連投資の急増
2021年4月から2024年6月までの間に、九州地域で100件の半導体関連投資が発表されました。投資総額は約5兆円に達すると予想されています。TSMCの投資が全体の約60%を占め、最大規模となっています。
- 人材育成への取り組み
TSMCは九州大学と提携し、半導体人材の育成を支援する協定を結びました。九州大学の半導体・価値創造教育センターにTSMCのスタッフを講師として派遣する予定です。今後10年間で年間約1,000人の半導体関連人材が不足すると予測されており、この取り組みが人材確保に寄与すると期待されています。
- 経済効果への期待
半導体産業の集積により、九州経済は大きな恩恵を受けると予想されています。雇用創出や関連ビジネスの活性化など、幅広い経済効果が期待されています。
これらの動きにより、九州は半導体製造の主要拠点としての地位を確立しつつあり、今後さらなる発展が期待されています。
シリコンアイランドの由来と歴史
1960年代からの半導体産業の集積
九州は1960年代以降、半導体企業による工場立地が進み、大手半導体メーカーの進出と多くの地元企業の半導体関連事業への参入により、半導体産業の一大集積地となりました。
「シリコンアイランド」の誕生
1980年代には九州地方に半導体クラスターが形成され、米国の「シリコンバレー」にならって「シリコンアイランド」と名付けられました。この名称は、九州が日本国内における半導体産業の中心地であることを象徴しています。
近年の半導体産業の復活
TSMCの進出と大規模投資
2021年、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県への工場立地を決定し、九州の半導体産業に新たな活気をもたらしました。TSMCは日本子会社JASMを通じて、熊本県菊陽町に2つの最先端工場を建設する計画で、総投資額は200億米ドルを超える見込みです。
政府の支援策
日本政府はTSMCの投資に対し、最大7320億円の助成を決定しました。これは、国の半導体産業再興への強い意志を示すものとなっています。
設備投資の活発化
大規模な設備投資計画
2021年から2030年にかけて、九州での半導体関連設備投資は72件、総額6.0兆円以上が予定されています。これには、TSMCの他にも、SUMCO、東京エレクトロン九州、ローム、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングなどの主要企業による大規模な設備投資が含まれています。
投資の経済波及効果
これらの膨大な規模の設備投資は、半導体関連産業のみならず、地域内の様々な産業への波及効果をもたらすことが期待されています。
九州半導体産業の未来
政府目標と九州の役割
日本政府は、国内の半導体生産額を2030年に15兆円超まで増加させることを目標としており、そのうち3兆円を九州で担うことを目指しています。
産業集積の強化
TSMCの進出を契機に、半導体サプライヤーなどの関連企業の九州進出も増加しています。これにより、九州の半導体産業クラスターがさらに強化されることが期待されます。
人材育成と研究開発
九州大学が台湾の機関と提携して半導体研究所を設立するなど、教育機関も産業の需要に応じた取り組みを行っています。また、高校生向けの半導体設計教育も始まっており、将来の人材育成にも力を入れています。
九州の「シリコンアイランド」は、TSMCの進出や政府の支援策を追い風に、新たな成長段階に入っています。大規模な設備投資、関連企業の集積、人材育成の取り組みなどにより、九州は日本の半導体産業復活の中心地として、今後も重要な役割を果たしていくでしょう。
大手半導体関連企業の設備投資情報
デバイスメーカー
TSMC JASM
- TSMCの熊本工場が開所式を実施、第2工場建設に最大7300億円規模の政府支援も決定
2024年2月24日、TSMCの熊本工場(JASM)第1棟の開所式が行われました。第2棟の建設も決定し、政府から最大7300億円の支援が予定されています。2棟合わせて月産10万枚規模の生産能力を見込んでいます。 - TSMC熊本工場の開所で今後10年間にわたり日本の半導体産業は発展へ、TrendForce予測
市場調査会社TrendForceは、TSMC熊本工場の開所により、今後10年間で日本の半導体産業が発展すると予測しています。第1棟では22/28nmと12/16nmプロセスの製造が行われ、月産4~5万枚の生産能力が見込まれています。 - TSMC熊本第2工場、台湾から500人雇用 1700人体制 シリコンアイランド
