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CMP装置〜先端ロジック/3次元半導体/チップレット..ナノレベルの平坦化を実現!

装置

半導体製造において欠かせない工程の一つ、化学的機械研磨(CMP)。CMPとは、Chemical Mechanical Polishingの略で「化学的機械的研磨」と呼ばれる工程です。この工程は、平坦化(Planarization)とも呼ばれています。本記事では、CMP装置の基本から最新のトレンドまで、詳しく解説します。

CMP装置に関する最新ニュース

  • 富士フイルムがCMPスラリー生産能力を強化
    富士フイルムは、熊本県菊陽町の生産拠点にCMPスラリーの生産設備を増強すると発表しました。約20億円を投資し、2025年1月の稼働開始を予定しています。この増強により、同拠点のCMPスラリーの生産能力を約3割拡大する見込みです。AI向け半導体の需要拡大に伴うアジアでの需要増に対応するための施策です。
  • 荏原製作所の半導体装置事業が好調
    世界シェア2位を誇る荏原製作所のCMP装置事業が好調です。AI向け半導体投資の増加に伴い、複雑な配線工程が増加しており、CMP装置の需要も拡大しています。同社は2025年に向けて熊本事業所や藤沢事業所での生産能力増強を進めており、今後の需要増に備えています。
  • CMP装置市場の成長予測
    市場調査会社の予測によると、CMP装置市場は2023年の56億米ドルから、2030年には95億7000万米ドルに成長すると見込まれています。年平均成長率(CAGR)は7.95%と、堅調な成長が期待されています。

CMP装置とは?

CMP装置の定義

CMP装置とは、Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略称で、半導体ウェーハの表面を平坦化するための装置です。化学的作用と機械的作用を組み合わせることで、ナノレベルの精度で表面を研磨します。半導体の微細化が進む中、CMP装置は不可欠な製造装置となっています。

CMP装置の基本構造

CMP装置の基本構造は、研磨パッド、ウェーハを保持する研磨ヘッド、スラリー供給システム、そして研磨パッドを回転させる定盤(プラテン)と回転駆動部から成ります。研磨パッドとウェーハを接触させながら回転させ、その間にスラリーを供給することで研磨を行います。研磨ヘッドには、ウェーハを均一に押し付けるためのエアバッグなどが使用されています。CMPとは、研磨の対象となるウエハ表面材料に応じた薬品を使って化学反応により溶かしながら、スラリーと呼ばれる砥粒により、ウエハをパッドに押し当てた状態で機械的に削るプロセス技術です。

CMP装置の動作原理

CMP装置の動作原理は、化学的作用と機械的作用の組み合わせです。スラリーに含まれる化学薬品がウェーハ表面を化学的に軟化させ、同時に砥粒が機械的に研磨を行います。この二つの作用が相乗効果を生み出し、高精度な平坦化を実現します。研磨パッドとウェーハの回転速度、押し付け圧力、スラリーの組成などを精密に制御することで、ナノメートル単位の平坦度を達成します。

CMP関連動画情報

CMP装置の市場規模

現在の市場規模

CMP装置市場は、2023年時点で56億米ドル規模と推定されています。半導体産業の成長に伴い、CMP装置の需要も着実に増加しています。特に、最先端の半導体製造プロセスにおいては、より高度な平坦化技術が求められており、CMP装置の重要性が一層高まっています。

市場成長予測

市場調査によると、CMP装置市場は2024年に60億3000万米ドルに達し、その後も着実に成長を続け、2030年には95億7000万米ドルに達すると予測されています。この成長率は年平均(CAGR)で7.95%に相当し、半導体産業全体の成長率を上回る勢いです。

成長要因

CMP装置市場の成長を牽引する主な要因として、以下が挙げられます:

  1. 半導体の微細化:より小型で高性能な半導体デバイスの需要増加
  2. AIやIoTの普及:高度な演算処理を必要とするアプリケーションの増加
  3. 5G/6G通信の拡大:高速・大容量通信に対応する半導体の需要増
  4. 自動運転技術の進展:車載半導体の高性能化要求

    これらの要因により、より高度なCMP技術への需要が高まり、市場の拡大が続くと予想されています。

CMP装置の種類

ロータリー方式

ロータリー方式は現在のCMP装置の主流となっている研磨方式です。この方式では、大径の研磨パッドを下部に配置し回転させ、上からウェーハを押し付けて研磨を行います。ウェーハは裏面が研磨ヘッドに吸着保持され、表面が下向きの状態で研磨パッドと接触します。研磨の均一性を高めるため、ウェーハと研磨パッドは互いに逆方向に回転します。

ロータリー方式の特徴:

