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ドライエッチングガス〜先端ロジック/メモリ/MEMS/パワーデバイス..微細回路のパターニングに不可欠な材料

材料

半導体製造において欠かせないドライエッチングガス。その市場が2025年に向けて急成長しています。本記事では、ドライエッチングガスの基礎知識から最新のニュース、市場動向、主要メーカーまで、半導体エンジニアが押さえておくべき情報を解説します。

ドライエッチングガスに関する最新ニュース

  • セントラル硝子、山口県宇部工場で先端半導体向けエッチングガスの量産開始
    セントラル硝子が2025年1月16日、2nmプロセス以降の半導体製造工程で用いられるエッチングガス「CEG 39A」の量産体制を山口県の同社宇部工場にて整備したと発表しました。
  • 環境に配慮した新しいエッチングガス
    東京エレクトロン(TEL)が開発した「極低温エッチング」技術では、従来のフルオロカーボン(CF)ガスの代わりにフッ化水素(HF)ガスを使用しています。これにより、炭素排出量を80%以上削減しつつ、同等以上の処理性能を実現しています。
  • 大気圧下での新しいドライエッチング技術
    Nines PVが開発したADE(Atmospheric Dry Etching)技術は、真空プラズマを使用せずに大気圧下でドライガスエッチングを行うことができます。この技術は太陽電池製造に適しており、従来の湿式エッチングプロセスに代わる環境に優しい選択肢となっています。
  • 原子レベルの精密エッチング
    日立ハイテクは、DCR(Dry Chemical Removal)エッチングシステム9060シリーズを発表しました。この装置は、先端的な3次元デバイスの等方性エッチングを原子レベルで制御することができ、研究開発から量産まで幅広い用途に対応します。
  • 原子層エッチング(ALE)の進化
    半導体ノードの微細化に伴い、原子層エッチング(ALE)技術がさらに重要性を増しています。ALEは原子スケールの精度でエッチングを行うことができ、7nm、5nm、さらには3nmプロセスなどの先端ノード製造に不可欠となっています。

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ドライエッチングガスとは?

ドライエッチングの基本原理

ドライエッチングは、反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法です。主に化学的な反応によるエッチングを指し、反応による生成物は気体である場合が多いです。

ウェットエッチングとの違い

ウェットエッチングが液体化学薬品を使用するのに対し、ドライエッチングは液体を使用しないため、素材へのダメージが少なく、高精度な加工が可能です。

プラズマの役割

ドライエッチングでは、プラズマを利用してガスをイオン化・ラジカル化します。プラズマ中のイオンやラジカルが材料表面に衝突し、化学反応を引き起こすことでエッチングが進行します。

ドライエッチングガスは、この高精度なエッチングプロセスを可能にする重要な要素です。半導体製造において、微細なパターンを形成するために不可欠な技術となっています。特に、最先端の半導体デバイスの製造では、ナノメートルレベルの精度が要求されるため、ドライエッチングガスの選択と制御が極めて重要になっています。また、環境への配慮から、より安全で効率的なガスの開発も進められています。

ドライエッチングガスの市場規模

世界市場の成長予測

世界のドライエッチング装置市場は、2024年から2030年の間に約6~7%の年間平均成長率(CAGR)で成長すると予想されています。また、高純度エッチングガス市場は、2024年から2030年までのCAGRが8.5%で、2030年までに推定15億米ドルに達すると予測されています。

地域別の市場動向

アジア太平洋地域が市場を支配すると予測され、市場シェアは約40%を占めるとされています。北米が続き、約25%の市場シェアを持つと見込まれています。ヨーロッパは約20%の市場シェアを持つと予測されています。

成長要因と課題

市場成長の主な要因は、半導体需要の増加、高度なエッチング手法の利用増加、MEMs技術とナノテクノロジーの普及です。一方、高い初期コストやスキルギャップなどが課題として挙げられています。

ドライエッチングガス市場は、半導体産業の発展と密接に関連しています。特に、5G技術、人工知能、IoTなどの新興技術の普及により、高性能半導体の需要が急増しています。これに伴い、より精密なエッチングプロセスが求められ、高純度エッチングガスの需要も増加しています。また、環境規制の強化により、より安全で環境に配慮したガスの開発も市場成長の鍵となっています。今後は、新興国市場の拡大や次世代半導体技術の進展により、さらなる市場拡大が期待されています。

