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太陽電池〜シリコン系/化合物系の轍を踏まない!日本発ペロブスカイト太陽電池の挑戦

デバイス

太陽電池技術は、地球温暖化対策の切り札として急速な進化を遂げています。本記事では、太陽電池の基礎から最新の技術動向まで、専門家の視点で詳しく解説します。

世界の太陽電池市場は2040年までに1TW以上に拡大すると予測され、各国で導入が加速しています。

日本企業は、かつての世界シェア首位の座を取り戻すべく、次世代のペロブスカイト太陽電池などの革新的技術開発に注力しています。

本記事では、太陽電池の種類や特徴、市場動向、主な用途、技術的課題、そして日本企業の取り組みについて、最新のデータと専門知識を交えて詳細に解説します。

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太陽電池関連の最新ニュース

  • 横浜市が次世代型太陽電池の実証実験を開始
    横浜市は2024年12月4日から、既存の窓に取り付け可能な次世代型太陽電池の実証実験を開始しました。この実験は、2050年の「Zero Carbon Yokohama」実現に向けた取り組みの一環です。使用される太陽電池は、工事不要で既存の窓や建築物の窓面(垂直面)に設置可能な特徴を持ち、既存建築物への再生可能エネルギー導入促進が期待されています。実験場所は横浜市庁舎アトリウムで、AGC株式会社が提供する「後付けサンジュール」という商品名の太陽光発電ガラスが使用されます。この実証実験は、公共施設を活用した発電性能の検証や、次世代型太陽電池の普及啓発を目的としています。
  • 世界の太陽電池市場規模が2040年に1TW以上に拡大予測
    調査会社の富士経済は、2040年までに太陽電池の世界市場が2023年比で2.4倍の1118GW、金額ベースでは約1.5倍の21兆8261億円規模に拡大すると予測しています。2024年の世界市場規模は、出力ベースで690GW、金額ベースで14兆1855億円と予測されています。短期的には供給過剰による価格下落や業界再編が予想されますが、長期的には需要増加による市場拡大が続くと予測されています。各国では中国依存からの脱却と自国生産への移行が進んでおり、中長期的には中国以外で生産された製品の割合増加や、中国メーカーの淘汰・集約による販売価格の上昇が予想されています。
  • 日本の切り札「ペロブスカイト太陽電池」の開発に注力
    日本は、かつて太陽光パネルの世界シェアの約5割を占めていましたが、現在は1%未満にまで低下しています。この状況を打開するため、日本は次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の開発に力を入れています。ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽量、さらに折り曲げ可能という特徴を持ち、従来の太陽電池とは異なる用途での活用が期待されています。この新技術は、日本が太陽電池市場で再び競争力を獲得するための重要な戦略となっています。

太陽電池とは?

光電効果を利用した発電デバイス

太陽電池は、太陽の光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する半導体デバイスです。その基本原理は「光電効果」と呼ばれる物理現象に基づいています。太陽電池の主要な構成要素は半導体材料であり、この材料に太陽光が当たると、電子が光エネルギーを吸収して励起状態になります。この励起された電子が外部の電気回路へと押し出され、電流として利用されます。太陽電池は、追加の燃料や動く部品を必要とせず、騒音や排出物もないことから、環境にやさしいエネルギー源として注目されています。

太陽電池の構成要素

太陽電池システムは、主に以下の構成要素から成り立っています:

  1. セル:太陽電池の最小単位で、実際に光を電気に変換する部分。
  2. モジュール:複数のセルを組み合わせて、より大きな発電能力を持たせたもの。
  3. ストリング:複数のモジュールを直列に接続したもの。
  4. アレイ:複数のストリングを接続した大規模な発電ユニット。