TSMC熊本工場の第2工場では、台湾から500人の従業員を雇用し、地元採用を含めて1700人体制となる予定です。第1工場と合わせて3400人が働く一大拠点となります。また、地域の大学や高専と連携し、人材育成にも取り組む計画です。 - TSMC熊本工場、地下水保全へ熊本大学や県立大学と連携
JASMは地下水保全に向けた調査研究で熊本大学や熊本県立大学と連携すると発表しました。「グリーン・ジョイント・デベロップメント・プロジェクト」として、地下水の持続可能性について共同研究を行います。これはTSMCが大学とこうした研究を行う初めての取り組みです。
ソニーセミコンダクタ
- 熊本のTSMC工場近くにソニーグループの新工場建設 半導体製造子会社が発表 合志市
ソニーグループの半導体製造子会社であるソニーセミコンダクタソリューションズが、熊本県合志市に新工場を建設することを発表しました。新工場は、TSMCの熊本工場の北西側に位置し、約37ヘクタールの敷地に建設される予定です。
ルネサスエレクトロニクス
- ルネサス、熊本県内2工場で半導体生産能力を増強へ…高まる需要受け老朽化設備交換
ルネサスエレクトロニクスは、熊本県内の2工場で自動車向けなどの半導体生産能力を増強すると発表しました。高まる需要に応えるため、老朽化した設備を交換し、生産能力の向上を図ります。 - 大分、半導体後工程の「聖地」復権へ ルネサスも増強
ルネサスエレクトロニクスは、半導体製造の後工程を担う大分工場(大分県中津市)に開発機能を追加すると発表しました。大分県は半導体後工程の「聖地」として知られており、ルネサスの投資により、地域の半導体産業の復権が期待されています。
三菱電機
- 三菱電機「パワー半導体」の新工場建設 電気自動車(EV)向けの需要を見込む 建設費用は約1000億円 熊本・菊池市
三菱電機は、熊本県菊池市泗水町にパワー半導体の新工場を建設します。約1000億円を投資し、2026年4月の稼働を予定しています。新工場では、省エネ性能が高く、家電製品や電気自動車(EV)に使用されるパワー半導体を製造します。 - 三菱電機、熊本にSiCパワー半導体の新工場 4月着工へ
三菱電機は、熊本県菊池市で新工場棟の建設を4月から開始すると発表しました。約1000億円を投資し、省エネルギー性能の高い炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体を製造します。この新工場は、電気自動車(EV)の普及に伴う需要増加に対応するためのものです。
ローム
- ロームのSiCパワー半導体、「成功のカギは筑後にあり」 シリコンアイランド パワー半導体世界へ(下)
ロームのSiC(炭化ケイ素)パワー半導体事業の成功には、福岡県筑後市の工場が重要な役割を果たしていることが強調されています。 - ローム、宮崎にSiCパワー半導体の新工場開設へ:主力生産拠点に
ロームが宮崎県国富町にSiCパワー半導体の新工場を開設する計画を発表。2024年末の稼働開始を目指し、主力工場として位置づけています。 - 宮崎のローム新工場、11月末に試作開始 県の会議で報告
宮崎県の企業立地推進本部会議で、ロームの新工場が2024年11月末に試作レベルで稼働を開始したと報告されました。
材料・装置メーカー
SUMCO
- SUMCOと佐賀大と産総研、半導体産業における包括協力協定を締結
SUMCOは2024年9月17日、佐賀大学と産業技術総合研究所(産総研)との3者で、半導体シリコンウェハの製造技術に関する研究開発や実証実験、ビッグデータ・オープンデータの利活用、人材育成・人材交流など、半導体産業の発展に向けた幅広い分野に対する包括協力協定を締結しました。 - SUMCO、佐賀に集中投資 半導体ウエハー生産「世界最大」
SUMCOは佐賀県伊万里市に久原、長浜の2工場を持ち、この地域を「先端半導体ウェハーの世界最大の生産拠点」と位置付けています。シリコンウェハー生産で世界シェア2位のSUMCOは、伊万里市を中心に大規模な投資を行っており、九州における半導体産業の中核を担っています。 - SUMCOが吉野ヶ里町に新工場、最先端ウェハー生産へ