ドライエッチングガスの種類

フッ素系ガス

CF4(四フッ化炭素)やSF6(六フッ化硫黄)などのフッ素系ガスは、シリコンのエッチングに主に利用されます。これらのガスは高いエッチング速度と選択性を提供します。

塩素系ガス

Cl2(塩素ガス)やBCl3(三塩化ホウ素)などの塩素系ガスは、アルミニウムやその他の金属のエッチングに適しています。

その他のガス

酸素(O2)は主にフォトレジストの除去や酸化層のエッチングに利用されます。また、HBr(臭化水素)やCH4(メタン)なども特定の用途で使用されます。

ドライエッチングガスの選択は、エッチングする材料や求められる精度、エッチング速度などによって異なります。例えば、シリコンのエッチングにはフッ素系ガスが適していますが、金属層のエッチングには塩素系ガスが効果的です。また、複数のガスを組み合わせて使用することで、より高度な制御が可能になります。最近では、環境への影響を考慮して、より安全で効率的なガスの開発も進められています。特に、地球温暖化係数(GWP)の低いガスや、毒性の低いガスの研究が盛んに行われています。エンジニアは、これらのガスの特性を理解し、適切に選択・制御することが重要です。

ドライエッチングガスの主な用途

半導体製造プロセス

ドライエッチングガスは、半導体製造において微細なパターンを形成するために不可欠です。特に、集積回路(IC)の製造過程で、シリコンウェハー上に複雑な回路パターンを刻む際に使用されます。最新の半導体製造では、フルオロカーボン(CF)ガス、酸素、塩素、三塩化ホウ素などの反応性ガスが使用され、これらのガスがプラズマ状態で基板表面と反応し、精密なエッチングを実現します。

MEMS(微小電気機械システム)製造

MEMSデバイスの製造では、3次元構造を形成するために高アスペクト比のエッチングが必要です。ドライエッチングガスは、この精密な加工を可能にします。例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)技術を用いることで、アスペクト比1:50までの構造を形成することができます。また、犠牲層のドライエッチング技術により、微細構造を基板から解放する新しい全ドライプロセス法も開発されています。

ディスプレイパネル製造

液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの製造過程でも、ドライエッチングガスが使用されます。薄膜トランジスタ(TFT)の形成などに利用されています。ドライエッチングは、基板を真空チャンバーに配置し、エッチングガスを注入して電気エネルギーを供給することで行われます。これにより、イオン化したガスの高運動エネルギーを利用して、回路材料の結合を破壊し、エッチングを実現しま。

先端ロジックデバイス製造

7nm以下のプロセスノードを持つ先端ロジックデバイスの製造では、極めて精密なエッチングが要求されます。例えば、FinFETやGAA(Gate-All-Around)トランジスタの形成には、高アスペクト比のエッチングが必要で、特殊なガス混合物が使用されています。最新の技術では、原子層エッチング(ALE)が導入され、原子レベルの精度でエッチングを行うことが可能になっています。

パワー半導体製造

SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体の製造にも、ドライエッチングガスが重要な役割を果たしています。これらの材料は従来のシリコンよりも硬く、特殊なエッチングガスと条件が必要です。例えば、フッ素系ガスを用いたシリコンのディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)技術が、200mmシリコンウェハーに対して適用されています。

次世代メモリ製造

3D NANDフラッシュメモリやSTT-MRAM(スピン転送トルク磁気抵抗メモリ)などの次世代メモリデバイスの製造では、複雑な3D構造を形成するために高度なエッチング技術が必要です。これらのプロセスでは、従来のガスに加え、新しいガス組成が開発・使用されています。例えば、東京エレクトロン(TEL)が開発した「極低温エッチング」技術では、従来のフルオロカーボン(CF)ガスの代わりにフッ化水素(HF)ガスを使用し、炭素排出量を80%以上削減しつつ、同等以上の処理性能を実現しています。また、Lam Researchの「Lam Cryo 3.0」技術では、従来のプラズマエッチング技術の2.5倍の速度でエッチングを行うことができ、次世代の3D NANDの製造に貢献しています。