これらの構成要素を適切に組み合わせることで、小規模な家庭用システムから大規模な太陽光発電所まで、さまざまな規模の発電システムを構築することができます。

太陽電池の主な種類

太陽電池の主な種類と特徴を以下の表にまとめました。

分類種類特徴
シリコン系単結晶高純度シリコンを使用。
高価だが変換効率や信頼性が高い
多結晶小さい結晶が集まった多結晶シリコンを使用。
単結晶より低コストで最も普及
アモルファス結晶化させないため低コスト。変換効率は低い
タンデムアモルファスシリコンと薄膜多結晶シリコンなどを重ね合わせた構造
化合物系GaAsガリウムとヒ素を使用。高効率だが高価。
主に人工衛星用途
CIS/CIGS銅、インジウム、セレン(+ガリウム)を使用。
低コストで効率も比較的良い
CdTeカドミウムとテルルを使用。欧米中心に普及
有機系有機薄膜有機半導体材料を使用。製造コストが安い
色素増感非常に低価格な材料で製造可能。
寿命などに課題あり
ペロブスカイト軽量で柔軟性がある。
比較的容易に製造可能
量子ドット理論効率75%の潜在性を持つ第3世代太陽電池

これらの素材は、それぞれ異なる特性を持ち、用途や環境に応じて選択されます。

太陽電池の市場規模

世界市場の急速な拡大

太陽電池の世界市場は急速に拡大しており、2024年の市場規模は出力ベースで690GW、金額ベースで14兆1855億円と予測されています。さらに、2040年までには出力ベースで1118GW、金額ベースで21兆8261億円にまで成長すると予想されています。この成長は、各国の再生可能エネルギー政策の推進や、太陽電池技術の進歩による発電効率の向上、製造コストの低下などが要因となっています。

地域別の市場動向

アジア太平洋地域、特に中国が太陽電池市場を牽引しています。2023年のアジア太平洋地域の需要は、世界の太陽電池設置容量の48%以上を占めました。一方、欧州や北米でも、環境政策の強化や再生可能エネルギーへの投資増加により、市場が拡大しています。日本市場は、2024年度の市場規模が出力ベースで2430億円、金額ベースで6860MWと予測されていますが、前年度比では減少傾向にあります。

太陽電池関連企業の動向

太陽電池市場の拡大に伴い、関連企業の競争も激化しています。世界シェアランキングでは、中国企業が上位を占めており、2024年時点でロンジ(LONGi)が4.80%、ジンコソーラーが3.17%、トリナ・ソーラーが2.59%のシェアを持っています。一方で、各国で自国生産への移行が進んでおり、今後は中国以外の企業のシェア拡大も予想されます。また、新技術の開発競争も激化しており、日本企業はペロブスカイト太陽電池などの次世代技術に注力しています。

太陽電池の主な用途

住宅用太陽光発電システム

住宅用太陽光発電システムは、太陽電池の最も一般的な用途の一つです。屋根や壁面に設置された太陽電池モジュールが日中に発電し、家庭内の電力需要を賄います。余剰電力は電力会社に売電することも可能で、電気代の削減や収入源としても機能します。最近では、既存の窓に取り付け可能な次世代型太陽電池の実証実験も始まっており、将来的には建物の外観を損なわずに太陽光発電を導入できる可能性が広がっています。住宅用システムは、一般的に3kW〜10kW程度の容量で設計され、家庭の電力消費パターンや屋根の面積、日照条件などを考慮して最適化されます。

産業用・商業用太陽光発電システム

産業用・商業用の太陽光発電システムは、工場、オフィスビル、商業施設などの大規模な建築物に設置されます。これらのシステムは、住宅用に比べてはるかに大きな発電容量を持ち、数百kWから数MWの規模になることもあります。産業用システムは、企業のエネルギーコスト削減や環境負荷低減に貢献し、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みの一環としても注目されています。最新の技術では、建材一体型太陽光発電(BIPV)システムも開発されており、建物の外装材としての機能と発電機能を兼ね備えた製品が登場しています。

宇宙・モバイル機器用途

太陽電池は、地上だけでなく宇宙空間でも重要な電力源として利用されています。人工衛星や宇宙ステーションでは、高効率のGaAs(ガリウムヒ素)系太陽電池が使用されており、過酷な宇宙環境下でも安定した電力供給を実現しています。一方、地上では携帯電話の充電器、電卓、腕時計などのモバイル機器にも小型の太陽電池が組み込まれています。最近では、ソーラードローンの開発も進んでおり、長時間飛行を可能にする技術として注目されています。これらの用途では、軽量化と高効率化が重要な課題となっており、新しい材料や構造の研究が活発に行われています。