2023年6月8日、SUMCOは佐賀県吉野ヶ里町に約22万平方メートルの用地を取得し、新工場を建設すると発表しました。この新工場では直径300ミリメートルの最先端シリコンウェハーを生産する予定で、半導体需要の拡大に対応するための投資となります。
京セラ
- 京セラ、長崎県諫早市の半導体関連の新工場に680億円投資へ…将来的にはさらに3棟増設の構想も
京セラは2028年度までに680億円を投資する計画を発表しました。新工場は半導体関連の製品を生産し、将来的にはさらに3棟の工場を増設する構想もあります。
東京エレクトロン九州
- 東京エレクトロン九州 新棟建設のお知らせ
東京エレクトロン九州は合志事業所(熊本県)に新たな開発棟を建設することを発表しました。半導体市場の需要拡大に対応するため、2024年秋の竣工を目指しています。 - 東京エレクトロン九州・林伸一社長「熊本で環境技術極める」
東京エレクトロン九州は2025年夏に新たな研究開発施設を新設する計画を発表しました。AIへの投資拡大に伴い、半導体製造装置の需要増加に対応するための施策です。
荏原製作所
- 世界的に高まる半導体市場の需要に対応 荏原製作所 熊本事業所3棟目の工場が完成【熊本】
熊本県玉名郡南関町にある荏原製作所の熊本事業所に、半導体製造装置を製造する新たな工場(3棟目)が完成しました。この工場ではCMP装置が生産される予定です。
富士フイルム
- 富士フイルム、熊本で半導体材料の生産開始 菊陽町の工場、TSMCに供給
富士フイルムは、熊本県菊陽町のFFMT九州工場で半導体材料の生産設備を本格稼働させました。これまでディスプレイ用材料を主に生産していた同工場で半導体材料を生産するのは初めてのことです。この新たな生産ラインは、台湾のTSMCへの供給も視野に入れており、地域の半導体産業の発展に貢献することが期待されています。 - 富士フイルム、熊本でCMPスラリーの製造を開始:世界4拠点体制で需要増に対応
富士フイルムは2024年1月、熊本県菊陽町の富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング九州エリア(FFMT九州)で、半導体製造プロセスに不可欠なCMPスラリーの生産を開始しました。約20億円を投資して最新の生産設備と検査機器を導入し、国内初の生産拠点として稼働を開始しました。これにより、同社は世界4拠点での生産体制を確立し、グローバルな需要増に対応する準備を整えました。
三菱ケミカル
- 半導体向け超純水製造用イオン交換樹脂の生産能力増強
三菱ケミカルグループは、九州事業所・福岡地区(福岡県北九州市)で半導体製造工程に使用される超純水製造用のイオン交換樹脂の生産能力を増強します。2026年4月の稼働を目指し、既存設備の精製を行う再生系設備を増強する予定です。
- 半導体フォトレジスト用感光性ポリマーの量産設備新設
三菱ケミカル九州事業所福岡地区に、ArFおよびEUVフォトレジスト用リソマックスの量産設備を新設します。ArF用は生産能力が2倍以上になり、EUV用は初の量産開始となります。稼働開始は2025年9月から10月を予定しています。 - 半導体向け合成石英粉の生産能力増強
九州事業所・福岡地区で、半導体製造工程で使用される合成石英粉「三菱合成石英」の生産能力を増強します。この投資により、シリコンウエハーの製造に使用される重要な素材の供給能力が向上します。
JCU
熊本事業所(仮称)新設へ益城町と立地協定を締結
めっき薬品メーカーのJCUは、益城町の「くまもと臨空テクノパーク」内に2 万6178 ㎡の用地を確保、土地代を含め約84 億円を投資して半導体関連薬品を開発・製造するための研究棟と工場棟を建設する計画です。
日本電子材料
- 日本電子材料が菊池市に新工場 半導体検査用部品の需要増に対応
半導体検査用部品を製造する日本電子材料熊本事業所の4棟目の工場が完成し、披露式典がありました。 第4工場は床面積およそ6000平方メートルの4階建てで、投資額はおよそ40億円。半導体検査用部品「プローブカード」を生産します。
東京応化工業
- 菊池市における阿蘇工場 阿蘇くまもとサイト新設に関するお知らせ
高純度化学薬品の製造工場を建設中であり、2025年上期より稼働を開始する予定です。
後工程メーカー
アムコー・テクノロジー・ジャパン
- アムコー・テクノロジー・ジャパンの川島知浩社長 熊本工場の能力アップ 車載向けの需要増に対応