ドライエッチングガスの用途は、半導体技術の進化とともに拡大し続けています。特に、EUV(極端紫外線)リソグラフィの導入に伴い、より精密なエッチングプロセスが要求されるようになりました。また、AIやIoTデバイスの普及により、多様な半導体デバイスの製造にドライエッチングガスが使用されています。さらに、環境への配慮から、低GWP(地球温暖化係数)ガスの開発と導入も進んでいます。エンジニアは、これらの新しい用途と技術トレンドを理解し、最適なガスとプロセス条件を選択することが重要です。

ドライエッチングガスの環境影響と対策

地球温暖化への影響

多くのドライエッチングガスは高いGWPを持ち、地球温暖化に大きな影響を与える可能性があります。例えば、SF6(六フッ化硫黄)のGWPは約23,500と非常に高く、環境への影響が懸念されています。

代替ガスの開発

環境負荷の低減を目指し、低GWPガスの開発が進められています。例えば、C4F8(オクタフルオロシクロブタン)やCH2F2(ジフルオロメタン)などが、従来のガスの代替として研究されています。

排気ガス処理技術

半導体工場では、使用済みのエッチングガスを適切に処理するための高度な排気ガス処理システムが導入されています。これらのシステムは、有害ガスを分解・無害化し、環境への影響を最小限に抑えています。

ドライエッチングガスの環境影響は、半導体産業が直面する重要な課題の一つです。多くの企業が、環境に配慮した製造プロセスの開発に取り組んでいます。例えば、アプライドマテリアルズ社は、従来のNF3(三フッ化窒素)の代わりにF2(フッ素)を使用するクリーニングプロセスを開発し、GWPを大幅に低減しました。また、東京エレクトロン社は、プラズマ励起技術を改良することで、ガス使用量を削減し、環境負荷を低減しています。さらに、業界全体で、ガスのリサイクル技術や高効率な使用方法の研究が進められています。エンジニアは、これらの環境配慮型技術を理解し、自社の製造プロセスに積極的に導入することが求められています。

ドライエッチングガスの主な製造メーカー

日本企業

  • 三井化学
  • セントラル硝子
  • トリケミカル研究所
  • 関東電化工業
  • ADEKA

三井化学は三フッ化窒素を製造しており、半導体・液晶製造装置用クリーニング剤、ドライエッチング剤として使用されています。セントラル硝子は2025年1月から山口県宇部工場で先端半導体向けエッチングガス「CEG 39A」の量産を開始する予定です。トリケミカル研究所は2025年に稼働予定の新工場で、400層超の3次元NANDのエッチング工程で使用される特殊ガスを生産する計画を発表しています。

海外企業

  • Linde(ドイツ)
  • SK Materials(韓国)
  • PERIC Special Gases(中国)
  • Merck(ドイツ)

これらの企業は、高純度エッチングガス市場で主要なプレイヤーとして知られています。特に、MerckはMicron Technology, Inc.と提携し、半導体製造向けの地球温暖化係数(GWP)の低いガスソリューションの開発を開始しています。

ドライエッチングガス市場は、半導体産業の発展と密接に関連しており、特に環境への配慮から、低GWP(地球温暖化係数)ガスの開発と導入が進んでいます。日本企業は高度な製造技術と品質管理システムにより、世界市場で高い評価を得ています。一方、海外企業は大規模な研究開発投資や世界的な販売網を活かし、市場シェアを拡大しています。

まとめ

ドライエッチングガスは、半導体製造において不可欠な材料であり、その重要性は技術の進化とともに増しています。本記事では、ドライエッチングガスに関する最新のトレンドと重要な側面を詳しく解説しました。主なポイントは以下の通りです:

  1. 市場は2030年まで年率8.5%で成長し、15億ドルに達する見込み
  2. 先端ロジックデバイス、パワー半導体、次世代メモリなど、用途が多様化
  3. 環境への配慮から、低GWPガスの開発と導入が進んでいる
  4. 排気ガス処理技術の高度化により、環境負荷の低減が図られている
  5. アジア太平洋地域が市場の40%を占め、最大の成長センターとなっている
  6. 3nm以下のプロセスノードに対応する新ガス開発が急務
  7. 大手企業から新興企業まで、技術革新が活発に行われている

参考サイト