  • 高い研磨均一性
  • 大面積ウェーハの処理に適している
  • 研磨パッドの弾力性とエアバッグなどを用いた研磨ヘッドのクッション性により、均一な研磨が可能

この方式は、多くの半導体メーカーで採用されており、安定した研磨性能と高いスループットを実現しています。

ベルト方式

ベルト方式は、世界で最初に開発されたCMP研磨方式です。この方式では、ベルト状の研磨パッドを使用し、ウェーハをベルトに押し付けて研磨を行います。ベルトは連続的に動くため、ロータリー方式と比較して高速な処理が可能です。

ベルト方式の特徴:

  • 高速処理が可能
  • 研磨パッドの交換が容易
  • 特殊なベルト状研磨パッドが必要

しかし、ロータリー方式と比較すると研磨の均一性に課題があり、特殊なパッドが必要となるため、現在ではあまり一般的ではありません。

インデックス方式

インデックス方式は、ベルト方式の次に開発された研磨方式です。この方式では、ウェーハを下部の研磨プレートに固定して回転させ、上から小径の研磨ホイールで研磨を行います。ロータリー方式とは逆の構造となっています。

インデックス方式の特徴:

  • ウェーハの裏面基準で均一に研磨可能
  • 小型の研磨ホイールを使用するため、局所的な研磨が可能
  • 表面の層間絶縁膜が不均一になる可能性がある

この方式は、特定の用途や研究開発段階での使用に適していますが、量産プロセスではあまり一般的ではありません。

CMP装置の主な用途

半導体デバイス製造

CMP装置の最も一般的な用途は、半導体デバイスの製造プロセスにおける平坦化です。集積回路(IC)の製造過程では、複数の層を積み重ねて回路を形成します。各層の表面を平坦化することで、次の層を正確に形成することができます。特に、以下のプロセスでCMPが重要な役割を果たします:

  1. 層間絶縁膜の平坦化
  2. 金属配線の形成(ダマシン法)
  3. シャロートレンチアイソレーション(STI)の形成
  4. ハイブリッドボンディング(Cu-Cu直接接合)

これらのプロセスにおいて、CMP装置は、ナノメートル単位の精度で表面を平坦化し、デバイスの性能と信頼性を向上させます。

CMPは、半導体の前工程、多層配線形成工程において重要な工程です。

CMP工程の出来栄えは、ウエハの厚さばらつき度合いを示すTTV(Total Thickness Variation)、表面粗さ、外観、エッジ形状などで評価されます。

プロセス上、重要なパラメータは、面内膜厚均一性です。

層間絶縁膜(ILD)、STI(Shallow Trench Isoration)の平坦化ではSiO2膜の平坦化を行います。

Wプラグの工程では、W-CVDにより全面に成膜されたタングステン膜の平坦化を行い、プラグ部分のタングステンを残します。

Cu配線の平坦化では、全面に成膜されたCuダマシンめっき膜の配線として残る部分を残し、SiO2が表面に現れるまで研磨を行います。

SiO2とCu配線のハイブリッド接合においては、前工程となるCMPが重要な役割を果たしています。ハイブリッド接合はSiO2を接合後にCuの熱膨張によりCu面を接合することから、CMPにおいて、ウエハ表面のSiO2とCuの段差を数nmオーダーで制御することが求められます。これを実現するためにCMPスラリーの成分調整により膜表面の反応速度をシビアにコントロールする必要があります。

MEMS(微小電気機械システム)製造

MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)デバイスの製造においても、CMP装置は重要な役割を果たします。MEMSは、微小な機械要素と電子回路を一体化したデバイスで、センサーやアクチュエーターなど、様々な用途に使用されています。CMP装置は、MEMSの製造プロセスにおいて以下のような用途があります:

  1. 犠牲層の除去
  2. 構造層の平坦化
  3. 表面粗さの制御

これらのプロセスにより、MEMSデバイスの性能向上と歩留まり改善に貢献しています。

光学デバイス製造

CMP装置は、光学デバイスの製造にも使用されています。特に、フォトニクス分野では、光導波路や光学フィルターなどの製造に欠かせない技術となっています。主な用途は以下の通りです:

  1. 光学素子の表面平坦化
  2. 多層膜フィルターの層間平坦化
  3. 光導波路の形成

これらのプロセスにおいて、CMP装置は、ナノメートル単位の表面粗さ制御と高い平坦度を実現し、光学デバイスの性能向上に寄与しています。

CMP装置の主な製造メーカー(日本)

荏原製作所

荏原製作所は、CMP装置市場において世界シェア2位を誇る日本の大手メーカーです。1912年に創業し、真空ポンプメーカーとしてスタートしましたが、顧客からの要望をきっかけにCMP装置の製造を開始しました。現在では、累計出荷台数が2,500台を超える実績を持っています。

荏原製作所の強み:

  • グローバルなサービス網(世界50カ所以上にサービス拠点)
  • 高い技術力と豊富な経験
  • 半導体製造プロセス全体をカバーする製品ラインナップ

最近では、AI向け半導体の需要増加に対応するため、熊本事業所や藤沢事業所での生産能力増強を進めています。

東京精密

東京精密は、1949年に設立された半導体製造装置・精密計測機器メーカーです。プローバ(ウェーハ検査)で世界トップシェアを持つ企業として知られています。CMP装置では、独自のエアフロート式ヘッド「Sylphide」を開発しています。

東京精密のCMP装置の特徴:

  • エアフィルムによる均一な加圧
  • ウェーハの表面基準での高精度研磨
  • 計測技術を活かした高度な制御システム

東京精密の装置は、特に高精度な平坦化が求められる先端ロジックデバイスの製造に適しています。

テクノライズ

研究開発向けのCMP装置メーカーです。ウエハの受託加工サービスも行っています。

CMP装置の主な製造メーカー(海外)

Applied Materials(アメリカ)

Applied Materialsは、半導体製造装置市場において世界最大手の企業です。CMP装置においても、高い技術力と豊富な経験を持っています。同社のCMP装置は、以下の特徴を持っています:

  • 高度な制御システムによる精密な研磨
  • 多様な材料に対応可能な柔軟性
  • 高いスループットと低いコスト・オブ・オーナーシップ

Applied Materialsは、継続的な研究開発投資により、最先端のCMP技術を開発し続けています。特に、AIやIoT向けの高性能半導体製造に適した装置の開発に注力しています。

ケメット(英)

イギリスのKemetは、化学機械研磨(CMP)装置とスラリーの大手メーカーです。特に、KemCol 15マシンは、CMPおよびセリウム酸化物ベースの研磨アプリケーションに最適化されています。この装置は、長寿命で汚染フリーの研磨を実現するためにステンレス鋼の要素を使用しており、医療やサファイア研磨業界など、さまざまな分野で利用されています。Kemetは、高精度な研磨を提供し、顧客のニーズに応じたソリューションを提供しています。ケメットジャパンが販売代理店をしています。

ロジテック(英)

ロジテックは、精密研磨装置のメーカーです。同社のCMP装置は、半導体、光学、MEMS分野向けに設計されています。高精度な平坦化と表面仕上げを実現する装置を提供しており、研究開発から小規模生産まで幅広いニーズに対応しています。ハイソルが販売代理店をしています。

Entrepix(アメリカ)

Entrepixは、CMP装置、部品、サービスを提供する企業です。同社は新品のOnTrak DSS-200クリーナーを提供するほか、中古・再生半導体装置の販売も行っています。また、CMP装置のアップグレードや交換部品の供給、フィールドサービスなど、包括的なCMPソリューションを提供しています。

Revuasum(アメリカ)

Revasumは、半導体産業向けの研削、研磨、CMP装置の設計・製造を専門とする企業です。同社の主力製品には、6EZ Silicon Carbide Polisherと7AF-HMG Silicon Carbide Grinderがあり、完全自動化された単一ウェーハ研削・研磨ソリューションを提供しています。特にシリコンカーバイド(SiC)ウェーハ向けのCMP装置に強みを持っており、200mmウェーハ対応の製品も開発しています。ファーストゲートが販売代理店をしています。

まとめ

CMP装置は、半導体製造プロセスにおいて不可欠な役割を果たしています。主要な製造メーカーである荏原製作所、ディスコ、東京精密、Applied Materials、LAM Researchは、それぞれ独自の技術や強みを持ち、市場をリードしています。

これらの企業は、以下のような共通の課題に取り組んでいます:

  1. より微細な加工に対応する高精度化
  2. 生産性向上のための高スループット化
  3. 環境負荷低減のための省エネルギー化と廃棄物削減

今後、5G/6Gの普及やAI技術の進展により、より高度なCMP技術への需要が高まると予想されます。CMP装置メーカーは、これらの需要に応えるべく、さらなる技術革新と生産能力の拡大を進めています。

半導体産業の成長に伴い、CMP装置市場も着実に拡大しています。2030年には市場規模が95億7000万米ドルに達すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は7.95%と堅調な成長が期待されています。

この成長を支える要因として、以下が挙げられます:

  • AIやIoT向け半導体の需要増加
  • 自動車産業における電動化・自動運転化の進展
  • 5G/6G通信インフラの整備

CMP装置メーカーは、これらの市場動向を見据えつつ、継続的な技術革新と生産能力の拡充を行っています。例えば、荏原製作所は2025年に向けて熊本事業所や藤沢事業所での生産能力増強を進めており、今後の需要増に備えています。

結論として、CMP装置は半導体産業の発展に不可欠な技術であり、その重要性は今後さらに高まると考えられます。主要メーカーの技術力と生産能力の向上により、より高性能で信頼性の高い半導体デバイスの製造が可能となり、私たちの生活を支える様々な電子機器の進化に貢献していくでしょう。

参考サイト

装置
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