アムコー・テクノロジー・ジャパンは、大津町に国内最大の拠点を持っており、半導体製造の後工程である組み立て・検査を請け負っています。TSMCの菊陽町進出に伴い、九州地域で半導体関連の設備投資が続いている中、アムコーも車載向けの需要増に対応するため、熊本工場の能力アップを図っています。 - 半導体後工程の米アムコー、福岡に研究開発拠点 国内初
アムコー・テクノロジーは、2025年4月に福岡市に国内初の研究開発拠点を設立することを発表しました。この新拠点は、先端半導体の開発に焦点を当て、チップを電子部品に組み立てる後工程の技術革新を目指します。
ASEジャパン
サプライチェーン
九州経済産業局が九州の半導体関連企業のサプライチェーンマップを更新。
半導体製造の工程別に、関連企業がまとめられています。
https://www.kyushu.meti.go.jp/report/2205/220519_1.html
大学
九州大学 価値創造型半導体人材育成センター
- 技術だけでなくビジネスも学ぶ価値創造型半導体人材育成センター
九州大学は2023年6月に価値創造型半導体人材育成センターを開設しました。このセンターでは、半導体の技術的スキルだけでなく、経営やマーケティングなどのビジネススキルも習得できるプログラムを提供しています。 - 「半導体の教育と研究の地盤が整った」…”生産集積地”で実施、九州大学の改革とこれから
九州大学は、価値創造型半導体人材育成センターに加え、2024年6月に半導体・デバイスエコシステム研究教育センターを設立しました。同大学は台湾の工業技術研究院(ITRI)やTSMCとの連携を強化し、国際的な半導体教育・研究の拠点となることを目指しています。また、熊本大学や九州工業大学、高専、地元企業とも協力し、世界で活躍できる人材の育成に取り組んでいます。
九州工業大学
- 九州工業大学が半導体教育プログラムを拡充
九州工業大学は、企業向け半導体人材育成プログラムを充実させています。これまでソニーグループなどの技術者を受け入れてきましたが、今後は参加企業や受講者数を拡大する計画です。大学のマイクロ化総合技術センターでは、半導体チップの設計から回路の作製、品質評価まで一貫して学べる施設を提供しています。
熊本大学 くまもと3D連携コンソーシアム
- 「くまもと3D連携コンソーシアム」企業会員を募集中
熊本大学と熊本県が設立したコンソーシアムの概要と、企業会員の募集について説明しています。三次元積層実装産業の創出を目指し、セミナーや勉強会の開催、研究開発プロジェクトの組成などの活動を行っています。
佐賀大学
- 産総研、SUMCOとの包括協力協定
佐賀大学と産総研九州センター、SUMCOが半導体ウエハの高品質化および生産効率向上を目的とした包括協定を締結。産学官が連携し、共同開発、共同研究、人材育成・輩出を推進。
組織・団体
九州IoTデバイス試作ネットワーク(K-DEP)
企業、研究機関の機能とIoTデバイス実証プロジェクトのパッケージング(後工程)試作機能を融合させて九州IoTデバイス試作ネットワークを構築。これによりIoTデバイス実証プロジェクトがワンストップソリューション提供の窓口となり、ネットワークの連携機能を活用することで多種多様なデバイス試作のニーズに対応できる体制を整備。パッケージング技術(後工程)開発に関しては「ミニマル3DICファブ開発研究会」を構築して多くの企業や公的機関によるコンソーシアム活動を展開しています。
九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(SIIQ)
九州経済産業局と九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(SIIQ)が2022年3月「九州半導体人材育成等コンソーシアム」の第1回会合を開催しました。
福岡半導体リスキリングセンター
公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団が運営する福岡半導体リスキリングセンターでは、講座・セミナー、e-Learning、講義室レンタル、受講料補助など様々なサービスを提供しています。
My-IoT
株式会社 産学連携機構九州が運営するコンソーシアム。IoTシステム提供者とエンドユーザー間にある「IoTギャップ」を解決し、ビジネス視点でIoTの新しい価値を生むMy-IoTのエコシステム。IoTシステム提供者が提供する既存のエッジを高度化し、エンドユーザー・利用者の使い方に最適化されたIoTを構築します。