ペロブスカイト太陽電池の技術的な課題

長期安定性の向上

ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン太陽電池に比べて寿命が短いという課題があります。シリコン太陽電池の耐用年数が約20年であるのに対し、ペロブスカイト太陽電池は開発当初5年程度でした。しかし、研究開発の進展により、10年以上の耐用年数を持つペロブスカイト太陽電池も開発されています。積水化学は2025年の事業化に向けて、20年の耐久性を目指して開発を進めています。

有害物質の使用

ペロブスカイト太陽電池の主な原料であるヨウ化鉛やヨウ化メチルは人体に有害であり、安全性に問題があります。この課題を解決するため、鉛の代替材料の研究が進められています。京都大学ではスズを、桐蔭横浜大学ではAgBi2I7を使用した研究開発が行われています。

大面積化の課題

ペロブスカイト太陽電池は、小面積では十分な発電量を得られますが、面積が広くなると性能にばらつきが出るという課題がありました。しかし、近年の技術進歩により、大面積のペロブスカイト太陽電池の製造も可能になりつつあります。

太陽電池のトップシェアメーカー

海外メーカー

世界の太陽電池市場では、中国企業が上位を占めています。

メーカー名本社製造方式・特徴
Tongwei Solar中国単結晶シリコン、高効率セル・モジュール製造、年間生産能力70GW
JA Solar中国DeepBlue 3.0/4.0シリーズ、PERC技術、セル効率25%
Aiko Solar中国N型ABCモノクリスタル、世界最高効率24%、蓄電システムも製造
LONGi Solar中国モノクリスタルシリコン技術特化、垂直統合型生産モデル
JinkoSolar中国Half-Cell技術、Bifacial技術、Tiling Ribbon技術
Canadian SolarカナダTOPHiKu6シリーズ、効率23%、温度係数-0.29%
Trina Solar中国Vertexシリーズ、バイフェイシャル・マルチバスバー設計

これらのメーカーは、高効率化と生産規模の拡大を続けており、特に中国メーカーが世界市場の大部分を占めています。各社とも独自の技術開発を進め、効率向上とコスト低減を実現しています。

日本企業の取り組み

日本企業は、かつて太陽光パネルの世界シェアの約5割を占めていましたが、現在は1%未満にまで低下しています。この状況を打開するため、日本企業は次世代の太陽電池技術、特にペロブスカイト太陽電池の開発に注力しています。

ペロブスカイト太陽電池の開発動向

ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、以下のような動きがあります:

  • 積水化学:フィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発を進め、10年の耐用年数を実現。2025年の事業化を目指しています。
  • パナソニックホールディングス:屋外での長期使用を可能にする耐久性の高いペロブスカイト太陽電池の商業化を目指しています。
  • エネコートテクノロジーズ:2026年の量産化を目指して開発を加速させています。

これらの企業の取り組みにより、2025年頃からペロブスカイト太陽電池が市場に出始める可能性があります。

まとめ

太陽電池技術は、環境に優しいエネルギー源として急速に進化を続けています。従来のシリコン系太陽電池から、高効率の化合物系、そして次世代のペロブスカイト太陽電池まで、多様な種類が開発されています。市場規模は2040年までに1TW以上に拡大すると予測され、世界中で太陽光発電の導入が加速しています。

日本企業は、かつての世界シェア首位の座を失いましたが、ペロブスカイト太陽電池などの革新的技術開発に注力し、再び競争力を獲得しようとしています。長期安定性の向上や有害物質の使用削減など、技術的課題の克服に向けた研究も進んでいます。

太陽電池は、住宅用から産業用、さらには宇宙用途まで幅広く応用されており、今後も新たな用途開発が期待されます。環境への配慮と技術革新が融合する太陽電池は、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた重要な役割を果たすでしょう。

参考サイト